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ナマコオンライン ふにゅー!  作者: スモークされたサーモン
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2 ある日の学校にて



 今回紹介するのは日本初のフルダイブシステム搭載のVRゲーム『ナマコオンライン』だ。


 この微妙すぎる名前のゲームは発売が決定してから、いや、ベータテストの時からゲーム業界に疑問視され続けてきたという異色の問題作だ。


『何故ナマコ?』


『フルダイブだよね?』


『VRでナマコ?』


 このような意見にさらされながらもゲーム会社はナマコに拘り続けた。完全フルダイブ……感覚や時間の流れさえも調整出来るという最新のフルダイブシステムを駆使して彼等が目指したもの……それが『ナマコオンライン』なのだ。


 ベータテスターのほぼ全てが精神科のお世話になることになったという曰く付きのベータテストを乗り越えて……今ここにその姿を現した『ナマコオンライン』。


 意外なことにゲームジャンルはRPGである。本当に意外なことに。MMORPGというある意味フルダイブVRのお約束に倣ったのか、しかしである。


 これは『ナマコオンライン』なのだ。


 プレイヤーはナマコとして世界に呼び出された戦士という位置付けだ。なんとも無理矢理感が漂う。


 会社は正気か?


 更に驚くことに、このゲームにはジョブシステムまでもがあるというのだ。


 往年の国民的RPGのように『戦士』や『魔法使い』などのジョブが公式で明かされている。


 ナマコで戦士とはこれいかに。


 公式サイトでは仕方無くRPGでファンタジーにしたと悔しげに語る社長の独白(二時間)がアップされているので気になる方は見てみるのも良いだろう。


 ジョブの詳細は実際にプレイして確かめて欲しいと公式サイトに書いてあるが……この『ナマコオンライン』のソフトは初期ロット分が世界全体で2万本しか作られていない。


 日本に限定しても5千あるか無いかだそうだ。これを強気と見るか弱気と見るか、はたまた最初から諦めていると見るかは今のところ難しい。


 何せナマコ以外の要素は全てが世界最高峰なのだ。諸外国のゲームメディアも高い技術を褒め称える一方で『何故ナマコ?』の困惑は世界共通となっている。


 人間以外の存在へと感覚を持たせる技術や、クロノブレイカーと呼ばれる時間制御技術は世界中からも高い評価を受けている。受けているのだが、やはりナマコがネックすぎる。


 このゲームは高額なダイブマシンが必須となるので、そもそもの敷居が高い。キャラクターが人間であればもっと関心も高まったのだろうが……。


 このあらゆる意味での問題作『ナマコオンライン』は六月の満月に合わせて販売される。メーカー小売価格は2万3千円。ダイブマシンの性能はピンキリだが公式が推奨するレベルでこのゲームを楽しむためには、おおよそダイブマシンだけで10万円ほどが必要になるだろう。


 初期費用で12万オーバー。これが最低ラインである。


 何かと凄まじさを感じさせる『ナマコオンライン』だが、どうか新たな世界の架け橋足らんことをここに望んで筆を置くことにしよう。なお、筆者はナマコが駄目な人である。


 社長は正気か?






「むむむ……この人はレビューと称しておきながら体験プレイもしてないのかしら」


 あの南国ライフを味わえばナマコなんてどうでも良くなるのに。全く、これだから最近のレビューは……。


 日本屈指のゲーム雑誌も編集長が変わってからレベルが落ちたわね。


「ごきげんようお姉さま。あら、お姉さま? それは何の雑誌ですの?」


 レビューにケチを付けてると声を掛けられた。挨拶してきた女の子はクラスメイトの一人。ご機嫌ようと言っているが今は朝だ。朝の教室だ。


「あら、ごきげんよう島津さん。これはゲーム雑誌ですわ。巷で話題のゲーム特集と書いてあったので……購買部に置いてありましたのを買いましたの」 


 要約すると『購買で売ってたから買ってみた』だ。お嬢様ってのは面倒臭くて敵わん。全く……。


 お嬢様学校である筈のうちの購買部もおかしいとは思う。お嬢様学校なのにターザ○とかも置いてあるし。


 まだ朝のホームルームまで時間があるからと、朝の教室で読んでいたのだが……『オーライオーライ。大丈夫だよ』って書いてあるのに全然大丈夫じゃなかったわ。


「まぁ……お姉さまはゲームを嗜みますの?」


「……島津さん。同い年だからお姉さまはそろそろ止めてくんない?」


 同級生にお姉さま呼びされるのは正直しんどい。そしてお嬢さま言葉も結構キツイ。同じクラスなのに何でこうなった。


 まぁ乙女の悪ノリが原因なんだけどさ。


「えー? でもお姉さまはお姉さまだしー? ま、あたしもどうかと思うけどさ。あ、今月のター○ンは胸筋よ、胸筋! ほら! 良いよねー、このマッチョ感が!」


 学校よりも生徒がおかしいのかな。まぁいいや。雑誌の続きは帰ってからにしよう。なんか色々と情報が載ってるし。ジョブシステムなんて私も初耳だ。あの光の玉め。秘匿してたな?


「良いよねー、胸枕とかもロマンだよね。でもさピクピクさせる下乳の膨らみに顔を埋めてさ……」


「島津さん、ステイ。それ以上はお嬢さま以前にアウトよ」


 完全にアウトだわ。朝の教室でしていい話題でも無い。でも賛同するように頷いているクラスメートの姿がちらほらと。


「えー? お嬢さまも一皮捲るとただのメスよ?」


 賛同するクラスメートがちらほら……多すぎ!


「ええい! だとしても朝からする話じゃないでしょうが!」


 はぁ……今日も朝からストレスマッハだわ。女子校ってみんなこうなるのかしら。みんな○ーザンに集まっちゃったし。


 おおっ……なんて見事な大胸筋なの……ごくり。



 このあと先生に雑誌が没収されるまで、私達清純なる乙女達はターザ○に見入っていた。


 だって……ねぇ? お嬢様も一皮剥けば……ねぇ?




 こいつを最初に投稿したのは去年の霜月なのさ。知ってたかい? 

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