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【書籍化】主人公になり損ねたオジサン【12/10発売】  作者: カブキマン
アフター

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222/249

子供たちのある放課後

前話に書籍化についての活動報告のURLを載せてます。

「オジサン、今日は遅いんだって?」

「うん。社長さんとカラオケに行くんだって。社長のことだから多分、オールになるだろうって言ってた」


 カミングアウトの翌日。子供組は学校終わりに合流し佐藤の実家に向かっていた。

 昨夜、雑談の中で佐藤が学生時代に書き溜めていたという戦術ノートの存在が明らかになった。

 今とは違う未熟な視点で書かれたそれは参考になるだろうと頼み込み、貰えることになったのだ。


「夏に来た以来ですね」

「あの時は楽しかったねえ」

「皆は来たことあるの?」

「うん。お盆のあたりにママたちと一緒に遊びに来たんだ」

「へえ」


 などと話していると到着。

 預かった鍵で中に入りそのまま佐藤の自室へ。


「天井裏に隠してあるんでしたっけ」

「なら俺が探すよ。埃とかあるだろうしネズミとかも出るかもだからね」

「さらっと言えるあたり光くんって結構、やるよね」

「学校とかでも密かにモテてそうだね」

「バレンタインに宛名のないチョコとか貰ってそうですよね」


 女三人の会話に苦笑しつつ光は押し入れの中に入っていく。

 残された三人は大人しくしているかと言えばそんなことはなく、


「折角だから家探ししよっか! オジサンの若い頃のアレコレ発掘しちゃおう!!」


 と梨華。


「……梨華さんが言うなら」


 と言いつつ顔は乗り気なサーナ。


「まあ鍵渡すぐらいだし別に大丈夫だとは思うよ」


 特に止めない朔夜。家探しが可決された。


「……英雄おじさんは学生の頃、こういう部屋で過ごしてたんだな」

「朔夜さんは英雄さんの実家に来たことはないのですか?」

「うん。基本、英雄おじさんが地元に来る感じだったからね」


 家族旅行で東京に行った際も案内はしてもらったがホテルを取っていたので来たことはないのだとか。

 雑談しながらあれこれ探していると朔夜がベッドの下からあるものを発見した。


「おせんべいのカンカン……結構重いな」

「これは……ガラケー、というやつでしょうか?」


 贈答品などでもらう煎餅の詰め合わせが入った缶の中には複数のガラケーが詰まっていた。

 それぞれに日付が書かれた付箋が貼られている。恐らくは使っていた時期だろう。


「こういうの取っておくタイプなんですね」

「英雄おじさん、あれで存外思い出の品とかはしっかり保管しておくタイプだからね」


 ガラケーには青春時代の思い出が詰まっているのだろう。

 どれ、と朔夜が中学時代に使っていたと思われるガラケーの一つを手に取る。


「何かの術式がかけられてるな」

「劣化を防ぐ保護系だと思います。かなり高度なもののようですね。そして恐らく」


 サーナがガラケーの電源ボタンを押すと反応あり。


「充電器がなかったのでもしかしたらと思いますがやはりですか」

「何時でも思い出を振り返ることができるように、か。細やかだなあ」

「うわ、アドレス帳がびっしり……いえでもらしいですね」

「滅茶苦茶交友関係広いからね」

「あ、私も見たい!」


 そんな話をしていると梨華もやって来てガラケー調査に加わる。


「ガラケーの時はメールが主流だったんだっけ。わ、フォルダ分けとかするタイプなんだ」

「野郎、女の子、家族、その他の四つだね」

「とりあえず女の子の方を覗いてみません?」

「賛成」


 女の子フォルダを覗けば出るわ出るわ大量のメール。

 誰か一人とではなく、沢山の名前がずらり。


「「「うっわ……」」」


 相手さんに申し訳ないと思いつつ中身を検めてみたのだが明らかに何人かは好意が窺える文面だった。


「送信メールは残ってないからアレだけど」

