9話 君の事は忘れない
「ウェイン、拙い、数が多すぎる」
「何だと、8人削ってまだ居るのか」
「ざっとその5倍だ」
「嘘・・だろ・・おい、逃げるぞ」
「あ、ああ」
「おら、何時まで座ってる、動け」
「うう・・ううう・・うげぇぇぇ」
「くそ、軟弱者めが、動きやがれ」
「好きに逃げなよ、オレは良いからさ」
「お前、少しぐらい魔法が使えるからと」
「そうだぞ、相手はざっと40人なんだ」
「マナが尽きたら終わりだぞ」
「良いから行け。かく乱してやる」
「お前・・最初からそのつもりか」
「オレは初級、お前らは中級、簡単な計算だ」
「くそっ、悪い・・みんな、聞いたな」
「頼むぜ、英雄さんよ」
「お前の事は忘れねぇぜ」
「ごめんね・・ごめんね」
「君の事は忘れない」
すっかり死ぬ気だと思っているな。
人目があったら大量に殺せないからな。
そんなの見せたら目立つだろ。
さあ、とっとと逃げちまえ。
おっと、換金用の首は確保しないと。
あいつら、置いて逃げちまったし。
オレの物で良いよな、クククッ。
おっと、やって来たな、盗賊達。
こっちが1人だと思ってヘラヘラと。
囲んで袋叩きのつもりのようだが、
そんな事をしたら風の刃の餌食だぞ。
自分の周囲に風の刃を待機。
「良いんだな、近付くと死ぬぞ」
「そんなハッタリ、通用すると思うな」
「ふふん、お前1人で何が出来る」
「この、フレート盗賊団に逆らうか」
「どうせ、身の程知らずだろ」
「違いない、はっはっはっは」
「覚悟は良いな・・なら、やっちまぇ」
「「おおおーー」」
無理したな、なら、死ね・・
そして始まる大虐殺。
ウィンドカッターが縦横無尽に暴れる。
身体を切り裂いて首を飛ばす。
阿鼻叫喚の盗賊達。
ミカとの時は静かだった心がざわめく。
やっぱり、狂ってるみたいだな。
生殖行為で高まらず、人を殺して高ぶるか。
まあいい、それで心が軽くなるなら別にな。
「ばけ・・も・・の」
「何だ、まだ生きてんのか」
「お・・まえ・・なん・・か・・に」
「さっさと死ね」
「こ・・の・・フレ・・ト・・さ・・ま・・がっ」
やれやれ、ボスはしつこいな。
まあいい、直々に首を切ってやろう。
やれやれ、手間掛けさせやがって。
でかい麻袋に首を入れていく。
12ずつ4袋に詰めて総数は48だ。
装備も纏めて倉庫に入れ、お宝もいただきだ。
大所帯のせいか、財物もたっぷりだな。
金貨の袋がつらつらと置いてあるし・・
10枚入りが50って子分への報酬か。
後は金貨の入ったツボがある。
ざっと・・これはまた多いな。
みんないただきだ。
後はもう無いか。
おや、これは何だ。
これって・・おいおい。
上級冒険者のライセンスかよ。
何でこんな物がここにある。
しかも、2枚も。
戦利品のつもりか。
とんでもないな、あいつら。
元は王都近辺で荒らしてたのか。
んで、討伐を跳ね除けてここに来たと。
そんで田舎ギルドじゃ知らなかったと。
あれ、檻の中に・・子供か。
狐の獣人のようだが・・
「言葉は判るか」
「言葉、どうして」
「助かりたいか」
「・・はい」
「よし、なら助けてやる」
「ありがとうございます、ご主人様」
「お前、奴隷か」
「はい、ご主人様」
「どっちだ、男か、女か」
「男です、ご主人様」
毎回、ご主人様ってのを止めさせた。
狐の獣人の男の子か。
あの姉妹と同じ集落かな・・
相当衰弱していた。
まともに食わせてくれなかったらしい。
手持ちの食品を食わせてやる。
食って飲んで食って・・眠った。
しばらく寝かせておいてやるか。
リュックを出して中に入れて担ぐ。
麻袋の首はとりあえず倉庫の中だ。
戦利品も大量に確保して、後は帰るだけ。
けどもうあの町には戻れんな。
すっかり死んだと思われてるだろうし。
よし、ここは転居だな。