神との話
王が勇者召喚する事になった理由を改めて説明し始めた。
ある日、魔王が誕生し魔物が生まれ、ダンジョンと呼ばれるものも誕生した。
世界は混乱に陥り、伝説に登場する勇者の存在を欲していたが、信託により「勇者となるはずの者は既に亡く、この世界に新たに勇者が誕生することはない」と言われた為に異世界から呼ぶ事にした。
長々と説明していた王の話を一切聞くことなく、娘しか見ていない父に王と一緒に来ていた騎士が不敬罪だと剣を突きつけた。
それを見た私は魔力を暴走させていた。
次の瞬間、見知らぬ場所にいて魔力も落ち着いていた。
「落ち着いていたかい愛し子?」
「えっ、パパはどこ?」
「第一声がそれかい?君のお父さんは後ろにいるよ」
混乱している頭で言われるまま後ろを見ると、父が笑いながらこちらを見ていた。
急いで父の元に行く。
近くに居たのに気付かなかった恥ずかしさを父に無言でぶつける。
「ふふ、ほっぺた膨らませても可愛いだけだよ」
そう言いながら、膨らませたほっぺたを突かれる。
フスー、と空気が抜ける音がなると笑けてくる。
父と笑い合っていると。
「仲良くしているとこ悪いけど、そろそろ説明させてくれない?」
姿は見えないけど、どこか懐かしさを感じる声がした。
その声の持ち主はこの世界の神だと名乗り、いきなり私達をこの空間に呼んだのは私が魔力暴走を起こしたからだと言う。あのまま魔力を暴走させたままいたら幼い私の体がもたなかっただろうと言われた。
「あの、えっと、助けてくれてありがとうございます。でも何故助けてくれたんですか?」
「それはね、君が愛し子だからだよ」
神が言うには私の前世は神の加護を持ち勇者となるはずだった。それをあの聖女の適性を持った編入生が運命を変えた。編入生は前世の記憶を持っていた為本来の性格と異なっていた。
「愛し子、君は本来の運命でも幸せにはなれなかった。だから君の次の人生は幸せになれる所へ送った、君のお父さんの所にね。愛し子、今の人生は幸せ?」
話を聞いている間ずっと繋いでいた父の手を握りながら神に言う
「幸せだから心配しなくていいよ。私をパパの所に連れてきてくれてありがとう。」
それを聞いた父も私の手を握り返しながら
「沙希を幸せにするのを誓うよ。それと俺の所に連れてきてくれてありがとう。」
「ふふ、なんだか結婚の挨拶されてるみたい。こちらこそありがとう。」
姿は見えないけど、神は嬉しそうに笑っている気がした。