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幼女と私の異世界放浪記  作者: もそ4
第三部 追従
166/240

49.とある遺跡にて ※最後にお知らせあり

ブクマ・評価・感想までありがとうございます!とても嬉しいです…!



 娘さんと長年の問題だった立ち入り禁止の区域の問題を解決したとして、色々な報酬を用意したらしいデロー家の皆さんからの圧を躱し、何とか良心的な範囲でのお礼を受け取った。私としては寝泊まりとシャワーさせてもらえるだけで十分だったんだけど、それだけでは納得してもらいそうになかったから、多少の食料と金銭のみ。

 実際活躍したのはミレスとキィちゃんだし、この子たちは何も望まないから私が報酬を決めるしかない。本人たちもそれでいいらしいし。毎回無欲だよね。


 というか、今更なんだけど、一応私と契約しているらしい二人にとっては私が健康体で幸福でいることが大事らしい。私という媒体が不調だと困ることと、少ないながらも私からエネルギーをもらっているらしい。

 らしいばかりで何だけど、自分に自覚がないのだから仕方がない。

 まあ、二人がそれでいいならいいよ。いつか欲しいものができたら望めばいいだけだし。


 そんなこんなでデロー家を出て数日。

 順路通り、たまに寄り道しつつも順調に魔気回収の旅を続けていた。


 デロー家があった町であるブナージャと同じく、町の一部で立ち入り禁止になっている場所があり、軒並み魔気回収スポットと化していた。大した量ではなかったけど。

 グルイメアから離れるほど危獣や害獣の影響が少なく、住人は魔気に関して比較的鈍感になっているみたいで、そういった場所や物は呪われているだの何だのといわくつきになっていたようだった。その辺はブナージャと変わらない。

 魔気に満ち溢れていた遺棄場とはそんなに離れていないと思うけど、あそこは外界と隔離されたような場所だから意識が薄くなるのかな。行くまでに色んな障害があるし好奇心で行こうなんて思わないだろうし。


 まあ何にしろ、忌み子だなんだと言われなくなったし、幼女の養分となったならいい。

 これでテア様から依頼されていたことも一通りやり終えたしね。


 あと変わったことと言えば、倒す敵が変わってきたくらいかな。

 グルイメアに近いほど危獣たちが、そして離れるほど盗賊なんかが増えるようで、数えるのも飽きるくらいには人間もぶっ飛ばしてきた(もちろんミレスちゃんが)。

 基本的にはキィちゃんに乗って速度も出してるから捉まることはないんだけど、なぜか休憩中に見つかるんだもんなぁ。ある意味そういうセンサーが備わっているのかな、それで生き延びてるんだろうしね。

 最初は人間相手ということで多少抵抗はあったものの、面白いくらい悪役ムーブをかましてくるので攻撃しやすかった。「金目の物を置いていけ!」やら「抵抗したらどうなるだろうな」やら、どれもフィクションで見たことのある台詞ばかりで、ここはやっぱりゲームの中なのか? と錯覚するほどには。


 そんな三文芝居をやり過ごしつつ、段々人気もなくなった道をひたすら走り続けること数時間。


「ここかー」


 ヒスタルフを出発してどのくらい経っただろう。

 テア様からもらった情報の中で一番の魔気回収スポットであろう、とある遺跡へ辿り着いた。

 

「確かにこれは近づいたらアカンやつやな」


 ここに来るまでに立ち寄った町の人に何度も行くのをやめたほうがいい言われ、実際行くまでの道に検問らしき場所もあり(許可証はテア様からもらっていたけど)、奥に進むにつれ遺棄場のような薄暗い雰囲気に包まれていった。

 そして行き着いた先は、黒い霧──可視化された魔気に包まれた遺跡。


「キィちゃん大丈夫?」


「キィゥ」


 ミレスちゃんはいいとして、ここまで濃い魔気だと霊獣であるキィちゃんに影響がないか心配だったけど、今のところ大丈夫そう。

 いざとなったら私からエネルギーを搾り取ってバリアを張ってくれ。


「これ全部吸収したら結構な量になるんじゃない? いけそう?」


「もっとおくに、ある」


「お、このくらいは序の口って感じですか。いいね、行こう」


 余裕ともとれる幼女の助言を受けて奥に進むことにする。

 多少身体が魔気に慣れたとは言え、可視化されるほど濃い魔気に長時間耐えられるとは思えない。さっさと最奥で目的を果たすとしますかね。







 辺りは暗く、順路もはっきりしなければ壁の材質でさえも分からない。ランプの照らす灯りだけが頼りな状況で、足元さえも覚束ない。

 落とし穴があったら引っ掛かるだろうし、小石にでも躓けば盛大に転ぶ自身はあるけど、そこは何とか幼女センサーに助けられて危機を回避していた。本当にありがたい。


 それにしても、この先には何があるんだろうか。

 今まで濃い魔気と言えば、撒き散らしていたんだか引き寄せられていたんだか、とにかく巨大な危獣が出現していた。でもこの遺跡には害獣一匹すら出ないし、気配なんかは分からないけど生物がいる感じはしない。足元に死骸や骨が転がっているということもない。

 あとは罠があったりするのがセオリーじゃん。仕掛けを解いたら開く扉とか、防衛機能が働いてガーディアンが出てくるとか。

 そんなものも全くない。多少のカーブはあるものの、ただひたすら一本道を進んでいるだけで何の面白味もない。少しだけ拍子抜けだ。


「ミレスちゃん、あとどれくらい……?」


「ん、もうすこし」


 遺跡に入ってからどのくらい経過したのかさっぱり分からない。一時間くらいかもしれないし、数時間くらいかもしれない。同じような暗い場所を歩き続けることで身体も頭も麻痺してくる。

