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運命の相手  作者: maiko
4/24

出会い


大学からメールが届いた日の夜。

学内メールのアドレスに知らないアドレスからメールが届いた。


『題名:無題

はじめまして。

成美 稔のメールであっているか?

ペアになった広瀬 景だ。

これから2年間よろしくな。

どこかで会えないかと思っているんだが、予定を聞かせてほしい。

はじめは2人だと緊張するだろうから、俺の友人のペアと一緒に食事でもできればと思っている。

来週の都合の良い日があれば教えてほしい。

連絡を待っている』


開いてみてトドキっとした。

ペアとなった先輩からのメールだった。

顔合わせの連絡だ。


まだ越してきて時間がたっていないため予定はないに等しい。


『題名:はじめまして

はじめまして。

連絡ありがとうございます。

商学部 1年の成美稔です。

こちらこそ2年間よろしくお願いします。


来週の予定ですが。特になにもありません。

先輩方の都合の良い日程を指定してもらえると助かります。

よろしくお願いします。』


失礼な文章になってないだろうか?

こんな風に年上の相手にメールするなんでことがはじめてなので心配になる。

悩んでいても仕方がないので送信ボタンをクリックする。


すぐに先輩から返信が来た。


『題名:無題

返信ありがとう。

予定がわかったらまた連絡する。』


メールの文章からそんなに口数は多くない人なのかな?と考える。

実際に会ってみたらわかるだとうと思い、


『題名:ありがとうございます

連絡待っています。』

と、簡潔に入力しメールを終えた。


*****


2日後、広瀬先輩から連絡が来た。

来週の金曜日の18時から夕食を食べようとのことだった。

お店は予約をしてくれているらしい。

メールにはお店のHPのアドレスが添付されていた。


『居酒屋 海』


居酒屋なんて初めて行く。

服装は気にしなくてよさそう。

来週末が楽しみだ。


*****


あっという間に日美が過ぎていき、今日は先輩と会う予定の金曜日。

先輩だけではなく先輩の友人のペアと一緒の食事会だ。


緊張しすぎたのか予定より30分も早くお店についてしまった。

早く来すぎたけどお店って入れるのかな?

お店の扉を開けて店員さんに声をかける。金曜日だが時間が少し早いからか、店内はまだまだ余裕はありそう。

ラッキーなことに先輩方は個室を予約してくれているようで席の準備はできているようで、中に通された。


「お連れ様が1名先に見えられていますよ」

「えっ?」


今日の食事会のメンバーの一人がもうきているらしい。

僕みたいに緊張して早くきてしまった相手ペアの1年生かな?

