表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【書籍化】主人公になり損ねたオジサン【12/10発売】  作者: カブキマン
本編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

206/249

チート野郎VS悪役令嬢②

 四人の中で話がまとまると俺は直ぐ、休憩に入った。

 悪役令嬢との戦いとその後の大規模な時間操作による消耗があるからな。

 そして八時頃、互助会に出向き表裏人間人外問わず世界の重鎮に情報を共有した。

 ちなみに今日も会社だが会社行ってる暇はねえのでマジックアイテムで作った分身を行かせた。

 年末の忙しい時期に申し訳ないとは思うが……すまねえ社長、すまねえ皆、世界を守るためサボらせてくれ。


「佐藤さん、準備が整いましたがそちらは……?」

「問題ねえ。こっちも終わったよ」


 人外はともかく人間……表の指導者は情報を共有した途端、軒並みぶっ倒れた。

 数時間、整理と休養のために時間が欲しいと懇願され了承した。

 とは言えその間、何もしていないのは無駄なのでその時間を使って各神話のトップに俺の計画を説明していたのだ。

 全会一致で協力すると言ってくれたよ。

 俺の計画への協力だけでなく各神話秘蔵の術やらアイテムやらも提供してくれるとのことなので本当に頼もしい。


(……全員、顔色悪いな)


 以前、インベーダー討伐の前に訪れた官邸内の一室。

 迎えに来た会長と共に赴いたのだがリモートで繋がっている各国の指導者の顔色は最悪だった。


「……佐藤さん。単刀直入に聞く。勝てるのかね?」


 各国首脳の視線を受け代表して総理がそう問うた。


「出る前に負けること考えるバカいるかよ!!

俺がレスラーならそう言って根性ビンタしてましたが生憎と俺はリーマンだ。良かったですね」


 首相の首(物理)が繋がっちまったなぁ。


<ミスター。残念ながら私は君の小粋なジョークに付き合っていられる心の余裕はないのだよ>

「じゃあ真面目に答えますが勝てるかどうかなんて断言出来るわけないでしょう」


 気休めが欲しいなら最初からそう言って欲しい。

 俺は時々鈍感ラブコメ主人公並に察しが悪くなると界隈で有名だとかそうでないとか。


<……自棄に、なっているようではありませんね>

<君は、何とも思わないのか?>

「と言いますと?」


 何が言いたい?


<あなたはこれまで絶対的な力の持ち主として頂点に君臨し続けて来た。

それこそ神と言えどあなたには敵わないと言う。

自分以外の全てを敵に回しても尚、余裕で勝利出来るほどの絶対性……それが崩れたのですよ?>


 なのに何故、冷静で居られるのか。

 お偉方の言いたいことは分かったが……そいつはあまりにも見当外れな疑問だ。


「勝つか負けるか。生きるかくたばるか。常にその二択でしょう、本気の戦いなんてものは。

最近はとんとそういうことがなかったとは言えだ。俺という人間の戦いは最初からそうだった」


 初めて裏に巻き込まれたあの日。俺は絶体絶命の窮地に立っていた。

 そこからの戦いもそう。本気の戦いは何時だってギリギリだった。

 ハデスを初めてボコったあたりからそういう戦いはなくなったが……それでも、だ。


「勝てるかどうか分からないなんてのは今更の話だ。しかし一つ断言出来る」


 結末の見えぬ戦いであろうとも、


「俺は何時だって勝つために戦って来た。あらゆる手を打ち、偶然さえも引き寄せて勝ち続けて来た」


 今回もそうするまでの話。だからこそ問おう。


「俺にベットするのかしないのか。それだけの話でしょう」

<……なるほど。確かにその通りだ。我々の非礼を詫びよう>


 大統領は小さく詫びを入れ、笑った。


<そして君に賭けよう。妻に内緒で貯めてるへそくりも含めた全財産をね>


 大統領に呼応して他の首脳も支持を確約してくれたのでようやっと本題に入れる。

 それはそうとふと思ったんだが展開されてる翻訳術式に介入して偉い人たちに愉快な語尾を付与してみたらどうなるだろう?

