男性と涙
2話4部です。
座って、、、
彼に付いて行くと、席に案内された。
『すいません。少々お待ちください。』
そう言うと、少し遠くに座っている客の方に歩いて行った。
私は、カフェなどの商業施設に入った事が無い。
親が仕事で頑張っているのに、私だけ贅沢をしないと決めていたからだ。
カフェという存在は知っていたが、何をするところなのか見当がつかなかった。
『お待たせいたしました!お冷です!ご注文をする際には、私を呼んで下さいね!』
華さんが私にお水を持ってきたようだ。
妙に暗いけど、なんだか温かい雰囲気の店内で、居心地が良かった。
その時だった。
『その時どうすれば良いかわかんなかったんだよ!!!!』
私は、声のあった方向に目を向けた。
声を上げたのは、オーナーが対応していた中年の見た目をした男性だ。
先ほどから何やら話していたようだった。
なにやら喧嘩しているようだ。
私は、その喧嘩に耳を傾けた。
『お前に何がわかるんだよ!』
男性は、オーナーさんに水をかけた。
それでもオーナーは、笑顔でこう答えた。
『分かりますよ。嫌でも。』
オーナーから放たれた言葉は、妙に重みを感じた。
彼は続けてこう話した。
『その時生きることが辛くても、味方がいなくても、憎まれても、嫌われても、死にたくなっても、生きていかなければならないのです。』
そして彼は続けてこう話した。
『自殺というものは、これからの自分の可能性を捨てるということです。死んだら、何もかもが終わってしまうんです。』
次に口を開いたのは、中年の男性だった。
『そんなことわかってる。だけど、なにをすれば良いかわかんなかったんだよ!』
そして、オーナーはこう話す。
『あなたは、本当に考えたのですか?』
『ああ、考えたよ。』
『では、第三者に意見を求めましたか?』
『!?』
中年の男性は、目を丸くした。
『どうなんですか?答えて下さい。』
『え、いや、、その、、』
中年の男性は、オロオロとして震えている。
『あなたには、小学生の頃から女性の幼馴染がいたはずですが、その人には相談したのですか?』
『何故、それを、、、?』
中年男性の震えが一層増した。
『何故あなたは、幼馴染に助けを求めなかったんですか?』
男性は震えを止めて、話した。
『彼女には、心配をかけたくなかったんだよ。僕が初めて恋をした相手なんだよ。この気持ちを伝えるために、働いて、稼いで、彼女を安心させてあげたかった、、、、だけど、』
続くようにオーナーが話した。
『入った企業がブラック企業で、労働基準法を軽々と破り、休みも取れない、退職もできなくて、辛い現実から逃げるようにして自殺したと、、、そうですね?』
男の目は、喪失感のような目をしている。
『・・・はい』
私と似ている。自殺した理由は違うけど、私のようにつらい経験をしていた事が、目で分かった。
あれは、昔の私のような目だ。
『何が幼馴染だ、、何が恋人だ、、、』
オーナーが呟くのが聞こえた。
『くだらねぇ』
『は?』
『くだらねぇ。くだらねぇ。くだらねぇ!』
オーナーは、丁寧語が無くなっていた。
オーナーは、口を開けた。
『迷惑をかけない事のどこが恋愛だ!本当の恋人は、迷惑を掛け合うもんだろ?それでも、相手のことを信じる。2人で悩みを共有して共に助け合う。だって、パートナーじゃないか。人生、どんなことがあっても乗り越えていく一生の仲間じゃないか。1人で乗り越えようとしても登れない壁があるなら、ゆっくりでも良いから手を取り合って生きていく。それじゃダメなのか?最愛の人に悩みを言うのがそんなに怖いか?ならそれはもう、“恋愛ごっこ”だ!』
『!?』
男性は、涙を流していた。
その言葉は、私にも響いた。。。
私には、母親が居た。
なのに、笑顔を作って、辛さを隠して生きてきた。
あの時、話していれば何かが変わったのかな、、、と考えた
私は“親子ごっこ”をしていたのかもしれない。
私も涙が出てきた。
『もう1つ』
オーナーが席を立った。
『君に見て欲しいものがあります。』
オーナーは、テレビの電源を付けた。
そこに映っていたのは、
『さな!?』
男性は、画面に映っている女性の名を口にした。
『このテレビは、自殺をした人たちが元々住んでいた世界を映す事が出来ます。干渉は出来ませんが、声ぐらいなら聞くことが出来ます。聞きますか?』
男性が好きだった人が映っているのだろうと察した。
そして、画面の女性は、こう語った。
『けんちゃん、、、なんで自殺なんかしたの!?なんで私を頼ってくれなかったの!?辛かったなら言ってよ!!そんなに私が頼りなかったの!?』
女性は、泣き崩れていた。
『、、、ごめんよ、さな、、、』
男性も涙を堪えるのに必死のようだ。
だけど次の女性の言葉で、涙腺が崩壊する。
『ずっと好きでした』
『っ!?』
そして男性は、体が一気に脱力したように崩れていった。
決壊したダムのように涙が止まらなかった。
オーナーは、向き直ってこう言った。
『自殺なんて、なにも生みません。苦痛から逃れるために何もせず、行動をしない、考えもしないのは、ただの甘えです。神様が解決してくれるなんて、絶対にありません。人間は、誰だってチャレンジャーです。この荒波を超えた先に、ご褒美が必ずあります。実際あなたには、まだ選択肢が複数ありました。自殺なんてしなければ、想い人から、彼女になっていたかもしれません』
男性は、ずっと泣き崩れたまま動かない。
数分後、椅子に戻り口を開いた。
『オーナーさん、お願いします。さなと、お話をさせて下さい!!!!』
その言葉を聞いた瞬間のオーナーの反応が早かった。
『それは、なりません。死んだ人たちはもうあの世界には、干渉できません』
『頼むよ!この通り!』
男性は、椅子から降りて土下座をしていた。
オーナーが怒る、、、かと思ったけど、、、
『私だって、干渉できる方法があるなら知りたいですよ・・・』
彼は、笑っていた。
また、あの目だ
喪失感のような、そんな目をしている・・・
オーナーにも、そんな過去があるのだろうか、、、
次回は2話の5部です。
男性がとった行動は、、、?
お楽しみに。




