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幼女と私の異世界放浪記  作者: もそ4
第二部 新興
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7.幼女速報


 最後まで何か言いたそうだったお姉さん、鑑定士という職業らしい男性二人と分かれ、教えてもらった宿屋へ泊った。

 町の中心からは少し離れるけど、比較的治安がいいとお勧めされた。クナメンディアを馬鹿にしていた奴らとか、あのいけ好かない男みたいに難癖つけてくるような奴はいなかったからよかった。

 まあ案の定、霊力がないばっかりに不便なことは多少あったけど。



 翌日、ヒスロ便の乗り場へ行くと、あの時の男性が立っているのが見えた。何日も無給じゃなくて済んだからか、表情はいくらか明るい。


「こんにちは」


「あ、昨日の」


 お辞儀をして迎えてくれる御者のお兄さん。

 周囲には数人の客がいて、誰も辛気臭そうな顔はしていなかった。この町に来た時とは大違いだ。


「今日は大丈夫そうですね」


「はい、お陰様で! 何でも、被害が出ていた危獣を全て倒してくれた人がいたらしくて! この町でも名の通った討伐者がやられたと聞いた時はもう終わりかと思いましたけどね……しかも、その危獣だけじゃなくてそれより強い危獣まで倒してきたらしいんです! エコイフで騒ぎになってますよ」


 興奮気味に捲し立てるお兄さん。小さな町だと噂が広がるのも早いだろうけど、どうやら正体まではバレていないらしい。あのいけ好かない男が嚙んでいるのかエコイフに守秘義務があるのか知らないけど、とりあえずよかった。


「それにですね、ここ数年毎日あちこちで見かけていた害獣が、昨日から出ていないらしくて、オレたちや商人なんかは特に大喜びです。町の人たちも少し笑顔になってきたんですよ」


 最近は暗い雰囲気でしたからね、と苦笑するお兄さん。


 確かに、何の力もない普通の人が害獣やら危獣やらの危険に怯えながら生活するのは辛いよね。町はグルイメアにも近いし、死の恐怖は計り知れない。

 もしかしたら偶然なのかもしれないけど、昨日今日と危険な相手に会わずに済んでいることは、町の人たちにとって光明なんだろうな。


「このまま何事もなく過ごせるといいですね」


「そうですね。これからも色々と大変だろうけど……あ、ヒスタルフに行くんですよね?」


「え? ああ、大きな町なんですよね」


 次の町はこの辺を治める領主の住むところで、領地の中でも広大で栄えたところらしい。エコイフのお姉さんに聞いたけど名前はそんな感じだったかもしれない。


「はい。危獣騒ぎもですけど、ヒスタルフは領主の問題もあるので気をつけてくださいね」


「領主の問題?」


「最近代替わりしたんですけど、若いからか反発もあるみたいで。親族間でギスギスしているというか、狙われているみたいなんですよね」


 何だか大変そうだな。よくある話みたいだけど、関わらぬが吉だ。どうせ領主なんて目上の人と関わることなんてないだろうけど。


「お姉さん、この辺初めてって言ってたから伝えておこうと思って」


「あ、ありがとうございます」


 覚えてくれてたんだ。御者のお兄さんも、この町の人は優しい人ばかりだ。あのいけ好かない男がどれだけ異色だったのか分かる。もう会うこともないだろうけど。







 ヒスロ便に乗ること数時間──いや、体感なので一時間くらいだったかもしれない。


 私たちは本道から少し離れた林道を歩いていた。


「すぅ……っ、はぁ……」


 深呼吸をして、空気を思い切り出し入れする。少しはマシになってきた。


 というのも、ヒスロ便に乗っていたところ、やっぱり揺れによる身体のダメージが酷く、お尻の痛みと気分不良を訴えて途中下車させてもらった。

 御者のお兄さんには悪いことをした。返金できないことを申し訳ないと言っていたけど、こっちが無理を言っただけだしむしろ謝り倒した。


 グロッキーな身体を何とか支え、少しでもいい空気を吸おうと林の中に入ったのが多分数十分くらい前。休憩を挟みつつゆっくり歩いていると、大分楽になった。

 乗り物酔いしやすい体質を少し呪った。


「このまま真っ直ぐ行けば着くって言ってたし、それもよかった」


 方向音痴なので左折右折を挟むと終わる。

 御者のお兄さんが「ここをひたすら真っ直ぐに進めば着きますから!」と励ましてくれた顔が浮かんだ。


「……ひぃ」


「ん? どうかした?」


 ぎゅっと服を握り締めてくる幼女。

 この子が呼んでくる時はいいことか悪いことの二択だ。あの花綺麗だね、みたいな世間話をするタイプではない。まあ悪いことだったとしても、事前に分かるからいいことなのかもしれない。


「あっ、ち……ひと、いる」


「人?」


 珍しい。人がいるだけで報告してくるような子じゃなかったから、多分普通の人じゃないんだろうけど。


「その人がどうかした?」


「てき、が、いっぱい」


 頑張って伝えようとしてくれていることに愛おしさを感じつつ、どうにか理解に努める。


「誰かが戦ってるってこと?」


「ん」


 こくりと頷く幼女。

 わざわざ戦いの実況や報告をする訳もない。きっと一方的な戦いなんだろうと感じた。


「教えてくれてありがと、ミレスちゃん。助けに行こ!」


 幼女からアクションがあった時にすでにそっちに向けて進んでいた足を速めた。


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