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盗聴アプリ  作者: マーク・ランシット


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28/49

聖なる夜

 有料版のアプリを起動した。


 指定した電話番号につながる。

 良く知っている人間の会話。胸が高鳴る。


 ・・・・・・・・・・・・・


「今日はクリスマス・イヴ。みさきちゃんは誰と過ごすのかなか?」


{{あっ、タレントのポップコーン・みさきちゃんだ・・。と。言う事はあいつテレビ見てんな・・}}


「私は両親といっしょにローストビーフ&ピザを食べまーす」

「えっ、ボーイフレンドと一緒じゃないの・・・」

「そんな人、いませー-ん」



{{・・嘘だろ、そんな訳ないじゃん・・}}


「じゃ、僕とドー?」

「マイプール超合金さん、遠藤ふゆさんがいるじゃないですか・・」

「あいつ、彼女じゃないから・・」

「えっ、とってもお似合いですよ」

「うそっ・・・」


{{仮装かそうレーザー、俺の大好きなみさきちゃんのこと口説いてんじゃねーぞ。}}


「・・ドイツ南部、ミュンヘンを行進するのは、500年も前から悪霊払いの大役をはたして来た怪物クロンプスです・・」


{{あっ、あいつチャンネル変えやがった・・。なんで、こんな聖なる夜に怪物のニュースなんかみてるんだよ・・。あっ、またチャンネル変えやがった・・}}


「今夜はクリスマス・イヴ、現在の渋谷の交差点の状況です・・・、加藤さーん・・」

「はい。こちら加藤です。たくさんの男女が手をつないで歩いてます・・、いや男男のカップルも、女女のカップルも見受けられますね・・、時代の変化を感じます・・」

「加藤さーん。雪が降り始めましたね。外は寒いですか?」

「そうなんですよ、いかりやさん。でも、カップルたちの燃え上がるような情熱で雪が途中で溶けちゃってますね・・」


{{バカ言ってんじゃねーよ。そんなに熱いなら、身体に火が付いてるだろうが・・・}}


 ・・・・・・・


{{あれ、もう八時過ぎてんぞ・・。あいつバイト先では、彼女の部屋で聖夜を迎えるなんて言ってたくせに、もしかして嘘だったんじゃねーか・・・。ったく、見え張って嘘なんかついてんじゃねーよ・・}}


 ・・・・・・・


 ガチャガチャ。

 カギを開ける音。


「ごめんねー、志村君。KFCがすごく混んでて、買うのにずいぶん待たされちゃった・・」

「いいよ。俺が無理してKFCリクエストしちゃった所為だから・・」


 ゴソゴソ。


「・・いやだー、志村君たら。それは夜のお楽しみでしょ・・・」


{{くそー、やっぱり本当だったんだ・・。うらやましいなー}}


「今日のごちそうは何かな・・・?」

「昨日、時間を掛けてビーフシチューを作って置いたわよ」

「そっか、じゃあ。フライド・チキンにビーフ・シチュー、それと俺が買って来たシャンパンだな」

「・・デザートもあるからね・・」

「・・えっ、それってなー-にかなー-・・」


{{くっそー-、超羨ましいー-。・・・おれ、カップ焼きそばにわかめスープだけだからな・・・}}


 ブツッ。

 俺は盗聴アプリを切った。


 ・・・・・・・・・


 ドン、ドン。


「おーい、高木くん、いるかー」

「あっ、はい。どちらさんですか?」

「となりの部屋に住んでる、仲本だけど・・」

「あっ、はい。いま開けます」


 ギーー。

 古いドアが開く音。


「・・高木青年。メリーー・クリスマス・・」

「・・・あっ、はい。メリークリスマスっす・・」

「あっ、やっぱりだ」

「・・何がでしょう・・?」

「今日もカップ麺だねー-」

「・・・・・」

「帰り道に、スーパーで多めに買ったんで、お裾分けだ・・」

「・・・・・」

「クリスマスと言えばチキンだね。はい、ドーゾ」

「・・・焼き鳥っすか・・・」

「後はビーフ・シチュー」

「・・・肉ジャガっすか・・・」

「最後はシャンパン」

「・・これ、シャンメリっすね・・」


 ・・・・・・・・


「ちょっと甘いみたいだから、焼酎で割れよ。焼酎はあるんだろ?」

「・・あっ、はい。麦焼酎の ”いいちち” があります・・・」


 ・・・・・・・・


「ところで高木青年。君はまだここに引っ越してきて日が浅い。なのでこのアパートの最大の問題点を教えておこう」

「・・・・?」

「壁が薄い。べニア板1枚に壁らしきペンキを塗ったくっただけの代物だ・・」

「・・・つまり・・・?」

「隣の住人の声が筒抜けだ・・」


 ・・・・・・・・・沈黙。


「俺の部屋の隣に85歳を過ぎた老夫婦がすんでいる」

「・・・・・・」

「その老夫婦がまだ、現役なんだわ・・・。意味、分かる?」

「・・・・・・」

「週一でおっぱじめちゃうのよ・・」

「・・・・おぞましい感じがしますね・・・・」

「・・執念に近い・・、喘ぎ声なんて、まるで悪魔の様だ・・恐ろしくて寝られんよ・・。よりによって今日がその日だ・・・」


 ・・・・・・・・・沈黙。


「・・・まあ、君に限っては無いと思うが、この部屋に女の子なんか連れ込んじゃダメだからな・・。それじゃあ、良いクリスマスをね」


 バタン。

 ドアの閉まる音。


 ・・・・・・・・・


「・・・なんで、オレ、聖なる夜に、よりによって85歳の夫婦の喘ぎ声の話なんて聞かされなきゃならないんだよ・・・?」


 ・・・・・・・・・


「・・てか、仲本のおっさん、俺の盗聴を盗み聞きしてただろー-」


 ・・・・・・・・・


「・・このアパート、怖っえー-。壁、うっすー--・・」



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