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【書籍化】主人公になり損ねたオジサン【12/10発売】  作者: カブキマン
本編

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90/249

薄幸の美少女

「で、これからどうすんの?」

「フッ……どうするもこうするも。梨華ちゃん、今の俺らは馬鹿な十代だぜ?」


 プランなんてあるわけない。

 計画性……? 知らない言葉ですね。テキトーだよテキトー。

 服買いたかったら服買いに行ったしゲーセン行きたきゃゲーセン行って……その日の気分だ。

 今っとこ俺も高橋も鈴木も特にやりたいことがあるわけじゃねえ。

 こういうこともままあった。遊ぶ金確保した後どうしようってな。


(そんな時は……)


 昔は地図使ってたが今持ち合わせがないしな。

 俺はさっと腕を振るい空中にルーレットをくみ上げた。


「はいどうぞ千佳さん」

「え、何これ?」


 ダーツを渡され困惑する千佳さんに高橋が言う。


「23区ダーツだよ。何するか迷った時、あたしらこれで決めてたんだわ」

「そうそう。決まったらとりあえずそこ行ってブラブラするんだ」


 当時は壁に23区の地図貼り付けて目隠しをしてダーツ投げてたんだ。


「つーわけでルーレット回転!!」


 千佳さんの背中を押して前に行かせる。


「ママ頑張って! なるべく楽しそうなとこね!」

「いやそう言われても……ってか全然見えない……動体視力で何とかなる速度じゃないんですけど……」


 そりゃ狙って当てたら面白くないもん。

 ルーレットの醍醐味はランダムじゃん。


「え、えい!!」


 ヒュン! カッ! と小気味良い音を立ててダーツが突き刺さる。

 ダーツが当たったのは――――千代田か。ふっつーに当たりじゃん。

 首相官邸や議事堂とか……あん? 社会科見学じゃねえんだからそんなとこ見てもつまらんって?

