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幼女と私の異世界放浪記  作者: もそ4
第三部 追従
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41.真相と予想



 霊獣が囲まれ拝み倒されるというイベントも挟みつつ、みんなの喜びと感動と興奮が収まったあと、町へ戻ることになった。こんな町外れで野宿する訳にもいかないしね。


 さっきのピラミッドオブジェにかなり破壊されたとはいえ、崩壊を免れた建物もいくつかあった。そこを拠点として復興作業を続けるらしい。


「キィゥッ」


「ん、何?」


 私の肩に乗ってどこかを示す霊獣。

 確か向こうは、眠ったままの人たちがいたはずだ。


「わっ、いてて、分かったって!」


 立ち止まっていると髪の毛を銜えて引っ張ってくるので、霊獣の示す方へ向かう。


「キィァ」


 やっぱり目的地はずっと眠ったままの町の人たちが集まった部屋で、早く入れとでも言うように促してくる。


 一応ドアをノックして入ると、外観と同じく危獣やピラミッドオブジェからの攻撃を免れた町の人たちがいた。

 よかった。どうにか部屋もみんなも無事みたいだ。


「キゥァ」


 霊獣は部屋の中央まで進むと、くるりと宙を一回転。

 そして一鳴きすれば、霊獣から光が発され、周囲は淡い光に包まれた。


 今度は何? と思ったのも束の間、霊獣が肩に飛び乗ってくる。


「キィキィァ、キュゥキィゥァ」


「そのうち、め、さます、って」


「え!?」


 さっきの回復の術もそうだったけど、この子凄すぎない? 霊獣ってみんなこんな力を持っているのか、それともこの子が特別なのか。

 泉の水とか聖雫の効果・価値を考えると、とんでもない子と契約してしまったかもしれない。

 いや、最強のアタッカーに最強のヒーラーとかパーティとしては最高なんだろうけど。変なことに巻き込まれる未来しか見えない。


 というか、これだけ凄い回復術が使えるなら、自分の足くらい治せるのでは?


「ん、ん。それは、できない、って」


 何でも、霊獣の中では霊力が高く回復術に長けているものの、自分は対象外らしい。

 防御壁のような術も使えるけど自分一人だと使えないらしく、それで私についてくると言ったのかと納得した。誰かといれば使える訳だし、それで自分の身も守れるんだからね。

 それにしても強力で便利な術だけど、難儀なもんだね。効果が絶大な分ペナルティというか制限があると考えたら分かる気もするけど。


「ヒオリ様、こちらにいらしたのですね。どうかしたのですか?」


「あ、ニカちゃん」


 しまった。どう説明したらいいやら。

 いや、別に説明はできるんだけど、この状況を知ったニカちゃんが暴走し兼ねない。


「あー、何というかね……」


 ニカちゃんにさっき霊獣がやったことの説明すると、案の定、怒っているのか感動しているのか分からない、とにかく興奮した話がしばらく続いたのだった。







「──つまり、魔術により身体機能が停止していたということですね」


「キィゥ」


 幼女の通訳で霊獣から眠ったままの町の人たちの事情を聞き出したニカちゃんは、真剣な顔をして黙り込む。


 息はしているけど身体機能は停止している。だから疲労も衰弱もしない。

 単に眠らされているだけの状態とは違い、ありがたいと言えばありがたいことだけど、そんな術をかけた思惑は全く分からない。


 ニカちゃんの興奮が治まってから今回の説明会を始める前に呼んでいたドニスさんたちも、困った顔をしていた。

 まだ目を覚ましてはいないものの、さっきの霊獣の力を目の当たりにしているし嘘を言っているとは思えない、だけど信じられない。そして何より魔術とはどういうことだ。

 そんな感じの雰囲気だ。


「どうにもならないと思っていたことが解決して嬉しいけど……その原因の魔術って、魔族が使うものだよね」


「はい。ですが魔晶石を使えば人間でも似たような術を使えるそうです」


「つまり、町を襲ったのは魔術を使う人間ってことね」


「……いえ。そうとも限りません」


 ニカちゃんがこちらを向く。


「ミレス様は、魔族ですね?」


 みんなが息を呑むのが分かった。ドニスさんもクレーラさんも、目を見開いている。

 未だ目を覚まさないでいるルジェークさんを抱えたガヴラだけが、いつもの真顔だった。


 急に話を振ってきたニカちゃんにちょっと驚くけど、何か意図があるんだろう。どうせ隠し通すつもりもなかったし、ここで否定しても仕方ないよね。


「精霊が言うには魔族と人間の混血なんだって」


「……なるほど。お聞きしたいことは山ほどありますが、これで色々と納得がいきました」


 そういえばテア様とエメリクは知ってることだけど、ニカちゃんにきちんと伝えたことはなかった。

 与えられた情報から自分でその結論に至るの凄いね。


「……なっ、納得って……魔族なんですよ……!?」


 集まった中の一人が怯えた表情で叫ぶ。


 まあ、これが普通の反応だよね。

 大昔に滅んだとか言っていたくらいだし、信じられないし本当だったら脅威な上また争いの火種になりかねないだろうし。


「とても強いとは思っていたけど……魔族だったのね」


「でも、たくさん手伝ってくれた。魔族と言っても、敵じゃない」


「はい」


 少し困惑したようなドニスさんとクレーラさんに頷く。


「ミレス様はヒオリ様に従っています。これまでの功績を考えても人間の害となるとは思えません。話を戻しますね」


 論点はそこじゃないとばかりにニカちゃんが話を続ける。

 若干置いてけぼりにされているみんなが可哀想ではあるけど、仕方ない。後でフォローすることにしよう。


「滅んでいたと思われていた魔族が生きている──つまり、他にも生き残っていてもおかしくないということです」


「今回の事件の首謀者が、魔術を使う人間か、魔族かもしれないってことだね」


「はい。もしかしたら今後も同じようなことが起こるかもしれません。今回の件は領主様を通して国に報告します」


 もしかしたら、復活した魔族との争いが再び始まるかもしれない──そう思った人は少なくないはず。


「ひぃ」


「うん」


 服を掴みながら見上げてくる幼女の頭を撫でる。


 そんなことはさせない。いや、もし魔族の生き残りがいて、人間に害をなそうとも、この子のためにできることは何だってやってやる。


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