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幼女と私の異世界放浪記  作者: もそ4
第一部 邂逅
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54.異世界事情


 グルイメアでの話のあと、私が元いた世界が気になる一行に色んな話をして時間は過ぎていった。文明の違いに驚いていたし、テレビや車については信じられない様子でもあった。

 おかしいな、私がこの世界について色々と聞くはずだったのに。


「アサヒは元の世界に戻りたいのよね?」


 一通り質問に答えたあと、フェデリナ様から別方向の質問が飛んでくる。


「んー……どうかな」


 元の世界に戻ってもいいけど、どこから再スタートなのかにもよる。

 コンビニ帰りのあの時に戻るならいいけど、ここで過ごした日数分経過していたら嫌だな。無断欠勤、料金未払い、色々なレッテルを貼られて事情も説明できないままストレスを抱えるだけになりそう。

 誰が異世界に行っていたなんて信じてくれるのか。


「意外と乗り気じゃないのね」


「まあ、ミレスを連れて帰れるならいいけど」


 幼女つきで帰還、財産も無事という条件なら帰りたいかも。でもミレスの身分証明とかできないし、寿命を考えても隠し通すのも大変か。何より幼女の能力を最大限に活かせる環境の方がいい気がする。この世界で居場所を確立できれば、私が死んだ後も生きやすいだろうし。


 そんなに元の世界に未練はないし、それよりもミレスの枷を解いて自由にしてやりたい。そう言えば、フェデリナ様は笑った。


「アサヒらしいわ。それに……私も、アサヒが帰ったら寂しいもの」


「だからヒロインムーブやめて」


「え?」


「いや、何でも」


 そういえば爺やが別世界について何か話があるって言ってたけど、どういう内容だろ。

 特に帰還願望はないけど、情報として知っていて損はないし、ここに来た理由や原因は気になるところ。


「それよりこの世界のことについて教えてよ」


「そうだったわ。ごめんなさい、アサヒがいた世界に興味があって、つい」


 今度こそこの世界について聞いた。簡単な地図を添えて情勢やら物価、通貨についてなどなど。

 やっぱり機械文明は発達していなくて、電気の代わりに霊力を使うような感じだった。水をお湯に変えたり、火起こししたり、日常生活においても重要で便利な部分を担っている。

 戦闘や治癒に使われるのは知っての通り。他にも動物を従わせるのにも使われ、郵送・運送業で活躍するんだとか。

 霊力の素質によって職業が左右されるみたいで、聞いていて霊力ベースのこの世界で私ができそうなものがほとんどないように思えた。


 あとは一心同体の眼鏡についてだけど、この世界で眼鏡を掛けるのはほとんどが先天性のものか加齢、外傷が原因の場合らしい。だから私も生まれつき視力が悪いのかと思われていた。

 ごめん、普通に電子機器の使い過ぎです。子どもの頃ゲームは一日三十分とか一時間までという制限があったために、親に隠れて色々やった結果が今。抑圧的な教育方針はよくないね。

 高校生から十年以上の付き合いで、心マの時もずり落ちてこない優秀な相棒。ずっと眼鏡屋に行ってなかったものの、いざ壊れた時はどうしようかと思ったけど、一応は取り扱う店があるみたいで助かった。割と高級品らしいけど。

 家では裸眼で過ごしていたけど、異世界では眼鏡を掛けていたほうが状況を把握しやすいしね。

 それにしても、この世界にはゲームも携帯もパソコンもないからそれが原因で視力低下することもそんなにないのか。


 この世界の文化に驚きつつ感心しつつ、あまりの違いにこれからやっていけるか不安になった。


「アサヒならうまくやっていけるわ。霊力のこととか知らないことはあったけど、今までも問題なくやれてたじゃない」


「フェデリナ様にそう言われたらやれそうな気がする」


 ヒロインのお墨付きをもらえたなら少しは自信が出てきた。言葉が通じるだけかなりコミュニケーションは捗るし、こうしてこの世界について色々聞いたからタルマレアの調査隊との二の舞にはならずに済むかな。


 幼女の手や髪を弄りながら色々なことを聞いていると、爺やが戻ってきた。何か笑顔なんですけど。


「お主、不届き者を成敗したらしいの」


 何と聞かずともさっきの一件だと分かった。広まるの早すぎないか。


「この宿の不利益にならないといいんだけど」


「むしろ妙な輩が寄り付かなくて良いだろうよ」


「それならいいんだけど」


「それよりお主、元気そうで良かった」


 そういえば私がずっと寝ていて起きたことを今知ったのか。寝起きで何してんだって話だよね、本当に。


「目が覚めたのなら話をしようかの」


「あ、別世界についての」


「うむ」


 一応元の世界に戻る気は今のところないということも伝え、爺やは了承して話を進めた。


 爺やが言うには、とある精霊信仰が強い国で霊術による召喚のような儀式を行っているらしい。


「危獣の討伐という名目らしいが、近隣諸国への牽制や軍事力の強化が目的なのではないかと言われておる」


「私みたいに霊力のない世界から来たらどうするの?」


 よく見る異世界召喚か。勇者や聖女、救世主みたいな。

 別世界が複数存在するとして、そもそも霊力ベースのこの世界で使えるような戦力にはならないんじゃないだろうか。私がいい例だ。


「その実態が分かっておらぬゆえ、周囲へ恐怖を植え付けることが目当てなのかもしれんな」


 ああ、なるほど。この世界の人たちは別世界に霊力が存在しないとは知らないからね。たとえ戦力にならないとしても、別世界から召喚した人間という特殊性で牽制になるということか。

 でも実際に戦力にならないことが分かれば意味がないのでは。こいつは凄いんだぞ! と吹聴したとして、全然行動を起こさなければハッタリだとバレてしまってもおかしくない。


「何も戦うだけが威光となるわけではないからの。姿を現さずに功績を称えることは難しくない」


 確かに、実際に戦って成果を上げるだけでなく、例えば内政や発明など他の名声を被召喚者のものにしてしまえばハッタリじゃなくなるかもしれない。


「でもそこまでする必要ある?」


「我々は偉人を召喚できる、それだけ精霊様の寵愛を受けているのだという美名が欲しいのかもしれんの」


 へぇ。色んな国があるもんだね。日本にいた時も外国の独特な風習に驚くこともあったし、そんなものなのかも。


 それにしても、もしかしたら私がこの世界に来た原因がその国の召喚かもしれないってことか。召喚の実態は分かっていないから、儀式の場に召喚されるとも限らないし、失敗なのかもしれないし。

 実際にその国に行ってみれば情報も得られるんだろうけど、話を聞いていると関わると面倒そうだから行かなくていいかな。どうしてこの世界に飛ばされたのか知れたらいいな、くらいだったし。


「じゃあ次は霊力についてお願いします」


「うむ。やっと得意分野が来たの」


 眩しいほどの笑顔の爺や。研究職ってオタク気質というか、自分が好きなことを話すのが好きな人多いね。偏見かもしれないけど。とにかく楽しそうで何よりです。


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