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【書籍化】主人公になり損ねたオジサン【12/10発売】  作者: カブキマン
アフター

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若き佐藤の肖像 前編

いつだったか高橋鈴木が語った若き佐藤の蛮行ネタです。

特典にしようと思ったけどこれまた文字数が……

「あーあ、あのロリコンどもの根城に隕石でも落ちて皆くたばらねえかなー」


 悪態を吐きながら繁華街をのそのそ歩くさまは正しくチンピラ。

 ロリコンども、というのは千景を狙う真世界と混沌の軍勢である。

 愚痴る佐藤に千景は苦笑を滲ませながら言う。


「いや別にそういう意味で私を狙ってるわけじゃないと思うけど……」

「目的が何であれJKのケツ追っかけ回してる成人って時点でロリコンだよロリコン」


 害悪、社会のゴミだと吐き捨てる。

 口は悪いがそれは自分を気遣うがゆえのことなので千景は密かに喜んでいた。


「しかしどうしたもんか。閣下も仰るように戦いは数だからなあ」


 柳と鬼咲を始末するためにはまずは手足を千切って行かねばなるまい。

 構成員を闇討ちして地道に片付けていく? いやそれでは芸がない。

 散々舐めた真似をしてくれたのだ。腹抱えて笑えるようなことをしてやらねば面白くない。


「とりあえず地道に嫌がらせするしかないかあ」

「地道に嫌がらせって……例えば?」

「とりあえず都内の警察から生活安全課に保管されてる情報をゲットしようかなって」

「……何のために?」


 もう既に嫌な予感しかしないが一応、千景は聞いてみた。


「ストーカー関連でマークされてるないしは逮捕(パク)られた奴の情報が欲しくてね」

「……その情報をどう使うの?」

「性欲目的っぽいのチョイスしてそいつら宛てに真世界、混沌の軍勢の美男美女の個人情報を送りつけるのさ」


 超人相手に一般人を使っても意味などないのでは? 今回に限ってはあるのだ。

 どちらの組織の構成員もある意味、意識が高いので無意味な殺しなどはまずしない。

 超人をヒットマンとして送り込めば普通に迎撃するだけだが一般人の嫌がらせなら強硬な手段にはまず出ないだろう。

 無視を決め込む可能性が高い。だが無視をしても嫌なものは嫌なはずだ。


「地味にメンタル削れると思うんだよな」

「……記憶操作で追い払うことも」

「それならもっかい個人情報をプレゼントすりゃ良いだけさ。新鮮な気持ちでストーキングを楽しめるだろうぜ」


 と笑う佐藤に千景は引いた。


「……だが、どうも決め手に欠けるっつーかパンチが弱いんだよなあ」


 足りない。何かが足りない。あと一つか二つ、何かピースをゲットできれば素晴らしい絵を描けるのに。

 ああでもないこうでもないと思考し始める佐藤だが


「ヒロくん、着いたよ」


 という声で我に返る。

 佐藤と千景がこの繁華街を訪れたのは依頼のため。内容は怪異の討伐だ。


「……なあチカちゃん、これって」

「うん。多分、全部乗っ取られてるね」


 とある雑居ビルを見上げ呟く。

 今回標的となる怪異はドッペルゲンガー。自分とそっくりの姿をした分身、見たら死ぬというアレだ。

 どうもドッペルゲンガーが悪さをしているらしいとのことで互助会に依頼が入ったのだが二人としても流石に予想外だった。


「一人二人ならともかくここまで大胆にやるたぁ馬鹿じゃないの?」

「今は界隈が荒れてて弱い怪異の討伐は後回しになってるからね。チャンスだと思ったのかも」

「やるだけやってとんずらこけば大丈夫ってか? 見通しが甘すぎるだろ」


 現に自分たちがここにいると佐藤は呆れるが、


「……ドッペルゲンガーか」

「ヒロくん?」


 人差し指と親指で顎を撫でる佐藤。ちゃり、とピアスが揺れる。

 千景は思った。あ、これ何か良くないことが起こる前兆だと。

 自分にとってではない。見知らぬ誰かが軽薄な悪意の毒牙にかかる。

 出会って一年も経っていないがそれなりに濃い時間を過ごしてきた。

 だからこそ分かる。分かってしまうのだ。


「何かに使えそうだしとりあえず確保しとくか~」

「……確保、ってことは使い魔か何かにするの?」

「ああ。別にそれでも依頼達成には問題ないっしょ?」

「そうだね。じゃ、行こっか」


 千景が一般人を巻き込まないよう雑居ビルを結界で覆うと同時にオフィスへ突入。

 本物に成り代わっていたドッペルゲンガーを一匹残らずシバキ倒し使い魔として契約。

 五分とかからず依頼は終了した。


「ねえヒロくん、この後ヒマ?」

「ん? ああ、特に予定はないよ。強いて言うなら依頼の報酬受け取るぐらいさ」

「じゃあ、さ。ちょっとぶらぶらしない?」


 千景からすれば精一杯のデートのお誘いだ。

 複雑な乙女心は分からないものの佐藤としても嬉しい提案。即座に了承した。

 そして二人は特にあてもなく繁華街をぶらつくことに。

 お喋りしながら歩く二人。拳一つ分の距離がもどかしいと佐藤も千景も思っているけれど踏み込めない。

 何ともまあ甘酸っぱい空気を撒き散らしていたのだが……。


「む、あれは」

「? どうしたの」

「いやあそこの雑居ビルに俺が贔屓にしてるAVメーカーのオフィスがはい……って……」


 言葉は最後まで続かず、佐藤の目が大きく見開かれる。


「……ヒロくん?」

「――――AV?」


 その時、佐藤に電流走る。

 AV、ドッペルゲンガー、欠けていたピースがガチリと嵌まる音が聞こえた。


「おいおいおいやべえな今の俺急激にIQが上昇しちゃってねえか~?

まずいなこの知能指数? 並んじゃった感あるぜアインシュタイン!

真剣に目指すか東大? 何か今なら行けそうな気がするぜぇ……ウケケケケケ」


 ニヤつく佐藤、そんな彼を見て戦慄する千景。


(……これ多分、私の想像を軽く凌駕するレベルで酷いことが起きそう)


 真世界、混沌の軍勢を襲う奇跡のカーニバル、その幕が上がった瞬間である。

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主人公になり損ねたオジサン 12月10日発売

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― 新着の感想 ―
これで蛙化しないチカさんやっぱ面白れぇ女
付き合い長いからって甘酸っぱい雰囲気の中でその話題出すのは減点要素じゃない~? 発想が悪魔より邪悪過ぎる
出た!ドッペルゲンガーのハードコア作品演者作戦!
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