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幼女と私の異世界放浪記  作者: もそ4
第二部 新興
112/240

55.その後の話



 色々問題が解決した&アダルを含めオルポード家よく頑張っている偉いよプチパーティは恙なく終了した。

 せっかくだし奮発しようと思って買った食材や惣菜たちが結構な高級品だったらしく、オルポード家のみならずシベラにも驚かれて説得するのに大変だったりしたけど。

 何でも、あのベルジュローのおっさんたち貴族はいい暮らしをしているものの財政的にはそんなにいいものではなく、領主であるテア様は慎ましく過ごしていたらしい。それでなくても騎士として育ってきたので、豪勢な食事というよりは安上がりで身体にいいものを摂取していた。話を聞いたらどこのボディビルダーかな? みたいな食事だった。ボディビルダーの食事知らんけど。とにかくタンパク質優先みたいな。

 そんなこんなで使用人にもこんな高級品を食べさせるなんて、人に振る舞うより自分にお金をかけろ、などと引かれたり泣かれたり怒られたりしながらも、残すのは勿体ないのできちんと最後までみんなで胃に収めたことを報告しておく。ちなみにエメリクは甘い物が好きらしくなかなか手に入らないと言う果物に喜んでいた。


 それからしばらくのんびりと過ごしていた。

 元々引きこもり気質なので外に出ることもなく一日中部屋でごろごろしたり、たまにシベラたちの料理や掃除を手伝ったり。もうここに永住しようかなと思えるほどに穏やかに暮らしていた。

 その内町を出ないと、ミレスの枷を外す旅に行かないと、と思いつつも、インドアな私は自堕落な生活に打ち勝てていなかった。

 

 もしかしたらテア様から聞いた話が一番大きい原因かもしれない。

 何とタルマレアは自国内での反逆鎮静に力を入れることにしたらしく、恐らく某隊長や力のあるものは国内から出ることはないだろうと。ただでさえ越境は目立つし色々な制限がかかるから私としてはかなりありがたい。これでしばらくは追われるということはないはず。

 エメリクは「これだけ好き放題やっといて何を恐れてるんだか……さすがにタルマレアでも今のお前さんたちを捕らえるなんてしないだろうよ」なんて言っていたけど、忌み子の伝承を信じている人たちに何言っても通じなさそうだしな。


 別の意味で心配していたテア様とエメリクの怪我はすっかり治ったようで、仕事に完全復帰していた。ミレスがテア様に投げつけた精霊石がかなり有能だったらしく、専用の媒体を通して得られた霊力でかなり回復が早かったとのこと。

 とはいえ怪我が治らない内に仕事をしていたテア様はエメリクに心配されていたけど。何だか尋常じゃないくらい過保護というか、なぜか書類を渡すときに手が触れるだけでエメリクが挙動不審になっているものだから、思わず「……おめでとう?」とテア様に言ったら、小さく溜め息を吐かれた。一体何があったんだ。


 あと変わったことといえば、幼女が借り出されるようになったことかな。

 鉱山の奥に高濃度の精霊石が埋まっているというお告げのあと、本当に発掘されたらしい。まあ嘘を言っているとは思わなかったけど、それがかなり価値のある精霊石だったりその他の鉱石だったりしたために一気に経済状況が好転したと。

 もしかしたら他にも貴重な資源がどこかにあるのかもしれないと幼女に助言を請うたところ、何と他にも色々と見つかったらしい。林の奥にあった貴重な木やら木の実やら神聖な泉やら、とにかくよく分からないくらいに感謝された。知らないおっさんやお爺に泣きながら感謝されて少しびびった。その辺の報酬というか権利的な関係でもらった金額も破格でびびった。ちなみに一回だけじゃなく定期的に振り込まれる分もあるらしい。

 この領地の財政はちょっと心配だったけど、テア様もこれで民に苦しい思いをさせなくて済む的なことを言っていたし安心した。


 そうなるともちろんエコイフも大忙しということで、ノエリーさんもロベスさんと一緒にいる時間が増えたみたいだし、危獣の死体処理が終わったアダルも仕事がどんどん増えたみたいで、みんないい意味で忙しそうだった。

 オルポード家のみんなもテア様に仕事振りを認めてもらったみたいで、給料アップしたらしい。お母さんは相変わらず申し訳なさで死にそうな顔をしていたけど。


 もう色々な意味で不安材料が消えて、何の心残りもなく町を出ることができるという状況。


「でも、こう、ここまでくると安心しすぎて逆に動きたくないよねええぇぇぇ……」


 時は昼過ぎ、柔らかいベッドの上。ここ数日はこうしてだらだらと過ごしている。

 旅に出るとこの快適な暮らしからは離れるし、グルイメアで悩んでいた衣食住が保証されているのってやっぱり強いんだよね。


「ん」


 胸元に抱きついている幼女の髪を撫でると擦り寄ってくる。専用に誂えてもらったワンピースタイプのパジャマを着ていると、本当にか弱く見えるな。とても巨大なモンスターを一撃必殺するなんて考えられない。


「……」


 幼女の細い首に存在を主張している枷を見ると、このままではいけないとは思う。まだ片足の枷が外れただけだし、あと四つも残っている。光を失った右眼も身体中のケロイドのような痣もどうにかしてあげられるのならそうしたい。

 ケロイドのような痕については、枷が外れた方の足の周囲は薄くなってきているので、全部の枷が外れれば痕も綺麗に消えるかもしれない。別にこの痣が不快という訳ではないけど──。


「もう少し露出のある服を着てもらいたい……」


 ゴスロリも可愛いけどね。もっと色々な服を着てもらいたいじゃん。さすがに首輪とか手足の枷とかケロイドみたいな痣が他人に見えるのはちょっとマズいじゃん。私が虐待してるっぽい感じになってしまう。


「……よし、行くか」


 思い立ったが吉日。というか今起きないとずっとこのまま自堕落な生活を続ける気がする。


「ミレスちゃん」


「ん」


 見上げてくる幼女を抱き上げる。

 さすがに今から旅に出るのは準備が足りないから、今日は買い物するとして早寝早起きしよう。そして明日出発だ。


 次の目的地についてはある程度決めている。テア様に助言をもらって、というか半分くらい依頼も入っているんだけど、危獣出没スポットを回ることにした。最終的には隣国との国境近くにあるらしいかなり魔気の濃い遺跡に行きたい。危獣を倒したり魔気を吸収したりする内に枷を外していく算段だ。


「よし、がんばろ」


「ん」


 まあ私が戦う訳じゃないし、頑張ることはないけど。全ては幼女頼みだけど。


「ひぃ」


「んー」


 擦り寄ってくる幼女を抱き締める。最近肌とか髪の毛の艶がよくなった。初めに会った時とは大違いだ。あの時はちょっと不気味なくらいだったし。


「行こっか」


「ん」


 枷と痣がなくなればもっと年相応の子になるはず。できることをやっていこう。


 ──コンコン。ドアをノックする音がする。


「ヒオリ様、起きてますかぁ? お掃除したいんですけどぉ」


 すみません、今出ます。


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