おっさんずラブ
有料版のアプリを起動した。
対象者は電話をしていない。盗聴が始まった。
友人であるドン2社員から聞き出した電話番号、TV夕日プロデューサーたちの仕事上の会話。
どんな話が飛び出すのか。胸が高鳴る。
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「御釜田プロデューサー、深夜枠ドラマ最高視聴率達成おめでとうございます」
「いや、みんなの協力のお陰だよ。特に下根田君の協力には感謝している」
「ハジテレビのプロデューサーたちへの盗聴は、良いヒントになりましたね」
「まあ、もともと私の中にあった引き出しの一つを開けるきっかけになってくれた程度ではあるがね・・・」
・・・・・・・
「しかし、御釜田プロデューサーも、よくぞタイトルの変更を決断してくれましたね」
「ゲイハード・ノーペイン・ノーダーティーの事だね。私は結構気に入っていたんだがね、下根田君からの強い説得があって、結局・・・、オカマちゃんずラブ・イタクないもん・コワクないもん・・・が、若い情弱世代の共感を得たのかもしれないね・・・」
「・・しかし、最近の若年男子の情弱性と飽くなき美への探求心はとどまることを知りませんね・・・」
「下根田くん。やはり、君の着眼点は素晴らしいね。我々がこのドラマに込めるのも、そのテーマであるべきなんだよ」
・・・・・・・
「主人公たちが、全員美形なのはそのせいなんですね・・・」
「それに比較して、女性たちは全員ヤボッタイ女優を選択した。しかも、彼女たちは美形男子に憧れ、ひれ伏す役回りだ」
「若年男子たちは、このドラマで理想の世界に浸り、そして幸せな気分で眠りに着くんですね」
「・・・そうだ。だから、男性用化粧品、フェイスマッサージャー、高級男性下着といったメーカーが飛び付いて来ているのだよ。これは視聴率よりも重要なことだ・・・」
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「プロデューサー、たった今現場から連絡がありまして、男性主人公3人のうち2人(ゼンジロー君とダイゴロー君)が、実際に恋愛状態になってしまった様なんです・・・・」
「・・よくあることだが演技に入り込んじゃったんだな・・」
「・・おかげで、もう一人のダイキチ君とのラブシーンが出来ないと言っているんですよ」
「もし、強制しようものなら・・・」
「・・・ワチキは首をくくって、死んでしまいおすえー-って、言ってるらしいです・・・」
「・・そいつ何人なんだ・・?」
「・・ポーランド人と日本人のハーフなんですが、日本人女性が芸者だったらしいです・・」
「・・そいつの名前が・・・?」
「ゼンジロー・コラマタスカヤです」
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「ダイゴロー君は?」
「・・・お父さんが韓国人で、お母さんが日本人です。名前はぺ・ダイゴローです」
「・・・ちなみにダイキチ君は・・・・?」
「・・・お父さんが台湾人でお母さんが日本人です。名前は珍・ダイキチです」
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「・・・すまんが、プロダクション会社に連絡して、芸名を変えて貰う様に頼んでくれ・・・」
・・・・・・・・・・・
私はアプリを切った。
私の横には芸能週刊誌の編集長。
「あいつら、第一作のエンドロールで主役の名前は出したのか・・・?」
「出したんですが、背後のキラキラ星の所為で、よく見えなかったようです」
「その画像は保存しておけ」
「編集長。どうするつもりですか?」
「・・・・・・」
「来週号の一面トップですか・」
「・・・・・・」
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「あっ、もしもし、TV夕日の御釜田プロデューサー様でしょうか。私、週刊ドレコレ編集長の阿漕田です。オカマちゃんずラブ・イタクないもん・コワクないもんの主人公3人の芸名の件なんですが・・・」
「・・なんでしょう・・・?」
「名前が知れると、スポンサーが降りてしまうんではないかと・・・」
「・・・・・・」
「まあ、今回はお近づきの印として指1本で如何でしょうか?」




