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第5話:何をするにも金が要る

 ーラックスの街・門-


 「守衛さーん」


 俺は厳つい顔をした守衛さんに声をかけた。

 細身な守衛さんもいい人なのだが、俺の中では厳つい顔の人の方が好感度は高い。


 「どうされました?頭にスライムを乗せて……って、その女の人は!?」


 俺が引きずっている女を見て、二人の守衛さんは焦ったような表情を浮かべる。

 おおかた、女の衣服に付着した血色のワインを見て重症患者とでも思ったのだろう。

 

 「安心してください。酔いつぶれてるだけです」


 俺は守衛さんを安心させるために真実を伝える。


 「そうですか。って……ああ、この人か」


 細身の守衛さんが、女の顔を見て納得したような声を上げる。

 どうやら見知った人物らしい。

 少し気になった俺は、細身の守衛さんにたずねた。


 「この人のこと、知っているんですか?」


 「ああ、この人はよく他の冒険者にここまでつれてこられるんだ。今みたいに酔いつぶれてね」


 どうやら常連さんらしい。なんてはた迷惑な酔っ払いだ。

 俺は、こんな大人にはなるまいと心に誓った。


 「しかし君、人を……それも女性をあのように運ぶのはいただけないぞ」


 厳つい顔の守衛さんに足を掴んで引きずったことを注意されてしまった。

 逆の立場なら俺も同じことを思ったと思う。

 しかし、こちらにも言い分がある。


 「こいつ俺が腕を疲れさせて運んでいるときに、寝言でもう飲めないとか言ったんですよ。イラッてしません?」


 「……」


 守衛は、なにもいえなくなった。


 「とりあえず、この女は俺がギルドまで運ぶよ。この人も冒険者だから、君がギルドで冒険者登録したなら、君の先輩ってことになるね」


 なぜ俺が冒険者登録したと思ったのか疑問だったが、あとから聞いた話、異世界出身の人間は大体冒険者登録をするらしい。

 日本人の考えることはみな同じというわけだ。 


 細身の守衛さんが、こんな女が先輩という嫌な事実を口にしながら門の横に置いてある荷車を持ってきた。

 守衛さん二人でそれぞれ腕と足を持ち、干し草を積まれた荷車の上に女を乗せる。

 そして細身の守衛さんは、ギルドの方向に荷車を運んでいった。


 その慣れた対応に、あの女がかなりの頻度で守衛さんのお世話になっていることを悟った。


 「大変ですね」


 「いえ……仕事ですから」


 疲れた表情で呟く厳つい顔の守衛さんを見て、俺は仕事を選べる冒険者になって良かったと、わが身の幸運に感謝した。


 「じゃあ俺も、仕事のスライム討伐を進めないと……」


 「ピギィーッ!」


 俺が働こうとすると、頭上のスライムが抗議するように強く鳴いた。


 「え?嫌だ?……しょうがないな」


 まあ、俺も逆の立場だったら絶対嫌がる。

 同じスライムを討伐されることをこいつが止めるのは当然だな。


 スライムは積極的に人を傷つけるわけじゃないし、[調教]した魔物の嫌がることをさせてまで討伐する理由はない。

 俺は、依頼(クエスト)失敗の報告のため、ギルドに戻ることにした。




   ■



 ー冒険者ギルドー


 「……なるほど。[調教]した魔物の嘆願(たんがん)でスライムが討伐できなかったと。ハァ……そこまで緊急性の高い依頼でもないし、この依頼は他の冒険者に引き継がせるとするか」


 「いや~、悪いな。ホントごめん」


 呆れたようにため息をつき、こちらの尻拭いをしてくれる受付の男に申し訳なく思うが、俺は謝ることしかできなかった。


 「なあ、依頼(クエスト)の途中で酔いつぶれた藍色の髪の背が高い女を拾ったんだが、守衛さんはその女が冒険者の先輩だって言ってたんだ。なんか知ってるか?」


 俺は受付の男に、あの女のことを尋ねた。

 あの女が冒険者というのなら、受付であるこの男は心当たりくらいあるはずだ。


 「ああ、その女か。さっき話した【狂戦士(バーサーカー)】だよ。実力は確かなんだが、それ以外がてんで駄目なやつだな。特に酒が絡むと駄目な大人になる」


 「ああ、敵味方関係なく暴れまわって、力尽きたら他の冒険者に運んでもらってるっていう……」


 俺が運んだときは力尽きたというよりは酔いつぶれたという感じだったが。

 

 他人のことを考える前に自分のことだろ、と注意するように受付の男が俺に事実を告げる。


 「てかお前、スライムが倒せないなら装備もなしで倒せる魔物はいないぞ。採取も途中で魔物に襲われる可能性がつきものだし……雑務系の依頼(クエスト)、紹介しようか?」

 

 「むぅ」


 できれば討伐系の依頼(クエスト)で異世界を楽しみたいというのが本音だが、ろくに武器も金もない状態で魔物を倒しに行っても返り討ちに()うだけだ。

 

 まあ、装備を買う金が溜まるまで短期のバイトをやるだけだと思えばいいか。


 「……じゃあなんか、報酬がいい仕事を紹介してくれ」


 「そんなあからさまに不機嫌な顔をするな。この周辺には強い魔物はいないから、あまり上等な装備は必要ない。軽装の鎧とナイフを買うくらいの金はすぐたまるさ」


 鎧がそう簡単に買えるのか?と疑問に思ったが、この世界の武器は安いものは本当に格安で取引されているらしい。

 おそらく魔物が人に害をなすこの世界では、武器防具の需要と供給は元の世界とは違うのだろう。


 討伐系の依頼(クエスト)を受けられるような装備品を手にするまで、俺は下水道の掃除で稼ぐことになった。


 匂いが強烈でやりたがる人がいない分、報酬が高いらしい。




   ■




 ー下水道ー


 「くっせぇえええええ!!!」


 支給された掃除道具を手に下水道の中に入ったが、鼻がひん曲がりそうなほど臭い。

 けれど、これに耐えて掃除しなければいけない。


 「文句言ってねえで手を動かせ冒険者!こんな匂いにも耐えれねえのかこの根性無しが!」


 この職場のリーダーが悪臭を訴える俺に怒鳴り散らす。

 ちくしょうめ。現代っ子を強く叱りつけて、仕事の効率が上がると思うなよ!


 「絶対金を溜めて冒険者らしいしろとをしてやる!」

 

 俺は決意を新たに、下水道の掃除に励むのだった。


 「だから口じゃなく手を動かせ!」


 人がやる気出してんのに口出ししてんじゃねえ!


 俺が掃除している間、スライムは下水道にあるゴミや汚れを食べていた。


 ……やめろお腹壊すぞ!?



やばい、書きたい部分があるのに書きたいところまで話が進められない。


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