ニューイヤー駅伝
無料版のアプリを起動した。
アプリ側が勝手に選択した電話番号につながった。相手の電話番号は表示されない。
相手は電話をしていない。盗聴が始まった。
全く知らない他人の会話。胸が高鳴る。
・・・・・・・・・・・・・
「タクミ君て駅伝が好きなんだね・・」
「うん。おやじの影響で、お正月はニューイヤー駅伝と箱根駅伝を見て育って来たからね・・」
「あっ、スタートしたよ」
「みんな日本を代表する企業だから、なんかなじみがあるだろ・・」
「そうだね。トヨタ、ホンダ、スバル、マツダ、三菱。車メーカーが多いね」
「さあ、いよいよスタートです。解説の増田さんよろしくお願いします」
「新田さん。こちらこそよろしくお願いします」
「あ、いきなりトヨタ自動車の本田選手が飛び出しましたね」
「そうですね。この本田選手はお父さんが、高校のサッカー部の監督をしていて、中学時代はサッカーか駅伝か迷ったらしいです。その時、お母さんが駅伝のタスキの大切さを教えたらしいですよ・・」
「増田さん。早速詳し過ぎる解説ありがとうございます」
「ホンダの豊田選手が後を追いますね・・」
「この豊田選手のお姉さんも駅伝の選手で、豊田選手の為にピンクの勝負パンツを作ってあげたそうです」
「じゃあ、あの白いパンツの下はピンクのパンティーなんですね」
「しかも、フリルがたくさん付いてるそうです」
「増田さん。あなたどうやってそんな情報を入手するんですか」
「それは、企業秘密です」
「マツダの本多選手が三番手につきましたよ」
「この本多選手のお兄さんはプロゴルファーで、優勝の副賞であるベンツをプレゼントしてくれたそうです。それまで走って通勤していたのを車通勤にした結果、半年でレギュラーから落ちてしまったんです。それをお父さんから指摘されて、また走って通勤する様にしたそうです」
「そのベンツはどうしたんですか?」
「代わりにお父さんが使ってるようです」
「スバルの本多選手が5人抜きです」
「この本多選手のお姉さんも女子プロゴルファーで、優勝の副賞であるBMWをあげようとしたんですが、スバル車以外は乗れないと断られたそうです」
「この本多選手は車通勤なんですか?」
「いえ、会社の寮に住んでいますので、会社のバスで通勤しています」
「じゃあ、車は買い物専用とか・・?」
「いや、彼にはちょっとした癖がありまして、xxxxは車の中じゃなきゃ燃えないそうです」
「増田さん。あなた、どうやってそんな情報を手をいれてるんですか?」
「私もプロとして、身体を張ってますから・・」
「もしかして・・・」
「さあ、いよいよ高速の二区ですね」
「ニューイヤー駅伝のルールで、外人選手はこの二区でしか使えませんので、ほとんどの企業が外人ランナーを使ってますね」
「それも、ほぼ全員がケニヤ出身のランナーたちですね」
「この二区でのゴボウ抜きの最高が26人抜きなんですが、今年、ある選手は40人抜きを計画しているそうです」
「40人抜きって、37チームしかないんですよ。どうやって、40人抜けるんですか?」
「37位でスタートして、36人抜きを達成します。それから4人に抜かれてまた4人を抜き返すそうです」
「ここはまだ二区ですよ。なんでまたそんな無駄な事を・・・」
「あまりに速すぎて、普通に走るのがつまらないそうです」
「ちょっと、増田さんに聞きたいんですけど・・・」
「なんでしょうか?」
「タスキを受け取る場所ですが、中継所のどこでもいいんでしょうか?」
「ごめんなさい。私、個人情報は詳しいんですけど、駅伝のルールはあまり知らないんですけど」
「ちょっと思ったんですけど、その40人抜きの選手が、中継所でタスキを渡さずにそのまま走って、四区の手前で三区のランナーにタスキを渡したら、他チームを相当に引き離せるんじゃないですかね?」
「それ、すごいアイデアですね。40人抜きなんて馬鹿な事考えないで、その方がチームの為になりますね」
「それにしてもケニア人ランナーのスピードは半端ないですね」
「そうなんです。だから高速の二区って呼ばれているわけです」
「確か四区は花の四区ですね」
「四区には各チームのエースがそろいますからね」
「ショボいxx区とかないんですか?」
「実はxx区は・・・、おっとイエネー、イエネー」
「増田さん。ちょっと小耳に挟んだんですけど、ケニアのxxx選手が、今年日本に帰化するらしいですね・・」
「はい。日本人の女性と結婚して日本人になるそうです。ちなみに日本名は来村庄之助だそうです」
「その場合、彼は二区以外でも走れるんですか?」
「それは日本人ですから、花の四区でも大丈夫じゃないですか」
「もし・・・」
「新田さん。それ以上は言わないでください。みんな同じこと考えてますから・・・」
「・・・・・」
「プチ情報ですが、ケニア人のxx選手は、坂東玉舎武郎に、xx選手は、毛二矢人乃介として帰化する予定です」
「と、言う事は・・・」
「一区から七区まで全員帰化選手という時代が直ぐにくるでしょうね」
・・・・・・・・・
俺は盗聴アプリを切った。
「そうなったら、せめて二区だけでも帰化人なしでやって貰いたいもんだニャー」
「あっ、それだと低速の二区になっちゃうニャー」




