表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
幼女と私の異世界放浪記  作者: もそ4
第四部 奔走
212/240

46.もしかして:五里霧中

ついに月1更新になってしまいましたがあけましておめでとうございます!今年ものんびり更新していきますので、よろしければ気長にお付き合いください…!


 勢いよく町を飛び出したのはいいものの、陽が暮れるまでに次の町に行けるとは限らない。何せ地図が読めないからね! 威張れることじゃないけど。

 そしてこれから突っ切ろうとしているのは無主地と呼ばれる場所。


 ──そもそも、無主地とは何か知ってますか? この大陸には、作物も育たず病は広がり、“気”が漂う……国が持っていても損でしかない土地が数多く存在するそうです。


 いつだかイウリオさんが話してくれた。人間が住むには適さない場所があると。誰も管理したがらないし、人が寄り付かない。だからこの世界の地図は結構曖昧だったり大雑把だったりするらしい。

 魔気を回収できるのはいいけど、近くに町がないのは問題だ。数日着替えもできずお風呂も入れないのは困る。さすがに乙女なことは言わないけど、臭うのは嫌だし衛生的にもよくない。

 そんな訳で、シィスリーまでのショートカットとして無主地を突っ切るつもりなんだけど、準備は必要。近くの町で一晩過ごして早朝に出ようと思う。


「キィちゃん、申し訳ないけどよろしくね」


『うん!』


 ルムギナから逃げるかのように荒野と森を駆け抜け、恐らく無主地の最寄りであろう町に辿り着いたのは陽が暮れてからだった。少しでも時間短縮できるようにある程度の大きな町も通過したから本当にこぢんまりとした町だけど、宿屋はあるかな。今更心配になってきた。

 この世界では一般向けだと大衆食堂の上に宿が併設されていることが多いから、ひとまず飲食店を探す。二階建てだったらほぼ勝ち──だったんだけど。


「ないな……」


 多分外から人があんまり来ることがなさそうな作りだった。民家と食料を売ってそうな店がいくつかある程度。これはやったか。

 仕方ないので、ひとまず飲食店で休憩して考えよう。キィちゃんも疲れてるみたいだし。


「あぁ、ここに宿なんてないよ。なんせこんなに小さい町だからねぇ」


 食事を持ってきてくれた女将さんが笑いながら言う。


「あんたら、泊まるとこ探してるならうちに来るかい?」


「え、いいんですか」


 お言葉に甘えて優しい女将さんの家に泊まらせてもらうことにした。

 それなりの金額を包んで渡そうとしたんだけど、ここでそんな大金持っていても仕方ないからと断られてしまった。宿泊代として食事代に多少色をつけることは許してもらえたけど。

 まあ女将さんと話しているうちに別の面でお返しできそうだからいいこととする。


 そして迎えた翌日。少し遅めに町を出て、周辺を探す。


「どの辺りにいそう?」


「ん、あっち」


「キィちゃん、お願いね」


『うん!』


 しばらく木々の間や岩陰、川辺を散策すること数時間。


「あっち」


「よっしゃ」


「むこう」


「よし来た」


「こっち」


「うん……」


 陽もだんだん落ちてきて、体力も尽きかけてきた。働いているのは二人なのに、私一人だけ疲労感が凄いの何でだろうね。これが人外と一般アラサーの差か。


「もう、だいじょうぶ」


「そっか。二人ともお疲れ様」


 幼女と霊獣を撫でながら地面に座り込む。

 小さな町の周囲をあちこち駆け回ったのは、害獣や危獣の討伐のため。女将さんと話しているときに害獣たちの被害に困っていると聞いて、宿代の代わりになるかなと思った。ミレスちゃんの枷の糧稼ぎにもなるしね。

 結果はまずまずといったところ。町の半径数キロ圏内くらいには害獣たちはいないみたい。町の人たちの行動範囲を考えるとそのくらいで問題ないと思う。


「さ、町に戻ってご飯にしよ」


「ごはん」


『ごはん~』







 食事と睡眠をしっかり取って、朝早くに町を出た。いよいよ無主地へ向かう。

 女将さんに栄養たっぷりだというスープをいただいたし、今日は行けるところまで行こう。


 体調もばっちりのキィちゃんに乗って、人気のない道なき道を走り続けた。

 荒れ地だったり森だったり岩山だったりと景色に飽きは来ないけど、予測もできないゴールに向かって進み続けるのはちょっと精神的に参るかも。

 気づけば魔気は濃くなっていて、動物はおろか虫でさえも見当たらない。できれば早いところ抜け切りたいたいものだ。


『主さま……』


「キィちゃん?」


 弱々しい声にどうしたものかと思えば、徐々に減速して止まってしまった。キィちゃんから降りると、小さくなって腕の中に納まってしまう。


『ちょっと、ダメ……かも……』


「キィちゃん!」


 ぐったりとする霊獣を抱え、その毛並みを撫でる。

 いつもならどうってことない距離だろうけど、やっぱり濃い魔気の中突っ切るのは無謀だったかな。

 そういえばミレスちゃんのお陰か結構な魔気にも慣れてしまったけど、シィスリーの遺跡の時もキィちゃん頭上でダウンしてたな。


「ごめんね、キィちゃん」


 さて、どうしてものか。


「ミレスちゃん、いつもみたいにこれ吸収できたりしない?」


「ん、ん」


「無理かー」


「かく、ない」


「かく?」


「こあ、しんぞう」


「あ、核ってことね」


 そっか、今まで吸収してたのは危獣とか魔晶石だったもんね。その辺にある空気中の魔気を無限回収はできないと。

 危獣も魔晶石も分解すれば魔気なんだろうし、同じじゃないかとは思うけど……まあそううまくいかないよね。それができたらグルイメアにいた時もっとミレスちゃん強くなってるはずだし。


「ひぃ」


「ん?」


 幼女の声のすぐ後に、ドン! という物音と地響きがした。


「あ! ここにいらっしゃったんですね!」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