表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

冬童話2019

逆さ虹の森を救え

作者: たてみん

逆さ虹の森2作品目。

今度はクマのマックスが活躍するおななしです。


1作品目はこちらです。併せてどうぞ。(名前以外の関連性はありません)

https://ncode.syosetu.com/n6160fe/

ある所に「10年に一度、逆さまに虹が出来る」と言われている森がありました。

近隣の住人からは『逆さ虹の森』と呼ばれているそうです。



「へい、弱虫マックス。相変わらずデカい図体してじゃまくさいな」


そう声を掛けながらクマのマックスを蹴りつける、アライグマのウォッシュ。


「わっ。やめておくれよ、ウォッシュ」

「うるせぇ。悔しかったらたまにはやり返してみやがれってんだ」

「無理だよ、そんなの」

「か~っ、全く情けねえな。この太い足は飾りか?」


そう言ってまたマックスの前足を蹴りつけるウォッシュ。

そこへヘビのネークが通りかかりました。


「やあウォッシュ。またマックスにちょっかいかけているのかい?」

「なんだよネーク。なんか文句あるのか?」

「いやいや。よくそんな腹の膨らまないことに精を出しているなと感心しただけさ」

「ははっ、確かにネークにとっては食事以外はどうでもいいよな」

「そういうこと。あ、そうそうマックス。さっき新しいハチの巣を見かけたよ」

「え、本当かい。わぁありがとう」


ハチミツが取れるハチの巣はマックスの大好物です。

新しい巣の情報に、さっきまで蹴られてたのも忘れて大喜びです。


「ただね、場所はおんぼろ橋を渡った向こうさ」

「えぇ~それじゃあ無理だよ」


おんぼろ橋は、この森の川に掛かる唯一の橋で、今にも壊れてしまいそうなくらいおんぼろな橋。

ヘビのネークなら余裕で渡れても、クマの体重は支えられそうもありません。

それを聞いて再びはやし立てるウォッシュ。


「へへっ。やっぱりデカい図体は邪魔なだけだな」


そう言ってまた、マックスをぺしぺしと叩き始めました。

そこへいつもは陽気に歌を歌ってくれる、コマドリのリュートが血相を変えて飛んで来ました。


「みんな大変、大変よ!!」


いつもと違うその様子に、森のみんなが集まってきました。


「落ち着けリュート。一体何が大変なんだ?」


みんなを代表してウォッシュが訪ねます。


「大変なの。何でも西から巨大な雨雲がこっちに向ってきてるんですって!」

「なんだ雨雲かよ。雨が降るくらいいつものことじゃないか」

「違うのよ。全然違うの。今回のは昼間でも空も地上も真っ暗になってしまう程で、風ももの凄いんだって!!」


身振り手振りを交えて説明するリュート。

でもみんな中々まともに取り合ってくれません。

そんな中、ひとりだけ、マックスだけはオロオロしていました。


「大変だ。そんな大雨が来たら、ねぐらは水浸しになっちゃうし、大好きなキイチゴも風で飛ばされてしまうかもしれない」

「まったく、相変わらずの弱虫っぷりだな、マックスは。そんな大したこと無いって」

「そうだね。俺が生まれてからそんな雨来たことないし。今回も大したことないよ」

「でもでも、昔お母さんが雨で大変な目に遭ったことがあるって言ってたんだ。だから僕、今のうちに出来る事をやっておくよ」


そうして駆け出していくマックス。

ウォッシュもネークも、そんなマックスを肩をすくめて見送りました。


「あなた達も忠告はしたからね。私は他のみんなにも伝えてくるわ」


リュートはそう言い残して飛び去って行きました。


「けっ、あいつらなにをそんなに慌ててるんだか」

「だな。俺はとりあえず今日のご飯を探しに行ってくるよ」

「ああ、じゃあな」


そう言ってウォッシュとネークも別々の方へと歩いて行きました。




そして翌日。

リュートが言っていた雨雲が逆さ虹の森を覆い尽くしました。

朝になっても明るくならず、雨はザアザアと轟音を立てて降り続け、物凄い風が吹き荒れて居ます。時々雷まで轟きます。

あまりの酷い天気に誰ひとり外に出ることも出来ず、嵐が過ぎるのをただただ待つばかり。

でも嵐は次の日になっても、その次の日なっても止む気配はありません。

そして、突然森に轟音が響きました!


ゴゴゴゴゴッ!


「わわっ、一体何事だい!?」


その音にびっくりして、マックスがねぐらから顔を出しました。

マックスの目に入ったのは、いつもの緑の森とは違う茶色の大地でした。


「これはまさか、お母さんが言ってた地崩れが起きたんだ!

大変だ。みんなのねぐらが崩れた土に埋もれてしまってる!!

早く助けないと」


マックスは嵐の中に飛び出しました。

風はごうごうと吹くのも何のその。

大きな体にものを言わせて駆け抜けました。

そして地崩れが起きた場所にたどり着いた時、そこにはキツネのフォックが居ました。


「やあマックス。君も来たんだね!」

「うん。急いで皆を助けよう!」

「ああ!」


ふたりは崩れた地面の上を記憶を頼りに走ります。

フォックが最初にたどり着いたのはネークがねぐらにしていた穴の近く。


「確かこの辺りのはず。

おーい、ネーク!聞こえたら返事をしてくれ!」

「ぉーぃ」

「聞こえた!待ってて、今助ける」


フォックは声の聞こえた所を懸命に掘り返します。

でも小さな体のフォックでは中々穴は掘れません。


「マックス!済まないが、こっちを手伝ってくれ!」

「分かった!」


急いで駆けつけたマックスが、その大きな手でガシガシと穴を掘ります。

みるみる穴は大きくなり、無事にネークのねぐらが顔を出しました。


「ネーク、無事かい?」

「ああ、助かったよ。しかし、これからどうするか」

「僕のねぐらの場所は分かるかい?

