3話 本当に異世界かよ
なんとか助かったようです。
ベランダの柵に足を掛けて、まるで自殺者のようだな。
荷物満載なのが変だけど、下の奴らにはそう見えるだろう。
穴に消える瞬間、何かが頭上を通り過ぎた。
もしかして、撃たれた?
ギリギリかよ・・はぁぁ・・助かった・・のか?
《なかなか優秀だったんだけど、もう終わりかい、残念だねぇ》
穴の向こうは真っ白な空間だった。
どうやら本気で異世界に行けそうな感じである。
今、頭の中に響いた声が何者なのか。
テンプレだと神様だよな。
《そんな大層な者じゃないよ。でも、異世界ってのは本当だよ》
ふうっ、どうやら本当にあるようだ。
どうやらオレは、こいつの手先になっていたようだ。
《でも、君も商売とやらで稼いで楽しかったんだろ?》
まあ、そうだな。
食った女も両手でチョイ余るぐらい。
稼ぎでかなり裕福な暮らしができた。
最後はドジっちまったけど、あれが無ければ今でも・・
《そんな君に僕からのお礼と言うか、少しだけ恩恵をあげるよ》
恩恵ねぇ。
そいつもテンプレとやらか。
さて、何をくれると言うのかね。
《まずは魔法、そしてスキル、後は身体能力の向上か》
なんか色々くれるんだな。
それはいいが、現地の言葉は難しいのか?
《ああそうそう、異世界言語理解も付けておくよ》
催促したみたいで悪いな。
だけど、随分サービス満点だ。
そんな力を使わないといけない世界か。
そうなるときついかも知れんな。
《ふふふ・・僕の協力者にそんな厳しい現実は与えないよ》
それはありがたいな。
《なんせ君は今までに628の命を運んだのだからね》
そんなに送ったか。
半信半疑どころか、全く信じてなかったんだけど。
こんなオレに恩恵ねぇ。
ま、ありがたくもらっておくか。
《ステータス魔法ぐらいは知ってるかな?》
《まあ、知らなければ後から色々説明するけど》
《とにかく君にはいくつかのスキルと魔法を渡そう》
ステータスオープンとか言う、テンプレな魔法の事か。
《くすくす・・》
《どうやらあの世界の住人にとって、それは常識なんだね》
その手の趣味の奴らの常識だけどな。
話を纏めよう。
つまり今のオレは恩恵の付いたステータスを所持している。
このステータスと言うのは、元の世界にもあったそうだ。
だが誰もそれを使えず、また見る事も出来なかったという。
それは何故か、マナが無いからだ。
マナと言うのは世界の大気に混ざる物質らしい。
それの無い世界では魔法は使えないらしいのだ。
しかし、ステータスにはMP表記がある。
それは体内のマナが媒体となる為らしい。
そして、大気に混ざるマナで現象を発現させるからだ。
そう、彼が言っていたから本当なんだろう。
ちなみに元の世界でも魔法の行使は可能らしい。
だが、あちらの世界の大気にはマナが無いとか。
大気のマナの無い世界で生まれるとマナ無しになると。
だから触媒が無いから使えないらしい。
どうしても使いたいなら体内マナは必要だと。
それさえあれば、大気に無くても自力発動がやれると。
使用量は膨大になるけどね、と言ってた。
まあもう戻れないし、そんな話を聞いても困るだけだ。
他にも彼は本当に詳しく説明してくれた。
それはもうたっぷりと時間をかけて詳細に。
それにしても、不思議な事に聞いた事は全て覚えている。
記憶力とか全然自信の無いオレなのに。
恩恵とスキルをもらって説明を受けた後、早速にも活用した。
そして足の下に穴が開いてオレは落ちた。
そこは森の中だったけど、茂み越しに高い壁が見えた。
どうやら近くに町があるらしい。
オレはそこを目指すべく歩いて行こうと思っていた。
そうしたら後方から咆哮が聞こえたんだ。
見ればブタのような生き物が、2本足で立ち上がって吼えていた。
あれは何だと思う中、使うべきスキルとその効果が頭に浮かぶ。
オレは下に落ちている石を拾ってそいつに投げた。
落ち着いて見ると、サイトで書かれていたある魔物にそっくりだ。
オーク、だったかな。
早速、解体と思ったが、マジックボックスに入れておく。
これが最初に活用したスキルになる。
なんせ大荷物だったからな。
何だか知らないけど、ちょっとしたという割りに派手なチートだ。
なのに神じゃないとか、これすら彼にとっては些細な能力なのか?
神の定義とか知らないが、充分神様の資格はあると思うんだが。
それはともかく、異世界に着いたら鏡を見ろと言ってたな。
ボックス内に何故か姿見が入っている。
あいつが入れたのかな?
まあ、出して見てみるか・・うえっ・・
なんだこりゃ・・冗談だろ。
冴えないおっさんのはずが、15才ぐらいの少年だ。
ただそれだけなら、別に嬉しいぐらいなんだけどな。
肝心の見てくれが半端じゃない。
誰がこんな姿にしてくれと頼んだよ。
まるで中学2年生辺りが罹る病のような見てくれだ。
銀色の髪と真っ赤な瞳って、ウサギかよ。
これは痛々しいな。
なんでこんな格好になってんだ。
後は全て理想なのに、これだけで全てが台無しだ。
髪と瞳を除いた見た目はそこらの子供のようだけど、
腕とか身体とかかなりの筋肉だ。
身体能力の向上ってこういう意味か。
だけど、こんな身体にわざわざする意味は無いはずだ。
もしかしたら、何か意味があるのかも知れないな。
まあいいか。
あのまま死んでいた可能性もあるんだ。
ここはひとつ生まれ変わったつもりで・・
従者君登場。だけど、本編にはあんまり関係ありません。