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プロローグ
その少女は位の高い家に生まれ、将来の王妃を約束されていた。
世の女性の憧れと嫉妬の的だった。
それが少し変わったのは聖女と呼ばれた彼女が来てからだった。
「お前との婚約を破棄する!聖女を傷つけた罪は重い。」
そう言って私の婚約者だった人はその聖女とやらの肩を抱き、私に死刑を言い渡した。
私が何を言っても、最初から誰も聞いてくれはしなかった。
私の人生は何の為にあるのか誰の為にあるのか、何も分からない。
人生を終えた私は身軽だ。
ふわふわと漂う私を掬い上げた誰かが言う
「可哀相な愛し子、次の人生は幸せにね」
暖かい大きな手に導かれて進む。
進みたくない、私はもう疲れた。
次なんていらない。もう寝たい。
立ち止まった私をその手は優しく押し出す。
「大丈夫だよ。愛し子、次の人生は君を待っている人がいるから」
何かに吸い込まれるように私は意識を落とした。