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運命の相手  作者: maiko
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景の思い①

俺、成瀬景が成美稔に恋をしたのは3年も前にさかのぼる。

部活の練習試合で他校を訪れた時だった。


俺はその練習試合になかなか集中できなくて試合の途中でケガをしてしまった。

大したケガでもなかったし一人仲間たちとの輪から抜け出してぼーっとしていた。

高校最後の練習試合。

卒業後の進路ももう決まっている。

そして大学卒業後の進路ももう決まってしまっている。

高校卒業まぢかに突き付けられた事実に心が追い付かない。

わかってはいた。小さいころから何度も言われてきた事実。それが現実になろうとしている。

大学に入ったら会社の事業を少しづつ手伝いはじめ20歳をすぎたら本格的に事業への参加が決められていた。経営者として大学卒業の資格は大切であり大学に進学し勉強をしながら会社の手伝いを行っていくこととなっている。

あと自由にできるのは約2年。

大学を卒業することには結婚相手も決められているのではないだろうか?

別に他人に興味はないし。会社のための結婚であればだれでもいい。

そんなことを考えながら木陰に腰を下ろし血を流している額をそのままに座り込んでいた。


「ケガしてるんですか?大丈夫ですか?」

突然声をかけられる。

振り返ると幼さを残す少年が経っていた。

昔からこの容姿のせいか女でも男でもいろんな人物が近づいてきた。

今回もまた邪な思いでケガの手当を口実に近づいてくるのであろうと冷たく接する。

「なんでもない。ほっておいてくれ。」

冷たく言い放つとその少年はひるまずに。

「頭のケガは甘く見ないほうがいいですよ!ちょっとここにいてください。」

俺はいきなりその少年に叱られ戸惑う。

少年は俺にここにいるようにいうと走ってどこかにいってしまった。

そのままこの場にとどまり少年が戻ってくるのを待つ。

「お待たせしました。保健室から手当の道具借りてきました。」

その手には救急箱が握られている。

「先輩って他校の生徒さんですよね?今日合気道部の練習試合でしたっけ?」

「ああ。」

「ちょっとしみると思いますよ。動かないでくださいね。」

その少年は俺の顔を覗き込むようにしてケガの状態を確認する。

「ちょっと切れただけですかね。でも頭はこわいのでちゃんと病院にいってくださいね。

これは応急処置です。」

そういうと容赦なく傷口に消毒薬を塗り込む。血液が固まっていたため多少強めだ。

「いてっ!!」

「痛くて当たり前ですよ。消毒してるんだから。」

とケラケラと笑いながらテキパキと処置を行う。

「手際いいんだな?」

「僕兄が2人いるんですけど、2人とも格闘技していてよくケガして帰ってくるんです。なので僕はいつも看護師役なんです。」

「兄弟仲いいんだな。」

「そうですね。大好きなお兄ちゃん達です。」

素直に兄のことを大好きだと嬉しそうに告げてくる少年に目を奪われる。

この損得なしに話かけてくる少年を純粋に可愛いと思った。

少年の首元を見ながら手当が終わるのを待つ。


「はい。終わりです。」

「ありがとう。」

「いいえ。それよりも戻らなくて大丈夫ですか?」

「ああ。そうだな。」

「今度からケガしたらすぐに手当してくださいね。」

「わかった。」

そう返事をすると少年は「じゃあ」といって走り去るとする。


「おい!名前は!?」

走り去る少年にその声は届かなかった。

損得の関係で人と付き合えばいいと思っていた。

あの少年がほしい。そう思ってしまった。

一目ぼれだったのかもしれない。


この時からこの少年とどうやって近づくかを一番に考える日々が待っていた。

それにあの少年を手に入れるためには誰にも文句を言われない実力をつける必要がある。

目標ができた。

大学に進学したら信用を得られるように勉強に事業に頑張らないといけない。

いつかあの子を手に入れたときに誰にも文句は言わせない!!


*****


すぐにあの少年の名前はわかった。

成美稔

名前をつぶやくだけで心が躍る。


練習試合の相手の高校の生徒だとわかっていたため片端から情報を集めた。

そしてあの時の会話からヒントを見つけて探し出した。

写真で確かめたときには幻じゃなかったとわかり安心した。


そして稔の兄2人はラッキーなことに俺の通っている大学の卒業生だった。

稔もこの大学に進学してくる可能性は高い。

俺が3年生になったときに1年生として入学してくるはずだ。

その時が楽しみだ。

大学の先輩と後輩といった立場であれば接触することは可能だろう。


*****


時が流れ稔が大学に入学する時期となった。

確実にこの大学に進学するかはわからなかったが、謎の自身があった。


「ついにこの時か。入学してくるのかはっきりするな。」

隣で章が話しかけてくる。

章とは小さい時からの知り合いで、章も大学を卒業したら家の事業を継ぐことが決まっている。同じ境遇の数少ない気軽に話せる友人だ。

3年前の稔と出会った日、帰宅後に俺は興奮したように章に電話していた。

章は俺の行動にびっくりしていたが稔を探すのに協力してくれた。

そしてこの2年間一緒に待ち望んでくれていた。


俺と章は入学式の運営委員として入学式に参加していた。

運営委員は各学年の成績上位者が中心となって形成されている。

そして運営委員の特権は新入生の名簿を入手できることだ。

入学式当日の朝、教授陣より入学者名簿を渡される。

俺は食いつくように稔の名前を探した。

学部ごとに分かれているためなかなか見つからない。

商学部の名簿にたどり着いた。

「いた!」

成瀬稔の名前を見つけた。やはりこの大学に入学してきていたのだ。

ようやく出会える喜びに震えた。


「いたのか?」

「ああ。」

「よかったな。後はどうやって出会うかだな。」

「そうだな。」

俺は商学部の学生が座る席を見渡した。

そこには出会った時より幾分成長した稔が座っていた。

緊張しているのか手を握りしめて座っている。

話しかけたい!抱きしめたい!欲望を必死に抑える。

これからはたくさん時間がある。

ゆっくり稔の中に浸食するように。

稔の中で俺がそばにいることが自然な事のように誘導してやる。

心の中で近い今後の計画を練り始める。


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