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幼女と私の異世界放浪記  作者: もそ4
第三部 追従
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6.主従関係


「ねえ、一族のしきたりだか何だか知らないけど、首輪を外したのはミレスちゃんなんだけど。忠誠を誓うならミレスちゃんにじゃない?」


「確かに枷を外したのはソイツですが、命令を出したのはヒオリ様です。つまりソイツはヒオリ様の従者」


 よくもまあ、首輪が外れた途端ペラペラと。命令じゃなくてお願いなんだけど。

 なぜかミレスちゃんもこくこくと頷いているし。どういうこと。


「ひぃ、あるじ」


「え、そうなの?」


「ん」


 いや、まあ。契約とは聞いたけど。対等な関係だと思っていただけに衝撃だった。

 そりゃ友だちかと聞かれれば首を傾げるけど、主従関係だったのかと言われれば目から鱗というか。


「ごしゅじん、さま」


「うッ」


 こてんと首を横に倒す幼女に、思わず胸を押さえる。苦しさで爆発しそう。

 わざと、わざとか。何だってこう、胸を抉るような可愛さを出すんだ。


「ご主人様とお呼びしましょうか」


「いや、いらん」


 私よりデカいイケメンに媚び売られても心が靡かない。残念だったな、私が普通の女子じゃなくて。いや、女子って歳ではないけど。

 某イケメン隊長の時といい、乙女ゲーみたいな展開はいらない。少しでも可能性のあるフラグは全力でへし折っていく。


「そうだ。何でも言うこと聞いてくれるなら──」


「従うことをやめろ、というのはできません」


「チッ」


「それ以外でしたら何でも。自害でも」


「めんどくさぁ」


 ついて来られるのは面倒だけど、その辺は後で考えよう。


「じゃあもういいや。とりあえずここの復興っていうか町づくりに協力して。あとミレスちゃんをソイツ呼ばわりしないで」


「仰せのままに」


「……はぁ」


 溜め息を吐いていると、青年が笑って話し掛けてくる。


「いいじゃないっすか。ゾダの一族といえば他国も欲しがるほどの戦闘能力っすよ」


「いや、アタッカーはもう十分なんで……」


 可愛さも兼ね備えた最強の幼女がいるからね。

 というかそんな危険人物、身近に増やしたくない。絶対トラブルメーカーじゃん。

 ただでさえ幼女が魔族だったり霊力と魔力の両方を持っていたりしていてバレたら面倒な感じなのに。黒髪二人に白髪金眼なんて外見的にも目立つ組み合わせだし、必要以上に注目されるのはゴメンだ。こそこそするのも嫌だし。


 そもそも、そんな他国が欲しがるほどの戦闘能力を持っている人間を気に入らないからと言って捨てるとかあるの? 多少性格が悪かったり扱いにくかったりしようが、能力的に手放せないものなんじゃないの。

 よほどガヴラの性格に難があったのか、大して強くなかったのか。それとも──。


「最近、ポゥンネルは落ちぶれてるって聞いたけど、ゾダの一族を追放するなんて相当だな」


「ああ、ありゃ駄目だ。国が腐っちまってる」


 国がかなり愚かだった可能性もあったけど、そっちだったか。


「あと数日もすれば力が戻ります。そうすればポゥンネルなどオレ一人で潰せますが」


「結構です」


 さらっと物騒なことを言うガヴラ。

 やめて。せっかく追われる身から逃れられたのに、今まで以上のお尋ね者にさせる気か。


「というか、また呪いかけられたりしないの?」


「オレが五歳の時に三月かけて集めた十数の術士たちはもう使い物になりません。それにあの時よりも力をつけているので、遅れを取ることはないでしょう」


「あ、そう……」


 なんか、こいつもとんでもない奴だったりする? 五歳の時に十数人の術士が寄ってたかって力を奪うほどの人間ってどういうこと。

 幼女が凄すぎてイマイチ比較できないけど、この子は魔族だし、この世界の基準からすると人間の中ではかなり強い部類では。某イケメン隊長とどっちが強いんだろう。

 というか、あの中学生くらいの姿で五歳なのか。そりゃ怖がられるかもね。


「そういえば、今何歳なの?」


「十六です」


「知ってたけど若い」


「ヒオリ様も十分お若いです」


「そういうお世辞もオプションでついてくるんだ」


 十六歳だったら今の外見からして年相応なんだけど、本来ならもっと成長するんだっけ。

 普通の人間で外見が若いまま歳を取ると大変そうだけど、ガヴラの一族は身体能力も若いままだろうし、黄金時代が長いのは羨ましい。私なんてアラサーですでに歳を感じてるよ。


「ま、とりあえず頑張って働いてね」


「はい。まずは食事を用意致します」


 そう言ってガヴラはその辺に放っていた巨大な動物を軽々しく掴んでどこかに持っていった。


 協調性はなさそうだけど、他の人と一緒に狩りに行っていたみたいだし、コミュ力が皆無って訳でもなさそう。不愛想だけどそこまで生意気にも見えないし。

 ただ何というか、言動が重い。

 忠誠を誓うとか言われても、はいそうですかとすぐに信頼を寄せることはできない。基本的に人を信用して裏切られたくないから、過度な期待はしない。そもそも一族のしきたりだってよく分かんないし。


 どこかの国に従っていて、捨てられて、その国を滅ぼすこともできるような人間だ。もちろん捨てるとか酷いことはしないけど、忠誠が崩れる可能性があるというだけで信用できない。寝首を掻かれるなんて嫌だし、命を差し出すなら幼女がいい。

 まあ、つまるところ、幼女>>>>>越えられない壁>>>>>イケメンだからね。


 そういえば、ミレスちゃん結構嫉妬深い方だけど、ガヴラに対してはそうでもないの何でだろ。今も興味なさげに黒い枝で地面をべしべし叩いてるし。


「ミレスちゃんや」


「ん」


「ガヴラはいいの?」


「ん。おなじ、だから」


「同じ?」


「ひぃ、あるじ」


「あー……」


 つまり、主を同じとする従者だからノーカンってこと? どういう基準だ。

 世の中には主従という大変素晴らしいカテゴリーがあるのを知らないのか。実際に目にしたでしょ、テア様とエメリクっていう年の差主従を。恋愛モノとしてもめちゃくちゃ好きだよ。


 まあ、それはともかく。私にその気は全くないし、幼女も気にしないって言うんだったらいいか。


 とにかく、ここがある程度住めるような場所になるまでは協力して、それからのことはまた後で考えよう。


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