先輩たちが来る前に少し話ができる時間ができるのはありがたい。

意を決して個室に入る。


「失礼しまーす。」

相手にもわかるように少し大きめの声で入室を伝える。

やはり相手ペアの1年目が先に来ていたようで、相手ははっとしてこちらを見上げてきた。

見上げた顔は普段からよく見ている顔でお互いにびっくりとした表情を浮かべた。


「稔!?」

「大地!?」


なんとその相手は大地だったのだ。

お互いに肩に入っていた力が「は~。」と抜けていった。

「なんだ~。もう一組のペアの1年生って稔だったのか!」

「それはこっちのセリフだよ!緊張して損した気分。」

「お互い様だな。」

「稔も緊張して早く来ちゃった感じ?」

「大地も?」

「そう。後はもう一人の1年目が早く来て作戦練れないかなーとも思ってたw」

「わかる!僕もちょっと期待してた!でも、大地だって知っていたらもっと楽に来れたのに。」

「本当だよな。まさか稔だとは思わなかったよ。」


2人で作戦を練ることも忘れてわいわいと会話に花が咲く。


「お二人さん。盛り上がってるところ悪いけど先輩の到着だ。」

話に夢中になっていて、いつの間にか約束の時間になっていることに気づかなかった。

長身の絵になる2人が入口に立っている。

2人とも180㎝近くあるんじゃないだろうか。

店員のお姉さんがぼーっと2人を見つめているのがわかる。


僕と大地は慌てて立ち上がり挨拶をする。

「こんにちは!!」


大地のペアの先輩であろう初めに声をかけてきた先輩が座るように促す。

後ろから僕のペアの先輩も中に入ってくる。


大地のペアの先輩が大地の前に、景先輩が僕の前に座った。

「とりあえず乾杯だな。飲み物注文するか。お前たちは未成年だからお酒はダメだからな。」

「あっ!僕頼みます!」

慌ててメニュー表を開き注文をとる。

「ありがとう。俺たちはビールにするか?景はそれでいいか?」

「ああ。大丈夫だ。」

「僕はウーロン茶にするけど、大地はどうする?」

「俺はコーラで。」

「わかった。頼みますね。」

テーブルに設置されているボタンで店員を呼び、ドリンクの注文をする。

ドリンクが来る間にフードメニューを開き何を食べるかの話が始まる。


「腹減っているか?」

「すいています。」

今日は1日緊張していて、普段にくらべてあまり食べられていない。

お腹がすいているか聞かれてお腹が空腹を訴えてくる。


「食べたいものあるか?」

「えっと・・・。」

どうしていいのかわからずメニューとにらめっこしてしまう。

「お前は?」

大地の先輩が大地に空腹と食べたいものの確認をしている。

「すいてます。」

大地もなかなかメニューを決められないでいる。

見かねた先輩たちが

「適当に頼んでいいか?

