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盗聴アプリ  作者: マーク・ランシット


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火葬研の女

 無料版のアプリを起動した。

 アプリ側が勝手に選択した電話番号につながった。相手の電話番号は表示されない。


 相手は電話をしていない。盗聴が始まった。

 全く知らない他人の会話。胸が高鳴る。


 ・・・・・・・・・・・・・


「あなたがこの研究所の所長さんですか?」

「いえ、私は研究員の榊マルコです」

「研究員という事はヒラ社員ですか?」

「そ、そうですが、それがなにか?」

「見た目は大変お若そうですが、所長さんをされていてもよさそうな・・・」

「・・・・よさそうな、何でしょうか?」

「・・・いえ、何でもありません・・」


 ・・・・・・・・・・・


「・・今日はどんなご用件ですか?」

「あっ、大変失礼しました。私は京都府の 久世郡久御山町くせぐんくみやまちょうの町内新聞の記者をしております、建長寺呆然と申します」

「・・・・」

「町内に新しく出来たこの研究所について、特集記事を書くことになりまして・・・」


 ・・・・・・・・


「この火葬研というのは、どんな事を研究されてるんでしょうか?」

「火葬に関するありとあらゆる事を研究しております・・」

「例えば・・・」

「・・火葬に用いる燃料とか・・・」

「燃料は一般的には、ガスや灯油と聞いておりますが・・」

「この研究所では、それらが不足した場合の対応策として、石炭、薪、新聞紙、週刊誌、燃えるゴミ等の応用を研究しております」

「も、燃えるゴミ・・・?」

「もちろん生ごみは乾燥させてから使用します」

「いえ、そう言う事ではなくて・・」

「・・・なんでしょう?」

「ご、ご遺体をゴミで焼くのにはちょっと抵抗があるのではないかと・・・?」

「あなた、石油もガスもプランクトンの死骸から出来てるんですよ。生ゴミも似たようなものでしょう?」

「そ、その場合は、火葬場に可燃ゴミ使用の表示はされるんですか?」

「馬鹿な事言わないでください。当然、地球にやさしい火葬場と表示されるに決まっているじゃなにですか」

「地球にやさしい・・・、でもご遺体には・・・」


 ・・・・・・・・・


「その他には・・・」

「火葬場で発生した熱を使ってお湯を沸かし、地域の住民に提供する研究です」

「お風呂のお湯なんかにも・・」

「当然です。ご先祖たちの思いのこもった優しいお湯ですから、きっと疲れも取れることでしょう・・」


 ・・・・・・・・・


「その他には・・・」

「・・ご遺体の死因の究明・・」

「し、死因の究明って、まさか・・・」

「先日も、病死と判定されたご遺体の腹部に38口径の銃弾が2発見つかりました」

「・・・・?」

「二日前には、某火葬場で焼かれた遺骨から大量のヒ素が発見され、恐らく自然死ではなく、殺害されたのではないかとの憶測が持たれました・・・」


 ・・・・・・・・・・


「榊マルコさん、あなたもしかして科捜研の研究員なのではないですか?」

「残念ながら、科捜研の女は終了しました」

「私もファンだったので大変残念です」

「いつから見てました?」

「シーズン1からです」

「それは、長いお付き合いでしたね」

「1999年からですね。23年も前になりますね」


 ・・・・・・・・・・


「あなたのおっしゃる通り、この火葬研は京都府警科学捜査研究所の別室です」

「・・・なるほど」

「・・・・・・・」

「交番を建て増しして、その2階に研究所が出来たので、京都府警の関連施設なのかなと」

「あなた、なかなか鋭いですね」

「なんせ、シーズン1から見てますからね」


 ・・・・・・・・・・・


 私は盗聴アプリを切った。


「榊マルコ恐るべし。交番の2階じゃ、メンバーは恐らく2~3人。調査機器もなんもネーんだろうな」


「恐らく所長は無しで、風間トールーか小池テッペンあたりとイチャイチャやってるんだろーな・・・」

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