第3話:中世ファンタジーはオーバーテクノロジー
「なあ、この水晶玉からカードが出るの、どういう仕組みなんだ?異空間にでもつながってるのか?」
よくよく考えれば、能力をランク付けしたり、Lvがあるなんてのもおかしな話だが、これが無性にきになった。
受付の男は、そんな細かい質問にも面倒くさそう答えてくれる。
「この水晶玉は、大昔に神様が大量に作って置いて帰ったなんて言われてるな。正直仕組みは今の技術ではわからないし、この先解明できるとも思えない。まあ、神の道具に理屈なんて求めても無駄ってことだ」
「へ~、まあ便利なら何でもいいか」
自分の能力がわかるというのは、存外便利だ。
自分のことがわからない奴は、きっと世の中にあふれている。
そして、自分を過小評価したり過大評価した奴は、だいたいろくな目に合わない。
そんなことを考えていると、受付の男がとんでもない事実を口にする。
「そのカードは物を異空間に収納する機能もあってな。おまえの荷物とカードと接触させてみな」
「ああ」
言われたとおり、横に置いてあった荷物をカードでタッチすると、荷物がカードの中に吸い込まれた!?
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所持品:袋↓
ジャージ上下セット(黒)×1
スニーカー(白)×1
エロ本『おっぱいパラダイス』×1
財布(茶)→千円札×1
二千円札×1
百円硬貨×2
十円硬貨×3
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おおお、エロ本にいたってはご丁寧にタイトルまで表示されてる!?
このタイトルをどうしようか考えていると、受付の男からの救いの声。
「ちなみに、所持品の文字をタップすると自分以外の人間に所持品を見せるか隠すかを選べるようにな……」
「即実行!」
所持品の文字を押すと……
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所持品の内容を他者が閲覧できないようロックをかけますか?【Yes/no】
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の文字が出たので、もちろんYesを押した。
すると、所持品の横に閉じた南京錠のマークが表示された。
おそらく、このマークを押せばロックは解除されるのだろう。
受付の男は、ジト目で俺に尋ねた。
「やましいこと……あるんだな?」
「ない」
俺はキリッとした顔で返事をした。
……バレバレだねこれ!?
「……とまあ、このカードは主に持ちきれない武器や雑貨、魔物の死骸を収納したり、そんな用途で使われる。ただし、生き物は収納できない。あと、お金をタッチすれば所持金のほうに収納される。そのカードを使えるのは所有者本人だけだから、盗まれる心配はない。万が一カードをなくしても、戻って来いと念じれば手元に戻ってくる」
「いや、ほんとに便利だな!?」
銀行にお金を預けるより安全だ。
中世ファンタジーっぽいから技術はそこまで進んでないだろうと思っていたが、こんな便利アイテムがあるなんて……神様ありがとうございます!
俺が便利なオーバーテクノロジーに驚いていると、受付の男は水を差すように言った。
「これで冒険者登録は済んだし、大体の説明も終わった。次のお客様を待たせているから、さっさと次に譲ってくれ。依頼はそこに在るクエストボードに貼ってあるから、気に入った依頼があればカウンターに持ってきてくれ」
「おう。ありがとな」
態度はともかく、その仕事ぶりは丁寧でわからないところは質問するとちゃんと答えてくれた。
言動とは裏腹に、案外まじめな奴なのかもしれない。
さっそく案内されたクエストボードとやらを見に行く。
クエストボード
討伐系
スライム5体の討伐:報酬2500マニー
ゴブリンの巣の掃討:報酬50000マニー
採取系
シミグサ30本の採取:報酬30000マニー
毒草5種類の採取:報酬30000マニー
その他
家の掃除:報酬5000マニー
工事現場の手伝い:報酬10000マニー
いろいろな内容の依頼が貼られていたが、最初は討伐系がいい。
しかし、今の俺は武器も防具も持っていない。
守衛さんからもらった1万マニーは服を買うのにすべて使ってしまった。
……スライム討伐にするか。
俺はスライム討伐の張り紙を手に取って、さっきの男が受付をしているカウンターに並んだ。
本編で書き忘れました。
分かっているとは思いますが、1マニー=1円です。
主人公は服を買ったときにそのことを理解しました。