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幼女と私の異世界放浪記  作者: もそ4
第三部 追従
132/240

15.検問


「ここから先は通行止めだ。引き返せ」


 衛兵みたいな男が無表情で告げる。

 後ろにある小屋は詰所のようなところなのか、窓がないから様子は分からない。ただ元オルポード家よりは小さいくらいで、駅前とかにある喫煙室ほどの大きさだ。


「この先の町に用があるんですけど、何で通れないんですか?」


「機密事項だ。お前たちが知る必要はない」


「それじゃ納得できないです」


「町長と領主様のご命令だ」


 何の機密なんだか。

 ロボットか、というくらい無表情かつ無感情で対応する男。幼女もガヴラも視界に入っているはずなのに、何の反応もない。幼女の評判はともかく、自分よりガタイのいいガヴラに強行突破されるかもしれないとか思わないんだろうか。

 ガヴラ、無言で威圧してるみたいだけど。


「領主様と知り合いなんですけど、そんなこと言ってないですよ」


「何と言われようとこれは上からの命令だ。立ち去れ」


 何を言っても駄目らしい。余程自信があるのか。

 うーん、これは確かに普通の人じゃどうにもならなさそう。この対応はどうなんですか!? ってクレーム入れる先も方法も曖昧なこの世界じゃ、泣き寝入りするしかないのかも。


「ヒオリ様、少しよろしいでしょうか」


「ん?」


 ガヴラにここから離れるよう促され、検問所から距離を取る。

 木々の間に隠れながら、ガヴラはとある提案をした。


「オレが町の様子を見てきます。ヒオリ様はここでお待ちください」


「うーん、じゃあお願いしようかな」


 どうせこのままだと強行突破するしかないしね。せっかく上がった幼女の名声を落としたくはない。


「はい。少しお待ちください」


 そう言ってガヴラは木々の茂みに消えていった。


 ガヴラも十分目立ちそうだけど、身体能力的にはうまくやってくれるんだろうな。幼女は索敵ができても密偵みたいなことはできそうにないし。

 いや、もしかしたらできるのかもしれないけど、この子一人にしておきたくない。もちろん私はただの一般人だからスパイなんて真似できないし。


 正直、ガヴラがいてよかったかもしれない。都合のいいように使っているのは私も同じだ。ポー何とかという国と変わらないじゃないか。あいつ、気づいてるのかな。


「ヒオリ様」


「うおっ」


 急に背後に立たれて驚く。お前は忍者か。


「え、何、早かったね。どうだった?」


「あの町の人間は戦争でもしようとしてるのかもしれません」


「え? 何、どういうこと?」


「何者かの命令で武器を作ったり備蓄を準備したりしているようでした」


「ええ……」


 詳しく話を聞けば、町の人たちは皆虚ろな目をしていて兵隊のように同じ行動を取っていたらしい。


 武器や備蓄は害獣や危獣に対してとは思えない量。そもそもいくら武器があってもその一つ一つが強くなければ、危獣相手だと歯が立たないため意味がない。強力な武器を一つ作るほうがいい。

 それにこの町に害獣や危獣が出ているという話は隣町では聞かない。その他に何か問題があった訳ではないようだった。


 というのがガヴラの話。おじさんの話の内容を知った上で事前に情報収集をしていたらしい。


 何というか、意外だった。

 ポー何とかという国にいた話を聞いていると、兵器とか壁扱いされているものだと思っていたから。まさかそんなスパイみたいなこともしていたのか。戦うことしかできないとか言っていたしただの脳筋だとばかり思っていたけど、かなり高性能なのか、少年。


「どうしますか」


「どうしようね……」


 確かにガヴラの話を聞いていたら何か良からぬことを考えているんだろうとは分かる。本当に戦争をしようとしているのかまでは分からないけど。


「というか、戦争するにしてもどこ相手に?」


「国相手、とか」


「あ~、反逆?」


「有り得ないことではないかと」


 何のメリットがあるんだろうか。

 テア様に聞いたけど、この辺りは本当に辺境で王都までは結構な距離がある。移動に時間がかかるだろうし、それまでにバレて対応される可能性は大いにある。


 それか王都まではないにしても、この領地を治める主、とか。

 テア様を狙っているんだったら許さないけど、領主相手に争って何になるんだろうか。普通に侵略・征服的な? 土地や財産を増やしたい、みたいな。


「権力者が考えることは分からん……」


「どちらにしろ、動くのは早い方がいいかと。”気”を感じましたので」


「え!? それを先に言ってよ!」


 町長が何を考えているのかは分からないけど、魔気が溢れているならまずい。他の人たちに影響があるはず。

 どの道、直接何が起こっているのか確かめて、真意を聞くしかない。


「ひぃ、やる?」


「ちょっと保留で」


 可愛く首を傾げる幼女。黒い枝をちらつかせている。


 またお前か、という顔のロベスさんやエメリクなどヒスタルフの面々の顔が浮かぶ。


 でも正直、話し合いが通用しないから物理的な解決しかないのか。できるだけ穏便に済ませたいけど、そんなこと言ってる場合じゃないよね。


「やっぱり強行突破するしか……?」


「お任せください」


 ガヴラは一礼すると、あっという間に姿を消した。


「ひぃ」


 幼女に袖を引かれ、指差さした検問の方へ向かう。


 まさかとは思ったけど、立っていた男が地面に伏せていた。普通に物理的に解決したらしい。


「ヒオリ様、これで大丈夫です。顔も見られていません」


 詰所のような小屋から出てくるガヴラ。多分中にいた人たちも伸されているんだろう。


「結局脳筋か」


「何か?」


「いや、何も」


 まあテア様の名前でもどうにもならなかったし、それしか思いつかないしね。


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