軍艦遊郭の姫花魁 その8
【β版インストール】
すべてのステータスが天文学的に跳ね上がる。
髪は処女雪みたいな純白になり、瞳はエメラルドグリーンの地球みたいな複雑な色味に変わる。
身体から溢れだすあまりにも膨大なオーラ量のせいで、
俺の身体はジェットブレードみたいに海上に浮かび上がった。
天使が羽を広げたような十字架形のオーラが、海の上に広がる。
《エスメラルダを抱いたままβ版なんてインストールしたら、アホみたいな魅力値に魅了されちゃうじゃないですか》
エスメラルダは大丈夫だろ。俺のことめっちゃ嫌ってるし。
《どんだけ鈍感なんですか?》
宇宙開闢みたいな爆発的な魔力が体内で溢れだして止まらない。
俺は、無尽蔵に溜まりゆく魔力に堪えかねて体外にぶちまけるみたいにして、海底に魔方陣を描いた。
一キロにも及ぶような超特大魔方陣。
海底に刻まれた魔方陣の光で、海が俺の魔力色に染まる。
【海王トリトン召喚】
海を震撼させながら、最強クラスの海神が顕現する。海底の魔方陣から姿をあらわす。
王冠を頭に乗せた、王様の貫禄たっぷりのマッチョな老人の人魚。
全身が圧倒的なオーラに包まれている。
巨人海賊船を見下ろすぐらいデカい。
《ガチムチのおじさん人魚なんて初めて見ました》
「……………ポセイドンの息子。
………………海王子トリトン」
エスメラルダが身体を震わせながらつぶやく。
「……………あんな偉大な存在を呼び出すなんて、どんだけ凄いの。あんた」
普段は生意気なツンデレ少女が屈伏して不意に漏らす感嘆の言葉、ちょっと胸をくすぐられますな。
《ちょっと夜の生活を連想してません?》
【チートコード入力】
海に半身をひたした巨大な海王トリトンの身体に、コンピューター言語のような模様が浮かび上がる。
ぐにゃっ……………………
次の瞬間、海王トリトンの威容が崩れて、とけたガラスみたいに液状化する。
そして。
海王トリトンはサーフボードの形へと姿を変えた。
海王トリトンの圧倒的なエネルギー量、神性をまるごと宿したまま。
神々の力を秘めたサーフボードが形作られる。
β版の特殊スキル。
あらゆる存在、自分に敵対していない存在なら、なんでもアイテム化してしまうチートスキルだ。
【海王トリトン】のサーフボードが俺の両足に吸い付いてきた。
何十年も愛用してきた品みたいに足に馴染む。
装備が完了しただけで大空に稲光が走り抜け、海が震えた。
すでに世界記憶層からはありとあらゆる伝説的なサーファーたちのスキルがインストールされている。
サーフボードで波を切り裂きながら、俺は着水する。
たったそれだけで、強烈な水波が生み出されて巨人海賊船の一隻を飲み込んだ。
「みずポケモン奥義 ハイドロポンプ。なんつって」
エスメラルダは俺の腰に必死にしがみついていた。
熱をおびた呼吸を背中に感じる。
俺の意志とリンクして、海が自由自在に動きはじめていた。
この【海王トリトン】の力を宿したサーフボードの異能だろう。
巨人海賊船に向けて、大波を起こす。
俺は、サーフボードで大波の表面を斜めに駆け上がっていく。
そして、波の頂点部分からスキージャンプさながらの勢いで飛び上がった。
【トリトン・エアリアル】
シュバァアアアアアアアアアア……………ン
巨人海賊船の船体が、波乗りの軌道にそって斜めに引き裂けていた。
ズドンッ……………………!!!!!!!
着水した背中に、巨人船の大爆発を感じた。




