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幼女と私の異世界放浪記  作者: もそ4
第一部 邂逅
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34.即興コントと即席講座


「どうして?」


「お優しいところはフェデリナ様の美徳ではありますが、もう少しだけ考えていただきたい」


 まあ私の話、怪しい部分も多いしな。まずどこから来たんだっていう。フェデリナ様が信じてくれただけありがたいんだよな。


「タルマレアの伝承の忌み子、これは軽視できるものではありませんぞ。彼の国での忌み子の立ち位置は、世界における我々クナメンディアの評価に匹敵するもの。しかも国が追っているとなれば、タルマレアと事を構えることにもなりましょうぞ」


 それなんだよなぁ。どこに行ってももはやお尋ね者の扱いにしかならないっていう。罪を犯したつもりはないけど。手助けをした人たちも幇助行為として罰されないとも限らない。

 これが陽の当たらない道を生きるってことか。

 いつかのイケメンの言葉と顔が思い浮かぶ。


「それでも、私は力になりたい。私たちがクナメンディアって知っても、クナメンディアがどんな風に思われてるか知っても、関係ないって言ってくれたもの!」


「それは……それは、確かに感謝すべきこと。しかしそれとは話が別ですぞ!」


「どう違うっていうの!?」


「全然違いましょう!」


「だから、どう!?」


 段々言葉の応酬がエスカレートしていく。これは師弟や祖父と孫じゃなくお嬢様と爺やだ。


「恐らく話が長くなると思いますので、こちらへどうぞ」


 白熱するフェデリナ様たちをよそに、ベアさんがそっと誘導してくれる。いつの間に用意したのか、地面に敷かれた布の上に座るよう勧められた。湯気の立つスープのようなものを渡され、ピクニックみたいだなと呑気に思う。

 ベアさんは気が利く男のようで、まず自分がスープを飲んでみせた。毒は入っていませんよとでもいうように。

 小さく口をつける。薄味だけど、今はそれがちょうどいい。


「あの二人、いつもあんな感じなんですか」


「そうですね」


「ちょっと聞いてもいいですか?」


「何でしょう」


 補足説明はしてくれるもののあまり口数は多くなく表情も乏しいベアさん。何を考えているのか分からないタイプだけど、邪険にするようなタイプでもなさそうだし、聞きたいことを聞いておこう。


「霊力って、何ですか?」


 一瞬ベアさんの動きが止まる。巨体がのっそりと動く姿が熊とかパンダっぽくて可愛い。


「どういう意図でしょうか」


「ああ、ええと、私色々知らないことが多くて。霊力がないって言われるけど何で分かるんだろうなって。そもそも霊力って何なんだっていう」


 何となく、フェデリナ様の部下だというベアさんなら本当のことを教えてくれるのではないかと思った。表情は乏しいけど接しにくい感じはないし。調査隊の人たちとの距離感というか、壁も感じない。冷遇されないって素晴らしい。


「学術的な部分はヘナロス様にお聞きしたほうがいいかと思いますが」


「そんな詳しくなくていいんです。子どもに教えるくらいの知識で」


「……そうですね。霊力は精霊様のお力です」


 なるほど、精霊か。ファンタジーだ。よく魔力って聞くけど、この世界では霊力なんだ。精霊ってRPGの具現化した各属性のモンスターみたいなイメージが強いんだけど、小説とかだと実体が見えない光のようなものだったりする。恋愛モノなら美麗な容姿で攻略対象だったりね。その辺どうなんだろ。


「精霊様って見えるんですか?」


「ほとんどの人間には見えないでしょう。遥か昔は多くの人間が見えるだけでなく会話や交流を持っていたと聞きます。今では精霊様を感じられるのは各教会の上層部くらいだと言われていますね」


「へぇ。精霊様が見えなくても力は借りれるんですね」


「霊術で使用する言霊が強制的な契約を結んでいるという説があります」


「若干ファンタジーが西洋から和風になってきたな」


 ベアさんの話を纏めるとこうだ。

 話にあったかつての大戦で霊術を駆使していたものの、戦争が終わって平和になってからは大きな術を使うことがなく徐々に精霊との親交も減っていったと。今では各国に点在する教会が神の使者とも言える精霊を祀り上げていて、その信仰が最も厚いお偉いさん方くらいしか精霊の姿は見えないということだった。

 それでも言霊と呼ばれる術式の詠唱を行うことで精霊から力を借りることができるらしい。霊力自体は素質によるものが大きく、かつての大戦により結びつきの強かった王家の血筋が特に素質があるんだとか。鍛錬を積めば霊力も上がるけどそれも素質が大きく関係するらしく、運みたいなものだなと思った。

 それにしても戦争で親交を深めた精霊って何だか血生臭いな。この世界の精霊は血気盛んなタイプなのかもしれない。

 

 ちなみにフェデリナ様と爺やはまだ言い争いを続けていた。


「仮に転移だったとして、霊力も戦う術もない女性がこのような危険な場所にいることが怪しいのだとヘナロス様は苦言を呈されているのでしょう」


 二人を見つめてそう言うベアさん。


「ベアさんもそう思いますか? 私が怪しいって……何か良からぬことを考えているんじゃないかって」


「……そうですね」


 つい内心で呼んでいたように声に出してしまったものの、当人はそれを咀嚼してくれたのか特にツッコミは来なかった。


「私は、フェデリナ様の従者ですから。フェデリナ様に従うのみです。それに……」


「それに?」


「あのお方のご慧眼を信じています」


 すごいなフェデリナ様。ほぼ無表情の従者から溢れ出る信頼を感じるぞ。何かこう、キラキラしている。フェデリナ様、一体何者なの。


「あとは貴女が何かを企むには無知すぎますね」


 急なディスりがきた。まあ確かに知らないフリして近づくには作戦不足すぎるよね。本当に何も知らないんだもの。この人たちがそれを分かってくれて助かったわ。


「アサヒ! 行きましょ。もう爺なんて知らないわ」


「何ということをおっしゃるのですかフェデリナ様!」


 言い合いが終わったらしい二人がこちらに近づいてくる。和解はできていないらしい。

 それにしても爺や、声がでかいよ。


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