進化 微かな星影
何千年か前に、すでに地球は滅んだと言われた。
私の異常に気づいた機械に連れられて、この地のお偉いさんとやらに会わされた。
彼らは機械生命体というものらしい。
「君のような存在は、初めてだよ。」
地球に興味を持った彼らは、地球復興を目指しているのだという。
生物の体ならある程度の復元に成功したが、心や知能は芽生えなかった。
それなのにどういう訳か、私という存在が誕生した訳である。
「しかし原因がわからないのが残念だな。」
足が壊れて倒れたというキッカケはあったのだけれど、口止めされている。
たしかに、実際に試されてしまうのは可哀想だ。
そもそも私のような中途半端な存在を増やしていいかもわからない。
「では、今日から彼女は特別な存在として扱うことにしよう。今後、彼女のことは頼んだぞ。」
こうして、私を連れてきた機械は世話係を言いつけられた。
一方の私は他の人間と区別するために、地球最初の人間としてのイブという名前をつけられたのだった。
「大丈夫か?イブ。」
会見が終わってからのこと。
あの時のように、心配そうに話しかけられる。
「心配なのは、私の方だよ。」
彼は、最近の事故で腕を負傷したままだった。
機械生命体には、体の負傷を気づかせるために痛覚が備わっているらしい。
「なんであなた達には痛覚があって、私たちには無いの?」
「痛覚なんてない方がいいだろう?私たちは元から備わってたし、怪我が多いから仕方ないだけだよ。」
私には眠気もない。食欲もない。彼らいわく、わざわざ作る必要性もないからで。
それは人間がロボットに言い聞かせる言葉のようだった。
「ところでイブ、この間の話の続きを聞いてもいいかい?」
「いいけど、まずは腕を直してね。」
彼からはよく、地球の話を聞きたいと頼まれる。
童話でも音楽でも、どんな話でも嬉しそうに聞く彼と話すのが、数少ない私の楽しみになっていた。
彼は、彼らの中でも羨ましいほど人間らしい。