アイドルの裏側。
有料版のアプリを起動した。
指定した電話番号につながった。
良く知っている人間たちの本音の会話。胸が高鳴る。
・・・・・・・・・・・・・
「あなた昨日はどこに行ってたの?」
「仕事だよ。その後、仲間と一杯飲んでた・・」
「LINEしたのに、どうして返信してくれなかったの?」
・・・・沈黙。
「ほ、ほら、この前も酔っぱらって、スマホなくしちゃっただろ。だから、カバンの中に入れてた・・」
「家に帰ってからでも返事くらい出来たでしょ?」
「で、泥酔しちゃって、そのまま寝ちゃったんだよ・・」
・・・・沈黙。
「事務所が、あなたを切ろうとしてる・・」
「そ、そんなのいつもの事だろ。気にすることなんかないよ」
「のんきなこと言ってる場合じゃないわ。今度こそ、社長も本気よ」
・・・・沈黙。
「う、うちの事務所は俺で持ってんだぜ。そんなこと出来る訳ないだろ・・」
・・・・沈黙。
「あなた、いつの時代の話をしてるの? あなたの人気が絶頂だったのは、もう5年も前の話よ」
「で、でもレギュラー2本持ってるし、CMだって1本やってるだろ・・」
・・・・沈黙。
「そのレギュラー取るために、スポンサーに事務所の女の子をミツイデル事くらい知ってるでしょ?」
「・・・・」
・・・・沈黙。
カサカサ、ジュポ。
煙草に火をつける音。
フー--。
・・・・沈黙。
「沙保里とは、別れるって約束したでしょ?」
・・・・沈黙。
フーーー。
・・・・沈黙。
「うっせーんだよ。あーだ、こーだって・・」
「・・・・」
「あー-、辞めてやるよ。こんなクソ事務所。俺なら他の事務所からも引く手あまたなんだよ!・・」
・・・・沈黙。
「辞めるのはあなたの自由だけど、事務所に後ろ足で砂を掛ける様な事はしないでね。そんなことすると、もうこの世界では生きて行けないから・・」
・・・・沈黙。
フーーー。
・・・・沈黙。
「な、なんだよ。引き止めないのかよ? あのオヤジ、本気で、俺を切るつもりなのか・・?」
・・・・沈黙。
「後でLINE読んでみるといいわ。今日があのCMの再契約の日。さっき、RYU-ZOU君で新しい契約がまとまったわ・・。沙保里サオリからも見限られなきゃいいけどね・・」
・・・・沈黙。
「ま、待って下さい、千鶴子さん。もう、僕のこと飽きちゃったんですか?」
・・・・沈黙。
「あなたは、あの事務所が私に与えてくれたミツギモノ。あの頃は人気絶頂で、少々の火遊びも、逆に私を燃え上がらせてくれたわ。でも、もう何とも感じない。社長が、RYU-ZOU君をプレゼントしてくれたわ。せいぜい、人気の残り火を大事にして、細々とやって行くことね・・・」
・・・・・・・・・・・・・・・・
私は、アプリを切った。
千鶴子さん、グッジョ。
きっと、あいつは俺に泣きついてくるだろう。
LGBTのクライアントになら、あいつの価値はまだ十分にあるハズだ・・・。