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運命の相手  作者: maiko
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お見舞い

4人で遊びにいった翌日、2番目の兄が家に来ていた。


「GW以来だな。元気してるのか?」

「元気してるよ。恵兄は?」

「俺は変わらずだな」


下の兄である恵兄は車で30分ほどの距離に住んでいる。

時々こうして休みの日に僕の様子を見に来ては世話を焼いていく。

僕とは違い身長は175㎝程あり、どちらかといえばかっこいい部類に入る。

今年27歳になる。仕事は何度聞いてもよくわからないが研究職をしているようだ。


「恵兄って今彼女いないの?」

「なんだ?珍しいなそんなこと聞いてくるの。」

「なんとなく。」

「今はいないな。仕事が忙しいからめんどくさいし。」

「そんなこと言っててもいいの?」

「いなきゃいないで生活楽しいんだよな。」

「お前ははめ外すなよ。それに、いい人ができたらすぐに言えよ。」

「できないよ。それになんで?」

「変なのに引っかかりそうだからな。騙されて流されそう。お兄ちゃんが見極めてやるからさ。麻兄も厳しいと思うぞ。」

「そんなことないよ。なんで2人の許可がいるわけ。」

「ブラコンな兄をもった弟の宿命だ。」

「自分で言うなよ。」

「年の離れた末っ子は可愛んだよ。」


恵兄とたわいのない話に花をさかせた。

僕に恋人ができたら2人に紹介しないといけないのかー。

誰でも許してもらえない気はするけど、まだまだ先の話だしと、忘れることにした。


「それよりも、なんか顔が赤い気がするけど体調は大丈夫なのか?」

「ちょっと疲れてるのかなって思うけど。大丈夫だよ。」

「お前の大丈夫は信用できないからなー。」

帰り際に恵兄より普段に比べて顔色が悪いから早く寝ろと言われた。

自分でもわからないくらいの体調の変化を感じ取った兄が忠告を残す。


最近アルバイトも始めたし、昨日は先輩や大地と疲れるまで遊んだしな。

初めての一人暮らしで知らないうちに身体的にも精神的にも疲れていたのかもしれない。

恵兄が来て安心したら疲れが全面的に見えるようになってきたのかもしれない。


*****


翌日、恵兄の予想通りに体調を崩した。

大地にラインで熱があるから講義を休むと連絡しベッドに寝転がる。


恵兄が昨日、僕の体調が悪そうだったと長兄の麻兄に連絡していたみたいで、朝一で麻兄から電話きた。


『昨日、恵から連絡がきて体調が悪そうといっていたがどうだ?』

「すごい報連相だね。熱が出たので寝てます。身体がだるい。」

『午前中、有給とったからすぐに行く。病院に行こう。』

「寝てれば治るから大丈夫だよ。」

『ここにいる限りの保護者は俺だからな。言うことを聞きなさい。』

「はい」

もうすでに、病院に連れていかれることは確定しているみたいだ。


「車で1時間くらいはかかるからとりあえず寝てろ。合鍵で勝手にあがるからな。

 食べるものはあるか?」

麻兄は万が一の時のためにこの部屋の合鍵を持っている。

その合鍵を使って部屋に入ることを告げられる。

「食欲がない。とりあえず寝てるからついたら起こしてね。」


1時間後兄が来て、軽く食事を取らされると近くの病院に連れていかれた。

病院は近くに住んでいる伯母のかかりつけ医のようだ。

事前に兄が伯母にどの病院が良いか情報収集をしていたみたいだ。


病院につく医師に

「新学期で気づかないうちに疲労がたまって体調を崩したのでしょう。」

と寝とけば治ると言われた。

麻兄は午前中のみ有給を取っていたため病院が終わったら早々に帰っていった。

義姉さんが食欲のない僕を心配しておかゆやちょっとしたおかずを作ってくれたみたいで、麻兄は「後で食べろよ」と冷蔵庫に入れてくれていた。

今日はうちに来るか?と聞かれた。義姉さんにも連れて帰ってこいといわれているらしい。

麻兄は本当に良い人を捕まえたと思う。10歳も違う兄は第2の父親のような存在だ。

義姉さんは麻兄とは大学時代の同級生で、当時から僕を弟のようにかわいがってくれている。

兄の家には2歳になったばかりの甥っ子がいる。可愛い甥っ子に風邪をうつしてしまったら大変だと言い誘いを断る。

現にお医者さんにも薬を飲んで寝ていれば治ると言われたばかりだ。

今日1日寝ていれば熱はさがるだろう。

麻兄が帰って静かになった部屋でベッドにもぐりこみ静かに目を閉じた。


*****


いつものカフェテラスの席で大地が1人で食事をしているのが目に入る。

珍しい光景に景と章は声をかける。


「稔はどうした?」

「今日は熱が出から休むと連絡がありました。」

稔のペアである景先輩に簡単に告げる。先輩には連絡をしていないらしい。


「講義が終わったら様子を見に行ってみようと思ってます。」

「いや。午後は休校になったからこれから俺が様子を見に行ってくる。」

「俺がいくから大丈夫です!」

「お前は午後も授業あるだろ?俺はペアの先輩として様子を見に行きたいんだ。」

「・・・。」

大地は景に強く言われ黙り込んでしまう。


