今世の日常
現代日本に冤罪で死刑になった少女の記憶がある女の子がいた。
その女の子は最近になってその記憶を思い出した。
最初の頃は夢で見ていたがある日突然夢などではなく自分の前世の事だと理解した。
「どうしたの沙希?具合悪い?」
女の子いや、沙希に声をかけたのは今世の父、藤堂希夜だ。
沙希は父になんでもないと伝え、父を観察していた。
父は娘が言いたくなさそうなのを見て視線を戻した。
2人は今、遅めの朝食の準備をしていた。
彼ら親子は高級マンション最上階に住み広いその部屋には2人しか居ない。
母親や兄弟はいない、もちろん出かけている訳ではない。
沙希の物心つく前からいない。
そのため、家事は親子2人でやっている。
沙希はまだ5歳なので出来る事は限りがあるがお手伝いしている。
娘の父親観察は朝食を食べていても続く。
父は少し困ったように笑い娘にデートのお誘いをする。
「ねえ、沙希パパとデートに行かない?」
沙希は条件反射のようにとびっきりの笑顔で頷こうとしたが、悩む。
父とのデートは魅力的だがしかし前世について言おうかと考えていたなんて言えないしまるで自分がデートの催促をしていると思われるのもイヤだが心のてんびんは父とのデートという名のお出かけに傾いた。