「ええ。続くメールからして英雄さんは鈍感系主人公の如くモヤっとな返信ばかりしているっぽいですね」

「対人関係強いのに何で恋愛絡みは駄目なんだろう……」


 別のガラケーも調べてみたが同じような感じだった。


「あ、この電話帳のチカちゃんって……ママ? どんなやり取りしてたんだろう」


 と梨華が母の名をフォルダから探してみたのだが、


「……何とも、色気のない文面ですね」

「業務連絡かな?」


 誰かに見られることを警戒してか裏のことには触れていない。

 親交を深める過程でのものだろう。日常会話がメインなのだがどうにも硬い。


「あ、でも見て。日付が進むごとにママも若干普通に……いやそれでも何か硬いな。これホントにママ?」

「おっとり上品系の愛想の良い方というイメージが強いので意外ですね」

「高橋さん鈴木さんとはどんな感じだったのかな」


 野郎フォルダを覗くと親友だけあってかなりの量が保存されていた。

 しかしその中身は、


「凄い。死ねって言葉がこんな乱発されてるメール初めて見た。一件に大体三回は使ってる」

「死神の私もびっくりです」

「……英雄おじさんがウザ絡みしてたんだろうなっていうのは何となく予想がつく」


 喧嘩するほど何とやら、ということだろう。

 そんな三人が一時は決別し殺し合っていたというのだから分からないものだ。


「ガラケーだけでまだまだ時間潰せそうだけどこれで終わるのも何だし一旦置いとこうか」

「そうですね。次は机周りでも検めましょうか」


 その後もプリ帳、アクセサリー類、ポイントカードの束、アルバムなど様々な品でキャッキャする三人だったが……。


「……あの、光くんは?」


 ふと気付く。結構な時間が経っているのに光が戻って来ない。

 一度部屋から出たとかそういうこともないだろう。


「……佐藤英雄の部屋、という事実を甘く見ていたのかもしれませんね」

「いやでも危ないならオジサンだって何か一言あると思うんだけど」

「と、とりあえず私たちも天井裏に行ってみよう」


 臨戦態勢を取り押し入れから天井裏に突入。

 しかし天井裏に入った瞬間、これまで見えていた薄暗い空間が一変。


「「「え」」」


 ぽかんとする三人。真っ先に我に返ったのは梨華だった。


「…………アダルトコーナー?」


 一般書店に併設されたアダルトコーナーに以前、友達とおふざけで入ったことがあった。

 梨華の目に映るのはその時のそれによく似た光景だ。


「く、空間を弄っていたようですね」

「……あそこの札見て。佐藤の秘密の部屋って書いてある」

「えぇ……?」


 実家に何作ってんだあの中年(当時は少年)と三人が呆れていると、


「やめ……やめろ! 離せ!!」


 光の声だ。かなり焦っている。

 三人が急いで声の聞こえた方へ駆けつけると、


【私はきれいじゃないけれど人は見かけによらぬもの。私をしのぐ賢い帽子あるなら私は身を引こう】

【山高帽子は真っ黒だ。シルクハットはすらりと高い。私はオカズ推薦エロ帽子】

【私は彼らの上をいく。君の頭に隠れたものをエロ帽子はお見通し】

【かぶれば君に教えよう。君が使うべきオカズのジャンルを】

「だから要らないって言ってるだろ!? 俺が探してるのは戦術……あ、こらヤメ!!」


 魔女が被るような古ぼけた帽子と格闘する光の姿が。

 三人は顔を見合わせ頷く。


「「「そっとしておこう」」」

「助けてよ!?」


 戦術ノートは二時間後ぐらいに見つかった。

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主人公になり損ねたオジサン 12月10日発売

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― 新着の感想 ―
[一言] 組分け帽子と同じなら大声でオカズの内容を叫ばれるのか……
[一言]  どういう事なの……w
[良い点] こんな組分け帽子は嫌だよwww
感想一覧
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