景は席に座ることもなく鞄を持ち直し帰る準備を始める。

「章。俺はこれで帰るな。」

「わかった。成美によろしくな。」

「ああ。」

景はそばにいた章に声をかけてその場を足早に離れていった。


腑に落ちないような顔をした大地と目線を合わせながら、

「大地。一緒にすわってもいいか?」

と章は告げる。

「どうぞ」

と小さくつぶやく。

この聡い先輩な何か感じるものがあるのだろう。

「今日の夜、飯にいかね?」

「なんで?」

「なんでも。」

「わかった。講義が終わったら連絡する。」

大地と章はそのまま昼食をとり、何を食べたいかなど話別れた。


*****


寝ているとインターホンの音が聞こえる。

時計を見るともう12時だ。

麻兄が帰ってから2時間近く経過をしていた。

こんな時間に訪ねてくる相手がわからないが、オートロックのカメラモニターに目を向ける。

「えっ!!」

「俺だ。大丈夫か?」

「えっ!!景先輩?」

「お見舞いに来た。入れてくれるか?」

「ちょっと待ってください。」

どうしよう!!

普段から片づけをしている部屋はそんなに汚れてはいない。

ただ、さっきまで寝ていたため服装はパジャマだし髪はぼさぼさだ。

先輩を外で待たせるわけにはいかないし、諦めてオートロックの扉の解除ボタンを押す。


「どうぞ。」

「ありがとう。」

モニター越しに先輩がマンションの中に入ってくるのはわかる。

部屋番号は教えたことなかったと思ったが、送ってくれた時に見ていたのかな?


今度は扉のインターホンが鳴る。

「はい」

「俺だ」

「今空けますね」


ばじゃま姿のまま景を部屋のなかに招き入れる。

まさか景先輩が来るなんて思わなかった。


「散らかっているし、こんな格好でごめんなさい。」

「謝らなくていい。俺が勝手に来たんだ。

寝ていろ。軽く食べられそうなものや冷却シートを買ってきた。」

お昼を取っていないことを思い出しおなかが鳴る。

「食欲はありそうだな。」

薬を飲んで寝ていたためだいぶ回復したようだ。

お腹の音を聞かれて赤面してしまう。

「すいません。ありがとうございます。」

「じゃあ、準備するな。」

「先輩は?」

「俺の分も買ってきてる。一緒に食べよう。」


大学生の一人暮らしに少し広いこの部屋。

玄関を入るとすぐにキッチンが目に入る。廊下にはトイレやお風呂場の扉がある。

廊下の扉を開けると広いワンルームがある。

ベッド、テレビにソファー、勉強机の他に2人掛けの食卓がある。

家具は伯母がそろえてくれたものだ。

先輩に座るように促し、2人で昼食をとる。


「病院には行ったのか?」

「はい。上の兄が朝来て連れて行ってくれました。」

「この間出かけた時に無理していたんじゃないか?」

「そんなことないです!あの時はすごく楽しかったです。」

「そうか?無理させたんじゃないかと思ってな。」

「確かにお医者さんには疲労からくるものだって言われました。新しい生活に慣れなくって体調を崩したんだろうって。」

「気づかないうちに無理していたんだろうな。気づけなくて悪かったな。」

「先輩のせいじゃないです・・・。」


食事を終えたことを確認し先輩が話出す。

「ちゃんと食べたな。」

「ありがとうございます。」


先輩がお皿の片づけをしてくれている間に薬を飲み、寝る準備をする。

「お前が寝たら帰るから横になれ。」

すぐ脇のベッドが目に入る。

先輩は僕の頭をなでながらベッドに行くように促す。

僕がベッドに入ると、先輩はベッドサイドに腰かけて話しかける。

「お前が眠るまではここにいるからな。」

甘い声でささやきかけられて恥ずかしくなる。

頭をなでられていると安心しすぐに睡魔が襲ってくる。

目を閉じるときに先輩が何かささやく声が聞こえるが睡魔に負けて何を言っているのかはわからなかった。


*****


インターホンを押す音が聞こえ、目が覚める。

ベッドから起き上がりオートロックのモニター画面をのぞき込む。


「はい」

「様子を見に来た」

「鍵空いているから入ってきてね」

下の兄である恵兄がモニター越しに映っている。

オートロックの解除ボタンを押し、兄を迎え入れる。


しばらくすると兄が扉を開ける音が聞こえる。


「麻兄から連絡がきてやっぱり熱出したって。大丈夫か?」

「寝てたら楽になったよ。熱ももう下がっているはず。」

2人の兄の報連相にてびっくりする。

「夕食買ってきた。」

「ありがとう。」

「今まで誰かいたのか?」

「えっ?昼にペアの先輩が様子を見に来てくれたけど・・・。」

「そうか。なんとなく今まで人がいたような気配がして。」

「気のせいじゃない?」


景先輩は僕が眠ったら帰るといっていた。

僕はすぐに眠ってしまったからすぐに帰っていると思う。

ふとキッチンに目を向けると、洗われたばかりのコップが置いてあった。


「えっ?」

食器は先輩が昼食を食べた後に全部洗ってくれたはず。

その中で1つだけ濡れたコップが目に入る。

寝ている間ずっと頭をなでられている感触があったけど夢じゃなかったのかな?




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