軍艦遊郭の姫花魁 その6
海を煮えさせる火球の中心部から
女の甘い囁き声が聴こえてくる
「…………初めてじゃないか、ゴルディアス。
いつもアタイから顔を背けて、避けてばかりきたアンタが
こんなに燃え滾るような熱い殺意を向けてきてくれたのは」
アダマンタイト製の海賊船が、火の海を越えてくる。
「憎しみが愛に変わるまで……………もう一押しかい?」
ゴルディアスの横顔が別の意味で強張っている。
幼女化した腕の肌に鳥肌がいっぱい浮き上がっていた。
怖がっているというより生理的な嫌悪感て感じだ。
《ストーカーに追い詰められてるモテ男の表情に見えます》
「…………なんか、敵といわくありげだな」
とんでもない規模のビームシールドが、アダマンタイト・フルプレートの海賊船を覆っている。
そのシールドは蝶の翅そっくりの形に広がって左右の巨人船まで保護している。
向こうもだいぶチートな性能だな。
ゴッバッ!!!!!!!
すぐそばで、爆発音がした。
見ると、すぐ隣の幽霊船が大きく傾いている。
ドンッ…………!!!!!!
今度は、反対側の方向から火の手があがる。
…………おかしい。巨人船団から砲弾を撃った気配はない。
いったい、どこから攻撃が来ているのか。
ズンッ……………………!!!!!!
今度は、俺たちのいる船が巨大な衝撃をうけた。
この船がとびきりの最新鋭艦じゃなかったら一撃で沈没させられているような威力。
よろめいた拍子にいろんな角度から抱きつかれる。女体の柔らかい感触。
そしてなぜだか視界が真っ暗になる。息苦しい。
俺は、倒れた拍子にリトさんの巨乳に顔面から突っ込んでいたのだ。
なんスか…………この生きながら天国に顔面だけ突っ込んでるみたいな柔らかさ。
たまらなく良い匂いがする。
自分の置かれた状況に気づいて、じわじわと顔を赤くするリトさん
「婚前交渉、ダメ!絶対!!」
パチーーーーーーーン!!!!!!
見事にスナップの効いた平手打ちを頂戴した。
「承知いたした!!!!」
鷹村守の右ストレートをうけた雑魚キャラみたいに顔を吹っ飛ばされながら俺はリトさんの意向を承知した。
《マサムネは『ラッキースケベLV.4』のスキルを会得した》
俺だけレベルアップな件!!!!!
「あれを……………見ろ!!!!!」
船員が海上を指さしている。
その指さす先にいる幽霊船に、海中から巨大なシルエットが迫っていた。
ズ…………………ドッ……………………!!!!!!!
幽霊船の横っ腹に突っ込んだモノ。
それはクジラだった。
それもただのクジラじゃない。頭部を中心に、体の大部分が機械化されたクジラ。
次の瞬間………………船の横腹に突撃したメカクジラが爆発した。
ドンッ……………………!!!!!!
爆発炎上する幽霊船。
ゴルディアスが舌打ちする。
「…………厄介な異能まで身につけていやがったのか」
あれが…………異能?
クジラが。シャチが。サメが。
機甲化された海の生物、
大型の海獣が、次々に幽霊船に特攻をしかけて爆発し、沈没させていく。
《さながら生きた魚雷………………》
「どうだい?ゴルディアス。
これがアタイの異能【身内贔屓】
あんたを潰すためだけに命がけで発現させた異能さ」
漆黒の海賊船から聴こえてくる女の声。
「海の生態系そのものを自分の兵器に転用してる………………恐ろしい異能ニャ…………………
この海域に生きる生物は、ぜんぶ敵側の武器と化すニャ」
「あんたはね……………知らないうちに地雷原に迷い込んでいたんだ。
アタイの作った生きた地雷原にね。
アンタはアタイの腹の中、子宮のなかにいるのも同じさ!!!!
さぁ、無駄な抵抗はおやめ!!!!」
「…………誰だか知らないけどさ、どんだけゴルディアスに構って欲しいんだよ。あのフルプレート船に乗ってる女……………異様に絡んでくるな」
「……………」
なぜか黙っているゴルディアス。
「………さては元カノか?」
「ちがうわい!!!!!」
ゴルディアスは深く息を吸うと、オペレーターに敵船との通信を命じた。
「…………お前の要求を聞こう。条件次第では飲んでやらんこともない」
周辺の海の状況を映し出していたモニターの画面が切り替わった。
黒い甲冑を身にまとった金髪の美しい女性がモニターに映った。
少し、肌や顔が汚れた印象でワイルドな風貌だったが、ただの美人女性の全身像に一瞬は見えた。
ただ、その女性の足元に鎖につながれた5人の全裸の男たちが犬みたいなポーズで這いつくばっている。
そして、その縮尺が狂っていた。
明らかに、鎖につながれた男たちのサイズ感がおかしい。
かなり大柄そうに見える男たちなのに、女の膝下くらいまでしか男たちの背丈が無い。
そして…………鎖につながれた全裸の男たちは、全員が身体のどこかしらを欠損していた。
《あの巨女のオヤツ替わりですかね。あの鎖に繋がれた男たちは》
鳥肌がたった。
金髪の巨女が、プッと唇から何かを吹き出す。
薄汚れた床に転がったそれは、髪の毛がまだこびりついている頭骨の一部だった。出来損ないのカツラみたいな頭骨から生えているのは赤毛だった。




