そして俺は日本社会の正規ルートから盛大にドロップアウトした。
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ぐちゃっ
「ゲフッッ」
「あははは!きたねえ!」
学校の屋上の床に鼻血がぽたぽた…………
俺の、俺の鼻血
真っ赤に広がる血だまり
「おい、デブ!面積とりすぎなんだよ!地球に謝れ!面積とってすみませんって」
蹴り、蹴り、蹴り
サッカーボールみたいに蹴られつづける俺のお腹
痛いよ、苦しいよ、助けて。
「こいつのハンカチ見ろよ!アニメの女キャラのイラストついてんの!キモーーーー!エグーーーー!おえーーー!」
俺のことを殴り、蹴りまくってるヤツ
ものすごいイケメン
芸能事務所に所属して子役をやってるという
学校1のリア充で、教室内のヒエラルキーの頂点にいるヤツ
6の2、林田 純平
「おい、そろそろ先生くるぜ」
6人いる取り巻きの1人が林田を止める
「知らねえよ、いいじゃん、こんなキモデブ殺しても。先に殴りかかってきたって言えば良いし。絶対、先生、俺のこと信じるべ?」
「あひゃひゃひゃ。信じる、信じる。学校1のイケメンで金持ちの林田くんが言うなら何でもそのとおり」
「林田くん…………お願い、やめて」
止めに入ったのは幼なじみで家がお隣さんのユキナだった
「なんだよユキナ、こんなキモいヤツかまうなよ」
「…………お願い」
「ちっ」
林田はユキナに惚れてたみたいで、ユキナにだけは弱かった
俺も、ユキナのことが、小さな頃からずっと好きだった
□□
夕暮れの帰り道
泣き止まない俺の手を、ずっとずっと握っていてくれたユキナ
ユキナは言った
「ずっと、ずーーーっと。
おじいちゃん、おばあちゃんになっても二人でこの道を歩こうね」
涙があふれて止まらなかった
こんなに、心の綺麗な女の子がこの世にいるなんて
俺は、いつか必ず立派な男になってやる
ユキナにふさわしい男になるんだ
イジメなんかに負けてたまるか!
俺は、その年の夏休み、死にものぐるいで勉強した
大好きなゲームもアニメも遠ざけて、1日12時間以上死にものぐるいで勉強したんだ。
俺は、いつか東京大学に行く。
年収一千万以上の男になって、
ユキナの旦那さんにふさわしいハイスペックな男になって、
ユキナと一生、幸せに暮らすんだ
□□
夏休み最後の日
知らないアドレスから画像つきのメールが届いた
その画像には、林田と裸で抱き合い、キスをしているユキナの笑顔がうつっていた
『ユキナの処女いただきました〜ごちそうさまでした〜』
心が、打ち砕かれた。
跡形もなく、こなごな。
その日をさかいに俺は学校に行けなくなり、
日本社会の正規ルートから盛大にドロップアウトした
それから14年の月日が流れた
──俺は、長期の引きこもり生活を経て
立派なアラサーのニートになっていた
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