意図せぬ追撃
「……まさか、全員が俺より早く手持ちの金を使い切るとはな」
≪えへへ≫
呆れたようにぼやくと全員が照れ笑いを返した。
俺もさ、若い頃のテンションで行くって決めたから後先考えずスパッと金使うつもりだったのね。
欲しい物があったら即買い! ってな感じで。
オジサンのそういうダメなとこを子供らには反面教師にして欲しいなとか思ってたっけ……。
にも関わらず俺以外の全員が俺より早く手持ちを使い切った。完全にゼロってわけじゃないが残ってて数千円とかだぜ。
真っ先に使い切ったのはサーナちゃん。
ガチャにドハマリして使い切った。勝率は……運の値からしてお察し。
とは言えまるっきり当たりがないわけでもないし本人は満足そうだから良いと思う。
外人さんがガチャガチャにハマるってのもよく聞く話だしまだ子供だからな。
「でも……高橋、鈴木、お前らさぁ……」
同率二位で財布を空にしたのがコイツらだ。
いやコイツらも昔は俺と同じような金遣いの荒さだったよ?
でもダメだろ。俺みたいに意図してそうしようってわけじゃなくマジに物欲に目を奪われて気付けば……って感じだもん。
反面教師になってやるとかそういうアレでもねえしな。
何ならホントにダメなのはコイツらだけだと思う。
子供はそういう失敗も時には必要だし千佳さんは普段が真面目だからな。
「悔い改めて?」
「……コイツに説教されると死ぬほどムカつくな」
「……うん。反射的にビンタしたくなるよね」
ダメ人間どもめ……!
昔からそうさ。結局のところこのトリオの常識人でストッパーは俺なんだ。
やれやれ、手間のかかる豚と河童ですこと。悟空のアニキはホント大変。
「まあでも、皆満足したようで何よりだわ」
「けどさ~軍資金使い切っちゃったしどうするの? 大人の財力発揮しちゃうの?」
「まさか! 今日は昔のノリで行くつったからな。最初に買った服以外で追加予算はなしだ」
「なら解散ですか?」
「いんや? 金ないつっても交通費除けば二千円ぐらい残ってるだろ?」
それならそれで楽しみようはある。何なら金使わない遊びも色々あるし。
ただまあ、今日はクッソ暑いからな。
「だらだら映画見ようぜ映画」
映画つっても映画館で見るわけじゃない。レンタルだ。
最近はサブスクとかが定番だが昔に倣ってリアル店舗で借りる。それも個人経営のだ。
最近はそういうレンタルショップも減り始めてるが実家付近にゃしぶとく幾つかあるしな。
「お、映画バトルか」
「? 高橋さん、映画バトルって何なの?」
「レンタル屋で各々、これはって思うの選んで誰が一番当たりだったか競うんだ」
「色々条件あったよね確か」
「ああ。知ってる映画はアウト。これは見たことあるだけじゃなく名前だけ知ってるのもダメだったよな?」
「おう」
そう言えば前にCMでやってたっけ。そう言えばこの映画評判良いらしい。
そんな甘えは許されないのが映画バトルだ。
「あの、英雄さん。それだとハズレの確率が高くなるのでは……?」
「そうだね。実際、クソとかそういうレベルでさえない虚無い映画に当たったことも一度や二度じゃない」
「なら……」
「でもその分、当たりが引けたら嬉しいし盛り上がるのさ」
こんな選び方をするんでもなけりゃ一生出会うことのなかった名作。
そいつを引き当てた時の嬉しさったらないぜ。
「あと、大勢でならクソでも虚無でも何だかんだ楽しく観れるしな」
マジありえねえ。監督何考えてんだ。とかぶつくさ文句言い合いながらな。
「それ、ちょっと分かるかも」
「だろ?」
「ちなみにヒロくん、バトルに勝ったら何かあるの?」
「栄光と……夜になっても解散しねえんなら晩飯の選択権もかな」