あそこはまだ土砂崩れも起きていないし、食べ物も多少は保存してあるから、そこに行っててくれよ」

「ありがとう、マックス。

だけど、一宿一飯の恩義を無為に頂く訳にはいかない。

俺も何か手伝わせてくれ」

「分かった。

うーん、じゃあ、ネークならこの風の中でもスイスイ動けるでしょ。

風に飛ばされちゃう身体の小さなみんなは身動き取れなくなってると思うんだ。

その子達を僕のねぐらに連れて行ってよ」

「よし来た!そっちは任せてくれ」


そう言ってネークは荒れた地面をするすると泳ぐように駆け抜けていきました。

それを見送ったマックスにどこからか声が届きます。


「おーい、だれか~たすけてくれ~」

「!!この声はウォッシュだ!!」


マックスは一目散に声のした方に走ります。

そこには大きな岩が積みあがっていて、その奥にウォッシュの姿がちらりと見えます。


「ウォッシュ!」

「マックスか。すまねえ、見てのとおり閉じ込められちまったよ」

「怪我は無い?」

「ああ、何とか大丈夫だ。それより俺じゃあこの岩はどうにもならねえ」

「良かった。僕が岩をどかすから、少し下がってて」

「分かった!」


そうしてマックスは何十キロもある岩を持ち上げては脇へとどかしていきます。

ようやくウォッシュが出てこれるだけの穴が出来たとき。

岩で支えられていたのか、上の方から土砂が崩れてくるではないですか。


「まずい!!」


咄嗟にマックスは自分の身体で壁になるようにして土砂を防ぎました。


「ウォッシュ、今の内だ!

そこから出てくれ」

「うわっ、分かった」


慌てて飛び出すウォッシュ。

それを見てマックスも土砂から身体を離します。


ガラガラガラッ。


「ふぅ、危なかったよ」

「助かったぜ、マックス!

あのまま居たら生き埋めになっちまってた所だ」

「無事で良かったね。そうだ、僕のねぐらはまだ大丈夫だからそっちに避難しておいてよ」

「ああ。マックスはこの後どうするんだ?」

「僕は……」


マックスが答えようとした時、空が光ったかと思うと、雷が近くの木に落ちました。


「きゃー誰か助けて!!」


リュートの悲鳴が聞こえます。

雷が落ちたのは、リュートの巣の隣の木だったのです。

雷で燃え盛る木が今にもリュートの巣のある木に倒れて来そうです。


「うおぉぉ!!」


全力で駆け付けたマックスが、炎を物ともせずに燃えた木に体当たりを食らわせます。

そのお陰で、燃えた木は明後日の方向に倒れました。

でもまだ安心は出来ません。

その火が周りに燃え移ったら大変です。

マックスは手で叩いたり、全身で押しつぶすようにして火を消していきます。


「お、おい。マックス。そんなことしたらお前、大やけどを負っちまうぞ!」


心配になったウォッシュが声を掛けますが、それでも止まらずマックスは燃える木に立ち向かいました。

その甲斐もあって、火は周りに燃え広がることなく消し止められました。

しかし、休む暇もなく、マックスの元には次の助けを求める声が聞こえてきます。


「ウォッシュ!リュートの事をお願いね」


そう言ってマックスは駆け出して行きました。

それを呆然と見送ったウォッシュは、はっとしてリュートの元へ向かい、一緒にマックスのねぐらに避難するのでした。


嵐は夜更けまで続きました。

マックスもその間、救助活動をずっと続けて、何とか無事に森のみんなを助け出す事が出来ました。




そうして、嵐は過ぎ去りお日様が顔を出しました。

ヘトヘトになったマックスはその場に座り込んでしまいました。


そこへ森のみんながやって来ました。

口々にマックスにお礼を言っています。


「なんでぇ。どうしてそんなに凄い力があるのに、いつも俺にやられてばかりなんだよ」


ウォッシュがいつもの憎まれ口を言いました。

それにマックスは笑って答えます。


「僕は力が強すぎるんだよ。遊びでもやり返したりしたら大怪我させちゃうよ」

「ふふっ。マックスは優しすぎるんだね。これじゃあ、私だけじゃなく、マックスもお人よしの仲間入りだね」


隣にやって来たフォックがマックスの横に転がりながら笑います。

そこへリュートの慌てた声が響きました。


「みんな大変大変、空を見て!」


その声にみんなビクッとしました。

まさか、また嵐が来るのでしょうか。


いいえ、そうではありませんでした。

空には綺麗な虹が掛かっていたのです。

そう、逆さまの虹が。


「綺麗だね」

「うん、きっと頑張ってくれたマックスへのご褒美だね」

「なるほど。お空も粋な事をしてくれるね」


みんなで笑い合いながら、ずっと虹を眺めているのでした。




最初に出したハチミツを出し損ねました。

元々の予定では、ウォッシュが助けて貰ったお礼に、顔を腫らしながら取ってきて

「あんな恐ろしい蜂の巣を取って来れるなんて、マックスは凄いんだな」

みたいな話を入れようかと思ったのですが。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] マックスは本当は強い子なんですね♪♪
2019/01/25 18:27 退会済み
管理
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