怪我
景先輩と連絡を絶ってからしばらく経過した。
あと1週間で夏休みといったところで僕の不注意からケガをしてしまった。
階段で足を踏み外してしまい捻挫をしてしまった。
痛みはあるが、靭帯が伸びてしまっただけだったので固定すれば時間がかかるが足を引きずりながら動くことはできる。
2週間もすれば痛みも引き自由に動けるとのことだった。
最初は長兄の麻兄が家に来いと大変だったが、自分の責任だし何とかできると断った。
バイト先にも迷惑をかけてしまった。
最近は講義とバイトばかりでゆっくりしていなかった。
少し気持ちも落ち着いたしこの際だから身体を休めようと思う。
大地達にグループラインで捻挫してしまったため講義を休む旨を伝えた。教授陣にも大学を通して連絡を入れてもらい、出席の代わりに簡単なレポートで対応してくれることになった。
この2週間はゆっくりできると思ったがレポートに追われることになりそうだ。
でもこの2週間が終われば本格的に夏休みを楽しめる予定だ。
お盆は兄たちと一緒に実家に帰る予定としている。
ケガが治ったら大地達を遊びに行く約束もしている。
このためにバイトをしていたのではないがバイト代もだいぶたまったため遊び放題だ。
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ケガから2日たちだいぶ痛みも落ち着いた。勝手もわかってきたため家の中ではわりと不自由なく動き回ることができるようになっている。
昨日は3人がお見舞いに来てくれた。買い出しに行けない妥当といろいろと買ってきてくれたのだ。こんなとき友達のありがたみを感じる。
明後日は次兄の恵兄が様子を見に来てくれることになっている。
僕は家族にも友人にも恵まれており幸せだと思う。
机に向かってレポートを記載していると玄関のインターホンがなった。
オートロックのインターホンは鳴っていない。
「誰だろう?今日は誰か来る予定はなかったはず。」
不審に思いながら玄関のインターホンの対応をする。
オートロックにはカメラがついているが玄関のインターホンにはカメラがついていないため誰が来たのかわからないのだ。
「はい?どちら様ですか?」
『俺だ。』
聞き覚えのある声にはっとする。
ずっと避けてきた僕の大好きな声。
「どうしたんですか?」
『ケガをしたと聞いて気になってきたんだ。開けてくれるか?』
「今部屋が汚いので・・・。」
『開けてくれるまでここにいる。』
景先輩は帰るような様子はみられない。そのまま先輩が入口に立っていたら近所の人に不信に思われる。
意を決して迎え入れる準備をする。
「ちょっと待っててください。」
どうしよう。
久しぶりに先輩の声を聴いたらドキドキしてくる。
諦めていたはずの恋にまた火がともる。
その火に気づかないふりをしてかぶりを振る。