軍艦遊郭の姫花魁 その7
「分かってるくせにさ……………アタイの要求はこれだよ」
女は血のしたたる唇をべろりと舐めまわす。
ディスプレイが、ハッキングを受けたみたいに妙な画像一色に切り替わった。
「……………はい?」
思わず目が点になる。
それは、ダンディーな中年オヤジだった頃のゴルディアスが、全裸で寝転がっている画像だった。
シュワルツェネッガーみたいに筋骨隆々、マッチョなゴルディアスの全裸のうえに、七つの秘石が点々と乗っている。
ギャーーーーーーーーーーーーと叫んで目を覆うエスメラルダ。
うん。いきなり親の全裸を見せられるのはキツいよね。
《女体のうえに刺身をおく女体盛りならぬ、
オッサンの全裸のうえに財宝をおく渋オジ盛りですね》
誰が得すんの!!!?その趣向!!!!?
「…………いつの間に撮影したんだ?海賊王よ。
……………いや、ストリップ王よ」
俺のネットリした視線に
「どう考えても捏造写真じゃろがい!!!!?まだ秘石7つそろってないし!!!!」
顔を真っ赤にして抗弁するロリッ娘海賊王。
「お前らの持っている秘石のすべてと、ゴルディアスの身柄。
この2つを要求する。
この2つを10分以内に差し出さないなら総攻撃を仕掛け、お前らの船を沈める。
ついでに、これからパプリカ王国にも立ち寄って攻め滅ぼしてきてやるよ。ついでに、な。
お前らの関係者は一人残らず皆殺しだ」
神竜船ガネシャのまわりには、|巨人海賊船《パイレーツ オブ タイタン》が集結してきて完全に包囲している。
山脈に囲まれているみたいだ。
海中には大小の地雷原化した海獣たち。
逃げ場は無い。絶対的に不利な状況。
……………バチバチバチ
リトさんのまわりが帯電をはじめた。
鮮烈に美しいリトさんの横顔が、冷たい怒りに染まっている。
……………地雷を踏んだな、あの女。
リトさんの母国パプリカに危害を加える発言。
世界3大NGワードのひとつだぜ。
はやく禁句認定して世界中の馬鹿どもに知らしめるべきだ。
「…………悪いがな、メアリー・ジェーン。
その要求だけは飲めねえ。
秘石は、この狂った世界を平定し、戦乱を終わらせるためのキーアイテム。お前の安い個人的願望と取り換えの効く代物じゃねえ」
ディスプレイが、また巨人の女を映し出す。
「てか、さっきから偉そうに喋ってるそこのチビッ子は誰だい?
ゴルディアスの物真似なんかして。ぶっ殺すわよ?
ぶっ殺して泣かしてぶっ殺すわよ?」
ズッコケているゴルディアス。
「ワシじゃ。ゴルディアスじゃ」
気を取り直して名乗りをあげる海賊王。
…………なぜか、唇や肩をプルプルと震わせている巨人族の女船長。
ガッ……………………!!!!!!
ぐちょぉおおおおお…………
女の足元に四つん這いになっていたスキンヘッドの男が、巨大な足に頭を踏み潰されていた。
「……………………アタイの愛を遠ざけるために
……………………性別まで変えたってこと?
…………………男であることをやめたってこと?」
砂漠に70日間放置したガラス玉みたいな目で巨人族の女が問いかけてくる。
いや、誤解です。俺がゴルディアスを妖刀で試し切りしてしまっただけです。
だが、もはや聞いちゃいないだろう。
「このドブゲス野郎がぁああああああああああああああああ
内臓をひりだして豚の胎につめこんでやるぅぁああああああああ」
こちらにまで振動が伝わってきそうなぐらいの発狂度合い。
顔の崩れ方がえげつない。
女の足元にいる男たちは泡をふいて痙攣していた。
音声だけで脳味噌に致命的なダメージでも受けたのかも知れない。
通信が強制的に向こう側から切られた。
「……………さぁ、来るぞ。
総攻撃を仕掛けてくる!!!!」
ゴルディアスがこちらを振り返る。
「……………マサムネ」
リトさんが怒りをたっぷりと含んだ冷徹な顔で
「本気出しちゃっていいよ」
ギュッと抱きしめられる
「ダメな私の代わりに…………パプリカを守って。
………………お願い」
「きみがダメな娘なわけないだろう?
リトさんは、俺がこの世界にいる理由のすべてなんだぜ」
耳元でそう答えてから、
山脈みたいな|巨人の海賊船団《パイレーツ オブ タイタン》が待つ海原へと、俺は飛び出していった。
「……………マサムネ、本気出します」
頬に海風を感じる。
小脇には、キョトンした顔の海賊娘エスメラルダを抱えていた。
「なんで《《オレ》》まで?」