あとはちょっとした優越感。
はー! センス良くてゴメンねー!? ってドヤれる。
「で、どうする?」
「俺はやってみたいです」
「私も」
「同じく」
子供らの賛同は得られた。高橋と鈴木は語るまでもなく千佳さんも問題なかろう。
元々、俺らが昔遊んでたように遊びたいってリクだからな。
「じゃ人数居るしチーム戦にするか。2、2、3で分かれようや」
「何で決める?」
「グッパーで良いんじゃない? 一々くじ引き作るのも面倒だしさ」
グッパーとか久しぶりだな……。
≪グッパー、ほい!!≫
結果。千佳さん、高橋、鈴木の美魔女トリオ。
梨華ちゃん光くんの主人公とヒロインだったかもしれないコンビ。
んで俺とサーナちゃんの金銀コンビにチーム分けが成された。
善は急げと電車に乗って実家の最寄り駅へ。
駅から少し歩いた場所にあるレンタルショップに入るとチームで分かれ物色を開始。制限時間は一時間で選べるのは二本。
「さて、どうするよ?」
「……夏だし、ホラーなどはどうでしょう?」
「おぉっとチャレンジャー。ホラー系はクソも多いんだが……しかし、その意気や良し」
敢えて茨の道を往くのも一興よ。
とは言えだ。ホラーと一口に言っても色々あるからな。
幽霊やゾンビみたいなオカルトからヒトコワ系……ふふ、武者震いがしよるわ。
「……そう言えば」
「うん?」
ホラーコーナーで映画を物色しているとサーナちゃんが神妙な顔で口を開いた。
「こういった呪い、なんかも実在するんですよね?」
サーナちゃんの手には呪いを題材にしたっぽいDVDがあった。
ああ、やっぱ真面目だな。こんな時でも学びの心を忘れてねえ。
ただ絶妙にチープなデザイン……香ばしい匂いがぷんぷん漂ってるDVD片手にだもんでシュールでもある。
「あるよ。俺も呪術はそれなりに使ってるしな」
「……ならそういった呪詛を受けた場合の対処法なども?」
互助会の解呪屋に頼むなりフリーの解呪屋に頼め。
と言いたいとこだがサーナちゃんが聞いてるのはそういうことじゃないよな。
万が一への備え。誰にも頼れない状況でどうするのかとかそういうことだ。
「知ってる。色々あるが手っ取り早いのは聖なる力に頼ることだね」
普通の神社や教会でも駆け込めば弱い呪詛なら消滅ないしは軽減させられる。
歴史のあるマジに霊験あらたかなとこだと更に効果的だろう。
「感覚的に呪いの輪郭を掴める素養があるなら聖剣なり霊刀なりで呪詛を直接攻撃するって手もある」
そういうセンスのある奴は大体、聖なる武器を所持してる。自分で祓った方が安上りだからな。
武器の質、それを振るう者の実力で対処出来るレベルは違うがな。
「……なるほど。佐藤さん、もしよろしければ今度私に呪いをかけてくれませんか?」
「うん?」
「その、私にそういう素養があるのかどうかを確かめるなら実際に呪いを受けてみる方が早いかなと」
「チャレンジャーだねえ。良いよ。そういうことなら次の訓練の時にやろうか」
「ありがとうございます。ちなみにですが佐藤さんが本気で呪いをかけた場合、それを解呪するにはどれほどの物が必要なんですか?」
「あぁ、俺がマジに呪ったんならそういうやり方がそもそも通用しないかな」
聖なる力を喰らって逆に呪詛が肥大化する。
呪いに干渉すればするほど呪詛が強くなるように組んであるからな。
こう、野生の獣に下手に触ろうとしたら大暴れすることあるだろ? イメージ的にはそんな感じ。
「力づくで破ろうってんなら俺より強い奴じゃなきゃ無理だと思う」
「そ、そうですか……」
「うん。さ、真面目な話も良いが映画選びに戻ろうぜ」
「……そうですね」
サーナ「何やこのクソゲー」