 我ながら悪い癖だとは思うが真面目な場面でこそ悪戯がしたくなって困る。

 一斉に噴き出したら空気滅茶苦茶になるやろなぁ。


「俺が具体的に何をして地球を護って戦うのかそのご説明を致しましょう」


 流石に何も知らんままってのはアレだからな。

 最低限、表の人間にも分かるようなるべく噛み砕いて説明するつもりだ。


「まずは奴と俺の立場についてだ。俺には守るべきものがあり奴にはそれがない」


 これがどういうことか分かるか? 問うと皆、頷いた。


<あちらは攻める側でこちらは守る側>

<つまりは防衛戦だ>

<そして悲しいことに君たちの戦いに条約などというものはない>

<そもあちらは我々を滅ぼしたいと願っているわけだからな>

<地球を……我々の宇宙を巻き込むように立ち回ることは容易に想像出来る>

<近くで戦われたら恐らく、その余波だけで地球は吹き飛ぶのではないかね?>


 話が早くて助かるわぁ……。


「仰る通り。そして当然、そこについては俺も考えています。具体的に説明しますと地球に蓋をするつもりです」

<……蓋?>

「一本道で行き止まりの路地を想像してください」


 行き止まりにはボールがある。しかし、入口には怖い顔のおじさん。

 おじさんをどうにかしない限りボールは取れない。


<おじさんが蓋でボールが地球というわけか>

「あくまで分かり易く説明するためのイメージですがね」


 今、地球がある場所に俺が創り出した偽の地球を固定することで本来の地球の位置をずらす。

 偽の地球を破壊しない限り本物には手が届かない。


「だから偽の地球と俺の命をリンクさせる。つまり俺が死なない限り蓋は外れないってわけでさぁ」


 ただそれはそれとしてずらした本物の地球もしっかり保護しなければまずい。

 なので神々には本物の地球の保護と偽物の地球を維持するためのエネルギーを供給してもらう手筈だ。


「そして偽の地球には更に機能を追加します。ただの蓋に使うだけでは勿体ないですからね」


 偽の地球のもう一つの役割は強化装置だ。

 強化の術式を作成段階から組み込んで総力戦に臨む者らの力を底上げしてもらう。

 さっき言ったエネルギーを供給してもらうってのはこれも含めての話だ。

 俺の命とリンクした偽地球の強化術式に軍勢を接続すりゃ多分、地球外での活動も可能になるだろう。

 間接的とは言え俺と繋がってるわけだしな。


<本命の守護と戦力の底上げ……豪華なものだ>

<というかさらっと偽の地球を創造するって……いや今更だな>


 何やねんそのリアクション。


「とりあえずこれが俺が心置きなく戦えるようにするための大まかな方針です。

ここから先は俺が悪役令嬢をどう仕留めるか個人的な立ち回りの話になるので省きます」


 お偉方にそれを話してもしょうがないし、俺自身まだ色々考えてる最中だからな。

 あちらもそれは理解しているので小さく頷いてくれた。


<では私たちは自国の裏の人間に話を通すとしよう>

「お願いします。ええ、俺も俺で西の引き籠もりを引き摺りだしますんで」


 話し合いが終わり通信が途切れた。


「佐藤さん、西の引き籠もりというのは……」

「会長も分かってるだろ? 京都の連中だよ。こういう時ぐらいは協力してもらわんとな」

「これを機に妙な要求をされたりしませんかね?」

「大丈夫だろ」


 だって既に弱み握ってるからな。


「俺がかけた呪いを解除して欲しけりゃ死ぬ気で働けって言えば良いだけだもん」

「……あぁ、そういえばあちらのトップに何とも惨たらしい呪いをかけてましたね」


 失礼だな、正当な報復だよ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
主人公になり損ねたオジサン 12月10日発売

気に入って頂けましたらブクマ、評価よろしくお願いします。

小説家になろう 勝手にランキング
― 新着の感想 ―
[一言] 元気玉くらいなら佐藤さんも作れるだろうけど、太陽系をすっ飛ばすくらいだからなぁ 色々封印術や呪いで弱体化させようとしても、金魚すくいのポイ並に千切れるだろう。 こちらの土俵ルールに引きずり…
[良い点] 闘魂注入ビンタしてる暇はなかった。 世界規模のプロジェクトおじさん、燃えるなぁ
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