話したきっかけ
いつからか、私はある1人の男子を意識するようになった。一学期の頃は記憶に無いほど静かな人だった。
彼への印象が変わったのは9月頃、文化祭前の放課後だった。
テスト前だった事もあり友達と放課後に残って勉強していたら、隣の教室から綺麗な歌声とギターが聞こえてきた。ちょうど1曲目が終わった頃に一緒に勉強していた友達と隣の教室へと向かった。
そこには彼がいた。いつも静かでどちらかといえば目立つ方ではないタイプの彼が細身の体にギターをかかえて歌っていた。
「ちょっと勉強しながら聞いていっても、いい?」
「いいよ」
そう聞くと彼は少し笑って受け入れてくれた。
終わりかけの夏特有の少しムワッとした空気と、軽やかに弾くギターの音や彼の歌声がなんだか少し心地良かった。
その夜、一緒にいた友達の案でメールのグループを作ることになった。テスト直前だから電話をしながら勉強を一緒にしようと言うものだった。
曲の練習が終わった後も、少し雑談をして仲が良くなったお陰か電話も気まずくなるようなことも無く、話が弾み楽しい時間が過ぎた。
もちろん勉強は進まなかった。
それからは夜になると、みんなでグル通に集まって話をするのが習慣になった。テストが終わったらこのグルも動かなくなるのかなって思っていたけれど、私と彼が同じゲームをしてた事もあり、見事ゲームのグループになって私と彼だけが朝まで残って寝落ちする毎晩だった。
そしてそのまま2ヶ月がたった。
私が彼への想いに気が付いたのは、ちょうどその頃だった。何故か彼が気になって、夜になると胸がザワザワするような感覚になった。毎日の通話が楽しみになり、寝落ちの時に聞こえる寝息が愛おしく思うようになった。
彼にとってはただの1人のゲーム友達だったとしても、私にとってはたった1人の彼だった。
12月になり修学旅行の日が近付いてきた。私と彼は同じ班でほぼ行動は同じだった。
「班一緒になったのって本当に奇跡だよね」
そう言って笑った彼に、私も笑いながら頷いた。
とても嬉しかった。でも、胸が苦しくなった。
その前の日に、彼と共通の友達から聞いた話を思い出したからだ。
『聞いた?彼、好きな人いるんだって』
『え……?』
『…なんか1年生の可愛い子らしいよ』
とても、ショックだった。あの普段見せる優しさは私だけに向けたものではなく、ただの友達に向けた優しさだったのか、と。
よくよく考えてみれば、最初から脈なんてなかったのだろう。恋は盲目とはこのことだった。
その日からだんだんとその女の子の話題が増えていった。恋愛系の話も。
話をする度に胸が締め付けられるようだった。
片想いはこんなにも苦しいのかと。
そのまま修学旅行の日が来た。
ここまでお読み下さりありがとうございます。
拙い文章でしたがこれからゆっくりと書いていきたいです。応援よろしくお願い致します。