アレルギーとか食べられないものってあるか?」

僕も大地も

「大丈夫です。お願いします。」と伝える。


ドリンクが運ばれてきて、先輩達が食事の注文をしてくれる。

食べ盛りの男4人だ。先輩達は次々に注文をしており、テーブルに乗るのか心配になる。


「ドリンク来たし乾杯するか。」

注文を終えると、大地の先輩の音頭で乾杯と自己紹介が始まった


*****


「まずは俺たち先輩組から自己紹介するな」

大地の先輩が先導を切って自己紹介をしてくれる。


「経済学部3年、河野章。20歳。12月生まれ。

出身は東京。出身校は〇▽高校。今はサッカー部に所属している。

大澤のペアだな。よろしくな。」

大地の先輩あらため河野先輩は韓流スターみたい。

髪はきれいにセットされており、顔つきもきれいな印象が強い。

話し方や表情と本来もつ先輩のきれいな顔つきにギャップがある。

にっこり笑った顔を見ると何人もの女の人がこの人に夢中になったんだろうって思ってしまう。長身で細身。ちょっと軽そうだけど面倒見がよさそうな感じの先輩。


「経済学部3年、広瀬景。20歳。10月生まれ。

 出身は東京。出身校は章と同じだ。合気道をしている。

 成美のペアになる。よろしく。」

河野先輩の自己紹介に合わせて広瀬先輩も自己紹介をする。

合気道の影響ががっちりした体格。筋肉がつきすぎず、細すぎずうらやましい。

前髪がアップされて、綺麗な額が見える。日本人離れしたはっきりとした顔立ちをしている。


「俺たちは高校時代からの友人で今は大学の学部も一緒ってわけだ。最初はペアと2人っきりだと緊張するかなーと思ってこんな感じにしてみた。」

2組のペアが一緒に食事をする理由を簡潔に伝えられる。

「色々考えて準備してもらってありがとうございます。お店も予約してもらってすいません。」

大地が河野先輩の説明に対してお礼を言い、自己紹介を始める。


「俺は商学部1年、大澤大地です。18歳。8月生まれです。

 出身は熊本で今は構内の寮に住んでいます。出身高校は〇〇高校です。

 ずっと水泳をしていたので水泳部に入ろうかなって思ってます。

 よろしくお願いします。」


「僕も商学部1年です。名前は成美稔です。19歳で4月生まれです。

 出身は愛知です。都内の伯母のマンションで一人暮らしをしています。

 出身は▽▽高校です。部活とかは特にしていなくて、家の近くのパン屋さんでバイトする予定です。」


自己紹介が終わると景先輩が

「4月生まれでもう19歳ってことはもう誕生日が来たのか?」

「はい。僕の誕生日4月2日なんです。」

僕の誕生日は4月2日。新学期始まってすぐに誕生日が来るため、まわりと仲良くなる前に誕生日が過ぎてしまうのだ。

「じゃあ。少し遅くはなったけど誕生日おめでとう。来年はお祝いをしないとな。」

「ありがとうございます。」

その言葉にこの先輩と今後交流が続くことになるのだと実感する。


「それってオリエンテーションの日だよな。早く言ってくれたらジュースぐらいおごったのに。」

大地もここぞとばかりに言ってくる。

「初対面の人に今日僕誕生日なんだって言えないでしょ。」

「確かに。」

大地と2人でふふふふっと笑う。

仲良く2人で笑いあっていると、

「2人は同じ学部だし知り合いなのか?」

と、広瀬先輩から質問がきた。

「はい。オリエンテーションの日に仲良くなって、今は一緒につるんでます。」

「へー。偶然だな。先輩同士も友達で、後輩同士も友達だったってわけか。」


その後、食事がきてたわいもない話で盛り上がった。

河野先輩も広瀬先輩も気持ちの良い先輩だった。

広瀬先輩は一見、取っつきにくく口数も少ないため怖そう印象を受けるけど心の奥はすごく優しそうな先輩だった。


「あー安心した!俺のペアの後輩が大地でよかったよ。」

突然、河野先輩が声を上げた。

「俺たちも緊張していたんだぞ。初めてのペアの後輩だからな。変な奴だったらどうしようってな。」

確かにそうだ。先輩たちも今後の2年間が決まってしまう。去年までは後輩の立場だっただろうしなおさらだ。


「俺も河野先輩でよかったです。どんな先輩が来るのかってドキドキしてました。」

「敬語いらないぞ。それに苗字じゃなくて名前でいいぞ。」

「章先輩。じゃあ、遠慮なく。めっちゃ安心した。」

「商学部と経済学部だと共通の講義も多いし何かあったら声かけろよ。暇だったら遊びにも連れ出してやるよ。寮も一緒みたいだしな。」

「先輩も寮なの?よろしくね先輩!」


隣で河野先輩と大地が盛り上がっている。

景先輩はどうだったのだろう。僕でよかったのかな?

上目づかいになりながら先輩を恐る恐る見上げてみる。

先輩と視線がぶつかる。

「俺も稔でよかったよ。」

フッと笑いながら僕を安心させるように先輩が言う。

「稔も楽に話してくれてかまわないからな。それに苗字じゃなくて名前でいいからな。」

楽にといわれても僕は大地みたいにすぐに切り替えることはできない。

「ありがとうございます。僕も先輩でよかったです。徐々にでお願いします。景先輩。」

顔を真っ赤にしながら先輩にこたえる。先輩はそんな僕をみてクスクス笑っているようだ。


「何かお前たちはお見合いしてるみたいだな。」

隣でみていた河野先輩がちゃちゃを入れてくる。

「何言ってんだお前は。」

景先輩があきれた顔をして河野先輩に注意をする。


*****


しばらくたち、寮の門限もあるし、夜も更けて時間も遅いため解散することになった。

食事代は先輩2人が奢ってくれて、僕は申し訳なく思った。

大地は能天気によろこんでいたけど。


今日、使っていた居酒屋は大学の近くのお店だった。

大地と河野先輩は構内の寮なため2人そろって歩いて寮に帰っていった。


景先輩と2人残されて沈黙の時間が続く。

今日は遅くなるとわかっていたため、自転車ではなく電車できていた。

ここからだと電車で2駅になる。

景先輩に

「今日はありがとうございました。僕の家はここから2駅のところにあるのでこのまま電車で帰ります。」

「どこの駅なんだ?」

「××駅です。」

「後輩をこんなに遅くまで連れ出したんだし送っていくよ。」

「僕も男ですし大丈夫ですよ。ご迷惑ですし。」

「大丈夫だ。俺の家は隣の駅だから歩いて十分帰れる距離だから。」

「えっ。近いんですか?」

「俺は実家だけどな。稔の最寄り駅の一つ先の駅だな。」

「でも・・・。」

「とりあえず電車乗るか。」

「はい。」


結局、景先輩は僕の最寄り駅で一緒に降りてしまった。

「こっちです。」

僕は観念して自宅までの道のりを歩く。

駅からの距離は歩いて10分くらいなのにずいぶんと長く感じた。

特に何もしゃべることなく自宅に到着してしまった。


「先輩、ここが僕のマンションです。」

「やっぱり家からかなり近いな。たぶん歩いて20分もないぞ。」

「そうなんですね。」

「ああ。そうだ。学内メールじゃなくて連絡先を教えてくれ。ラインあるか?」

「はい。」

「QRコード出してくれ。」

「わかりました。」

僕がQRコードを出すと先輩がさっさと登録をしてしまう。

「また連絡する。おやすみ。」

そういって先輩は、優しく笑い暗闇に消えていった。


僕はぼーっと先輩の背中を見ていた。

はっと気づき自宅に戻る。

今のはなんだ?

先輩に連絡先を教えただけなのに、河野先輩の「お見合いみたいだな」という言葉が頭をよぎった。


初の顔合わせは無事に終了した。

これから長い付き合いになる相手との出会いは緊張する。

ゆっくりお風呂にはいって、明日は土曜日だしゆっくり寝よう。




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