 しかも奥に進みながら幼女が吸収してくれているとはいえ、濃度の高い魔気に身体が晒され大分しんどくなってきた。キィちゃんも私の頭の上でぐったりしているみたいだし。


 それからしばらく歩いていると、どうもこの先は行き止まりのようだった。

 いや、違う。ランプで照らしてみると、文様のようなものが描かれている。扉かもしれない。


「……」


 まるで誘われるように立ちふさがる壁に触れると、予想していた硬く冷たい感触とは違い、そのまま手が通り抜けた。


「え……?」


 というか、扉がない。

 さっきまで目の前に描かれていた文様は消え、さっきまでとは違い少し明るい場所にいた。

 光源は見当たらないのに、ランプがなくても視認性が向上している。


 いつの間に扉の内側に行ったのか、そもそも扉だったのか。

 よく分からないまま周囲を見渡すと、そこは大きな部屋のように壁に囲まれた空間だった。出入り口のようなものも見当たらない。

 その中央には地面から大きな岩のようなものが突き出ている。周囲には黒い靄が纏わりついていて、何となくそれがよくないものだと感じる。


「あっ」


 幼女が腕の中から飛び降りる。

 デジャヴだな、などと思っていると、段々吐き気がしてきた。何だか頭が重い感じがするし、目が回る。


「ぅ──っ」


 酷い乗り物酔いのような、ぐるぐるバットでもしたような感覚に立っていられず、蹌踉めいて膝をついた。

 ひんやりとした床に触れる感覚。同時に手放したランプが転がる。


「ぁ──」


 視界が揺らぐ。二重三重にぶれた視界の隅で、ランプの灯りに照らされた床が、薄っすらと発光しているように見えた。


「──っ」


 左腕が焼けるように熱い。鳴りを潜めていた赤黒い血管が暴れ回っている。

 ドクドクと心臓の音がうるさいくらいに聞こえる。

 割れるように痛む頭が、胃部を圧迫する嗚咽感が、身体の節々で危険信号を伝える。

 いっそ意識を手放してしまいたい──と、目頭や口角から液体を流し始めたときだった。


「──ひぃ」


 地べたに這いつくばる私の頬に、柔らかな何かが触れる。


「み、れす」


 ゆっくりと目を開けると、幼女が心配するように顔を覗き込んでいた。


「──っは、ぁ」


 小さなその身体を抱き締めると、さっきまでの苦痛がふっと和らいだ気がした。


「終わったの……?」


「ん」


 幼女の小さな手から伝わってくる何かが速まった鼓動を落ち着かせる。平熱以下の体温が、こんなにも心地いい。


「キィゥ」


「キィちゃんも無事で何より……」


 ここまでの疲労がどっと来たのか、すっかり痛みは消えたのに倦怠感が残る。


「ミレスちゃん、お疲れ様。どう? 十分な量だった?」


「ん」


 部屋の中央にあった大きな岩のようなものはいつの間にか消え、周囲の黒い靄もなくなっている。あれが丸ごと魔晶石のようなものだったのか。

 魔晶石の質と量の関係性なんて分からないけど、力士三人分くらいはありそうな大きさだったから期待はできそう。


 そんなことを思いながら幼女を抱えて立ち上がると、ガシャン、と鈍い音がした。

 下を見れば、見覚えのある枷が落ちている。


「やっ、たー!」


 幼女の身体を確認すると、左腕の枷が取れたようだった。それだけ濃い魔気だったんだろう。

 よかった。あとは右腕と首の枷だ。


「うーん、これだけ魔気を集めて外れたのが一つだけとなると、今後が思いやられるね」


 いつぞやの精霊が魔気でも霊気でもたくさん集めればいいとか言っていたけど、遺棄場の泉の近くにいても枷が外れる気配はなかったしなぁ。霊気より魔気のほうがいいんだろうか。


「さて、これからどうしますかね」


 ひとまず魔気の回収という目的は果たせた。枷も一つ外れた。

 方向性としては、一旦ヒスタルフに戻ってゆっくりしつつテア様から情報をもらうか、ここからあてのない旅に出るか。

 前者の方が確実ではあるんだろうけど、せっかくここまで来たんだから見知らぬ土地を回るのもいいかもね。隣国にも近いみたいだし。


「まあとりあえず、ここを出ますか」


「ん」


「キィゥッ」


 そういえば、どうやって出るんだ?

 何回見ても出入り口は見当たらないし、一体どうしたものか──と首を傾げたその時だった。


 ドドドドドドドド──。

 振動とともに、低い音が鳴り響く。


「え、うわっ」


 急に浮遊感を味わったかと思えば、踏んでいたはずの地面がなかった。


「ちょっ、落ち──」


 言いかけたところで、暗いはずだった視界の下方から白が飛び込んでくる。

 何も考える暇もなく、ただ幼女と霊獣を抱き締めた。

 身体も思考も、白い何かに飲み込まれていく。


 ──キィゥッ。


 微睡む意識の彼方で、霊獣の弾んだ声が聞こえた気がした。


中途半端ではありますが、今回で第三部終了・次回から第四部開始です。

第四部開始はもう少しお待ちいただけたらと思います。


そしてお知らせです。

二ヶ月越しにはなるのですが、8/1の小説投稿開始一周年を記念して動画をつくりました!


YouTube:https://youtu.be/r2DsCQJZXjg

ニコニコ動画:https://www.nicovideo.jp/watch/sm41158778


作曲を依頼しまして、ボーカルは愛しの鏡音リンちゃんです。

内容としては第一部の前半くらいまでとなります(何気にヒオリの姿初公開です)。

とても素敵な楽曲に仕上げてくださったのと、頑張って動画つくったので見ていただけたら嬉しいです~!

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