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幼女と私の異世界放浪記  作者: もそ4
第四部 奔走
167/240

1.泡沫ノ世界

今回から第四部です。

1周年記念動画もよろしくお願いします!

YouTube:https://youtu.be/r2DsCQJZXjg

ニコニコ動画:https://www.nicovideo.jp/watch/sm41158778




 そこは明るい場所だった。

 眩しいくらいの白に、水色と、黄色と、黄緑と、ピンク。どれも淡く、きらきらとしていて、シャボン玉のように揺らめいて上昇していた。


 木が見えたような気がするし、川が見えたような気もする。

 明るく、淡く、温かなその場所をゆっくりと歩くと、穏やかな気持ちになれた。


 そうしてしばらく歩いていると、一瞬にして黒に包まれた。先ほどまでの温かさとは無縁の、暗く冷たい場所。

 なぜだか恐怖心が芽生えて、ひたすらに走った。

 何かに追われているような気がする。

 こわい。

 こわい、こわいこわいこわいこわい。


「──っ!」


 背中が、熱い。燃えるように熱い。

 痛い、いたい。いたいいたいいたいいたい。


「ぁ、ぁ」


 声にならない声が震える。

 いつの間にか地に伏していた身体が、全身が、痛い。

 腕が、黒く変色していた。


 ゆっくりと黒が近づいてくる。

 それは紛れもない死で──。


「──が」


 次の瞬間、胴体と腕が切り離されていた。







「──ッは、ぁ」


 何だか、怖い夢を見た気がした。

 幸せから絶望に突き落とされた、血塗れの夢。


 ──大丈夫。腕は、ある。


 周囲を見渡せば、先ほどよりは比較的明るいものの薄暗い森の中にいた。

 なぜか既視感を覚えて鼓動が速まる。


 知っている気がした。

 見たことなんてないのに、身体が、覚えている、気がした。


「──ぅぇ」


 急に嗚咽感が迫る。うるさいほどに心臓の音が響く。


「──!」


 走った。

 ひたすら、力の限り、走った。


 きっと待っているのは、暴力と、死だ。

 胸にナイフを突き立てられ、四肢を切断され、首を絞められ、頭を潰されるのだ。


「ハァッ、ハァッ、ハァッ」


 恐怖心から逃げるように、なりふり構わず走った。

 ひたすら走って、走って、走って、走って──。







「──っはぁッ」


 大きく息を吸い込んで、吐く。

 目の前に広がるのは、白い世界でもなく暗い森でもなく──。


「ひぃ」

「キィゥ」


 ドアップの幼女と霊獣だった。


「──ふ、ぅ」


 何だか分からないけど手が震えている。怖い夢を見ていたような気がする。

 でも、目の前の二人を見たら安心した。ぎゅっと抱き締めると、温かかった。


「ホワイトアウトするのは初めてじゃないけど、これは結構キツイな……」


 幼女に力を使われて意識を失った時は何も覚えてなかったけど、グルイメアでフェデリナ様たちと会う前の時と一緒で、謎の恐怖感が心と身体を支配する。

 何があったのか、何を見たのか、聞いたのか、何も分からないまま怯えるのは気分が悪い。


「二人だけが救いだし癒しだよ……」


 ただ、前回と違って正気を保っていられるのは、二人がいるお陰だと思う。

 とりあえず、我が天使たちを抱き締め癒しを吸いながら現状を整理する。


 遺跡で魔気を回収したら、地面が消えた。その瞬間、下から白い光のようなものに包まれた。

 この世界のことに疎い私でも分かる、あれは多分霊気だった。それも、かなり濃い。遺棄場の泉と似た感じがしたから間違ってはいないはず。

 何で魔気が渦巻く遺跡に濃い霊気が存在していたのかは分からない。そんな話はテア様から聞いてないし、周囲の町でも薄気味悪い呪われたような場所としか認識されていなかった。


 まあ遺跡の詳細はともかく、とにかく、どこかに落ちたはずだった。


「いやー……」


 天使たちの頭越しに見えるのは、青空と雲。


「どこよ、ここ」


 冷たい地面から背を離し起き上がると、柔らかな風が髪の毛を撫でつけた。


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