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幼女と私の異世界放浪記  作者: もそ4
第二部 新興
60/240

3.相変わらずの強さ


「害獣は報酬少ないらしいけど、そもそも危獣との区別ってつくの?」


 疑問を口にしつつ林道を歩く。

 町を出るときに警護の人たちと一悶着あったけど、どうにか外に出られたのはよかった。肝心な危獣は見当たらないけど。


「ん?」


「あっ、ち」


 くいっと服を引かれて幼女を見ると、どこかを指差している。疑う余地はないのでその方へ向かう。

 幼女センサー助かる。


「ミレスちゃん、こっち?」


「……ん」


 本道を逸れて脇道というか、林の中に入ってきた。

 あまり町から離れるのも面倒だけど、町の近くでミレスの攻撃がバレるのも怖いので、多少離れたこの辺で見つかるといいな。

 というか、目撃されて町の出入りが困難になるくらいだから、もっと分かりやすく出現してくれてもいいのに。暴れた痕も見当たらなければ鳴き声も聞こえない。


「ひぃ」


「ん?」


 グルイメアでの生活を思い出し少しテンションが下がり気味になっていると、またも幼女がどこかを指差した。

 遠くに何かがいるのが見える。


 段々近づいてくるのが分かった時には、それは複数いることに気づいた。

 白鳥くらいの大きさの鳥が数匹と、大型犬くらいの大きさの獣が数匹。害獣なのか危獣なのかさっぱり分からない。


「ミレスちゃん──あ、ありがと」


 お願いする前に、あっという間に黒い枝が鳥と犬のようなモンスターを屠った。一瞬過ぎて呆気ない。


 そういえば討伐証明部位について全然説明を受けなかったけど、とりあえず眼球でいいんだろうか。それが一般的だと言っていたし。今のところ遭遇したモンスターには全部目はついているから、とりあえず抉っておくか、どうするか。

 グルイメアでもある程度は危獣を瞬殺していたから強さの程度は分からないけど、サイズ的には小さい気がする。害獣なら討伐証明してもなあという気持ちもある。


 まあ、その前にどうやって眼球を抉るかなんだけど。


「全く考えてなかったわ」


 普通ならナイフとか鋭利な何かで切り取るんだろうけど、そういったことを生業としているわけじゃないからすっかり失念していた。


 そもそも軽装備すぎるんだよね。ゲームでも武器や防具、回復薬とか準備して行くのが当たり前なのに、身一つでこの世界に来たからか深く考えずに出発してしまった。無計画なのはいつものことだけど、さすがに命の危機も関わることだから慎重になるべきだよね。私だけならともかく、今はミレスちゃんもいるんだし。

 まあ安全面ではミレスちゃんがいれば十分なんだろうけど、その他については無防備すぎる。


 というか、ナイフとか持っていたとしても抉り取るのはちょっと勘弁したい。グロいのはノーサンキューです。

 新人の頃に病理解剖の見学があったんだけど、機会に恵まれなくて一度も体験したことないし、トラウマになりそうだから体験しなくてよかったと思っている。


「ねえミレスちゃん。お願いがあるんだけど、これの目を抉り出したりできる……?」


 綺麗に首と胴体が切断された死体を指差してお願いしてみる。


「ん」


 幼女が頷くと、黒い枝が伸びてきて地面に転がる死体の眼球目掛けて直進した。そしてぐりっと眼球を抉り取った。黒い液体がぽたぽたと滴る。

 受付のお姉さんからもらった袋を広げると、そこへ入れてくれた。


「おお、凄い。ありがと!」


 まさか黒い枝にこんな使い方もあるとは。便利過ぎやしないか。

 そしてやっぱり、ミレスが攻撃する時に使う黒い枝とこれはまた違う気がする。見た目は同じだし、何が違うのかはよく分からないけど。前者は武器で、後者は腕みたいな。


「ちなみに、この辺のやつ全部お願いできたり──うぉっ」


 言い終わる前に、黒い枝は死体から次々と眼球を抉り取り、ぽいぽいっと袋に放り込んでくれた。


 眼球周囲の皮膚や毛も巻き込んでいるからある程度の見分けはつきそうだけど、これで討伐証明になるんだろうか。なればいいなと思いつつ、辺りに落ちていた鳥の羽と獣の毛も一緒に袋に入れておく。


「ミレスちゃん、ありがと。本当に有能だね」


「……ん」


 ぎゅっと服を掴む幼女がこの上なく可愛い。最高。


 幼女の頭を撫でながら変な表情をしているアラサーと周囲に散らばるモンスターの死骸は異様な光景に違いない。少し町から離れた場所でよかった。


 それにしても、これで終わりじゃないよね。グルイメアにいた危獣はもっと攻撃的というか凶暴そうだった。さっきの鳥や犬みたいに遠くからゆっくりやってくるようなタイプではなく、人間を見つけたらもっと俊敏に襲い掛かってくる感じ。後はちょっと禍々しい雰囲気が足りない気がする。


「ひぃ」


「ん?」


 幼女が再び指を差す。その方向を見ると同時に、ドスドスと地響きがした。


 現れたのは、身体中に突起や瘤がある二メートルくらいのバッファロー。


 これだ。これは危獣だ。

 害獣と危獣との明確な違いなんて分からないけど、これが危獣だということは何となく分かった。明らかに大きさが違うし、臭いというか、雰囲気がどす黒いというか、見るからに気持ち悪さが違う。グルイメアにいた危獣もこんな感じだった。

 グルイメアにいた時は、周りの雰囲気も危獣も同じような気味悪さだったから特に気にならなかったけど、こうして普通の林にぽつりと一匹だけ妙な雰囲気があるのは異様だと分かりやすい。


 さっきのモンスターとの違いが、魔気ってやつなんだろうか。より魔気に毒されている方が凶暴だと聞いたし。

 もしかしたら、私の感知能力が開花したのかもしれない。霊力はないけど魔気もある程度平気な分、そっちの方が分かるのかも。


「まあ、ミレスちゃんの前には害獣だろうが危獣だろうが関係ないんですけどねー」


 幼女から伸びた黒い枝が、一瞬にしてバッファローの首を切断する。首から飛び散る黒い液体、飛んでいく頭。呻く間もなく瞬殺されたモンスターは呆気なく地面に倒れた。


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