 そこはほら、俺のコネよ。見学ツアーとかでは見れんとこもバッチリ見学出来るぞ。


「あとは神社仏閣巡りも悪くねえな」

「飲食店なら私に任せてよ。おススメ色々知ってるよ」

「秋葉もありだよな。あたしはもう随分と行ってねえがあの色々アウトなもん売ってるゲームショップとかまだあんのかな」

「そういうサブカルなら表の秋葉より裏の秋葉もありだぜ」


 前に梨華ちゃんと光くんを連れてった新宿の闇市と違って秋葉は完全に娯楽一色だ。

 表の秋葉は多様化するにつれサブカル色が薄れて来たが裏はその逆。

 どんどんディープになって煮凝りみてえになってる。


「え、そうなん?」

「おう。表でも出せる普通のオタグッズとかもあるが、やっぱ裏だからな」


 どう足掻いても合法になれない怪しい家電とかオカルトをふんだんに盛り込んだやべえゲーム機とか売ってる。

 リアルじゃフルダイブなんざ創作の中だけだが裏じゃリアルデスゲームを楽しめるVRMMOとか普通にあるんだよな。


「春先ぐらいかな? イザナミがリアル冥土カフェ開いたりしたっけ」

「……イザナミってあの、国産みの神話に出て来る……?」

「おぉ、光くんよく知ってるな。そうそうそのイザナミ」


 店員は黄泉醜女がやってるけど時代のニーズに合わせたんだろうな。

 全員、美女美少女だから安心して欲しい。ただあそこで飯食うと弱い奴は現世に帰れなくなるのよね。


「何でそんな店が営業出来てるんですか……」

「裏に法律はねえからなぁ」


 食品衛生法も通じねえんだ。


「……ねえママ、私すっごく気になるんだけど」

「奇遇ね。ママもよ。怖いもの見たさもあるけど好奇心がそそられるわ」


 冥土カフェではなく裏秋葉そのものに興味津々らしい。


「なら裏秋葉行くか」


 そういうことになった。

 転移以外では随分と行ってなかったので受け付けでちゃんと入口を聞いてから現地へ向かった。


【おかえりなさいませご主人様☆彡】

「ただいまー」

≪……≫


 裏秋葉に入るや街の安全を守ってくれているメイドロボが迎えてくれた。

 人間と遜色ないよう造れるのに敢えてロボだと分かるように顔の線入ってたり球体関節なとこにこだわりを感じるよな。


「あの……佐藤くん? このメイドさんたち、ものごっつい銃火器装備してるんだけど……」

「……おい佐藤、向こうの方でロケランぶっぱなしてるんだが」

「街の治安維持も担ってるからな。あと製作者の趣味」


 銃火器と女の子はベストマッチだからな。

 さてまずはどこ行くか……ああ、良いのがあった。


「皆、ガチャガチャは知ってるよな?」


 ガチャガチャ、ガチャポン、ガシャポン、ガチャ。

 呼び名は様々だが外国人のサーナちゃんと千佳さん以外は一度ぐらいは子供の頃にやったと思う。


「懐かしいわねえ。小さい時、梨華がハマってたわ。外出かけて見つけると梃子でもその場から動かなくなるのよ」

「そういう恥ずかしい話はやめてよ! それでガチャがどうしたの?」

「面白いガチャがあるのよ。こっちこっち」


 皆を連れて馴染みのガチャ専門店へと向かう。

 店内は本当にガチャしかないのだがその数が凄まじい。ラインナップもな。


「玩具、家電、食材、色々あ……使い魔? 使い魔って……佐藤さん?」

「そのままだよ。使い魔が引ける」


 正確には召喚陣の入ったカプセルが出て来るんだな。

 普通使い魔との契約ってのは彼我の実力差がダイレクトに反映されるんだがここのは違う。

 ドラゴンの召喚陣を引けたのならそこらに居るパンピーだってドラゴンを安全に使い魔に出来る。


「確かにラインナップには目を見張るものがあるけど……」

「パンチが弱いって?」


 千佳さんの言いたいことは分かる。

 実際、俺が面白いと思ってるのは品揃えじゃなくガチャのシステムなんだよ。


「システム、とは?」


 小首を傾げるサーナちゃん。安心めされよ。ちゃんと説明してやっから。


「こういうのはさ。良いのが引けるかどうかは運だが……運ってえらいあやふやだよな?」


 目に見えるものではない。

 しかし、運を数値化出来たらどうだろう?


「光くん。テキトーなガチャのレバー触ってみ」

「? はあ」


 言われるがままぬいぐるみガチャのレバーに手を触れる光くん。

 すると空中に光くんの数値化された運と、それを元に算出された排出率が表示される。

 マックス100で光くんは……23か。


「幸運の可視化……そんなこと出来るのかよ?」

「出来る。というより出来るようになっただな。ここの店主とは顔なじみで俺も協力して術式を完成させたのさ」


 幸運を司る女神なんてものが存在して、その恩恵を受ければ良いことがある。

 見えないだけで運というのものは明確に存在しているわけだ。ならば数値化出来ないこともないだろう。

 そして数値化したことで新しい事実も判明した。


「光くん。ちょっとテキトーに踊ってみてくれる?」

「お、踊る?」

「もしくはこう、何か変な動きをしてみて」

「は、はあ」


 困惑しつつも光くんはその場でぐるぐる回ったり、ブリッジしたりと奇行を始める。

 するとどうだ?


「あ、数字変わってる!?」


 幸運の値が変化したではないか。

 大幅にではなく3ほど増えただけだが、それでも確かに増加している。

 あ、減った。光くんが嘘だろ……って口元に手を当てた動作がいけんかったのかも。

 じゃあそれはタブーなのかと言えばそうでもない。口元に手を当てる動作だけってより前後の繋がり、タイミングとかも絡んで来るからな。


「運ってのは存外移ろいやすいもんでな」


 ちょっとしたことで増えたり減ったりするんだ。

 ゲン担ぎとかあるだろ? あれもそう。これまた大幅UPってほどじゃないが確実に一定数の増加が見込める。

 幸運が可視化されたお陰で無意味なことではないと証明されたのだ。

 淘汰されず今に至るまで伝えられてるその手の習慣は少しでも運を良くしようって人間の弛まぬ努力の結晶と言えるのかもな。


「ここの常連は自分だけの幸運UP方法を編み出してるのが殆どでな」


 新しいルーティンを開発してる光景とかクソほど笑える。

 当人は真剣なんだろうが傍から見れば奇行の嵐だもん。

 まあ、今は他の客が居ないので残念ながらそれを見ることは出来ないが。


「……確かに、面白いわね」

「佐藤くんもそういうルーティン、開発してるの?」

「してる。まあ、俺の場合はそこまで必死にやってるわけじゃねえが」


 だって俺はそんなことせんでも幸運ブーストさせられるし。

 運命恐喝呪法とかその極致だ。あれのちょっとした応用で簡単に100叩き出せる。

 まあこれも簡単に使って良いもんじゃないから使わんけどな。


「それよりどうだい? 興味出て来たろ。ならちょっとやってみなよ」


 頷き、各々が興味のありそうなガチャの前に行って奇行を始める。

 俺はそっとスマホを取り出しその様子を撮影。


(フッ、面白い画が撮れそうだ……ってサーナちゃん!?)


 ふと見えたサーナちゃんの幸運値を見て俺は絶句した。


(い、1て……初めて見たぞそんな数字……)


 運悪い奴でも大体、10前後はあるのに……。

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主人公になり損ねたオジサン 12月10日発売

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― 新着の感想 ―
[一言] サーナちゃんは運の巡りが悪くても、対処しようとはしても良くなりますように、とは祈らないだろうからなぁ てるてる坊主、靴飛ばしの天気予報、おみくじ等の当たるまで引ける程度おまじないでも、駄目…
[気になる点] イザナミのリアル冥土カフェ、いや草 めちゃ気になる そりゃ黄泉竈食いまであるわけよね笑
[一言] サーナちゃん・・・;; 不幸の原因がそばにいなければさすがに10はいくよな?それでもいかないとかだと可哀そうすぎる
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