13話 売れない高級素材
「青山 祐二だ」
「だからセイユウね」
「ネーミングセンスの無さは知ってるさ」
「うん、姉妹の名前も酷かったし」
「良いだろ、ミケとタマで」
「猫じゃないんだよ、狐の獣人だよ」
「ダイチは格好良いだろ」
「由来が知りたいものだわね」
「あいつ、この前、怪我したろ」
「うん、台の上で・・あはははっ」
「血が出てたから治療したけどさ」
「オヤジギャグキター」
「精神年齢はそんなもんだ」
異世界に来て1年ぐらいか。
ミカは17才、姉妹は双子で9才と。
そしてオレは・・何才になるんだ。
精神年齢は29才だけどな。
見た目は全く変化無しだ。
けど、16才って事にしとくか。
ミカ達の教育は順調で、狩りも順調だ。
ウィンドカッターの強化もやったしな。
訓練対象はドラゴン。
あれの首は簡単には切れなかった。
10枚で連続斬りを何セットやったかな。
何とか倒れたけど、強化の必要を実感した。
そして回転の強化と薄さの追求が答えだった。
単純に薄くするんじゃなくて、圧縮する。
不可視なのに高濃度のマナの塊のような存在。
それが超高速で回転する、イメージは丸ノコだ。
つまり、ギザギザの刃のイメージになる。
丸ノコの歯が高速で回転しながら飛ぶイメージ。
完成した強化版のウィンドカッター・・
その威力は破壊的だったな。
1枚でドラゴンの首がアッサリ飛んだ。
だから調子に乗ってそこら中のドラゴンを・・
売れないのにヤバいって。
ロックドラゴンならまだ多少の流通はあるらしい。
だがファイヤードラゴンは幻の竜と言われている。
もちろん、ブラックドラゴン、黒竜は神話の世界だ。
だからエイシェントドラゴンは御伽噺になっている。
そして倉庫の中には各種の竜の死骸がわんさかと。
エイシェントドラゴン、古代竜が2匹分。
ブラックドラゴン、黒竜が6匹分。
ファイヤードラゴン、火竜が18匹分。
ロックドラゴン、土竜が42匹分。
ワイバーン、飛竜が通算380匹分
飛竜は時々狩っているから特に多い。
飛行しているとよく出会うんだよな。
どうすっかな、売れない高級素材。
幻とかそんな竜の素材、下手に出したら・・
地味に暮らす予定がパーになっちまう。
馴染みの商会で世間話をする。
どうやら彼は竜の肉が好物らしい。
滅多に獲れないのに変な話だ。
あるなら買うと言われた。
口の堅い解体職人も用意すると。
なので、ロックドラゴンを1匹分出した。
「さすがはクロウ君だね」
「だから違うと言ってるだろ」
「ああ、そうだったね」
「別に偽名じゃないぞ」
「どう見てもそっくりなんだけどね」
「オレはオレであってクロウじゃない」
「うん、もう言わないよ」
もしかして、この身体の元の主か。
そいつ、どうなったんだよ。
死んでオレが入った?
いや、しかし、そんな事が・・
あいつ、何にも言ってくれなかったしな。
そもそも、元の身体じゃ何がいけなかったんだ。
確かにおっさんだけどよ。
そんな他人の身体をわざわざ使わなくても・・
意味が判らんぞ。
それはともかく、竜は白金貨280枚で売れた。
そんなに獲れないのかよ、一番弱い竜なのに。
聞けば、総勢50人ぐらいで狩るらしい。
なので一人当たり、5枚から6枚で経費込みとか。
かなり遠方の山だから、移動費も込みか。
食料も運搬の人員も要るから妥当なのか。
「じゃあこれ」
「確かに」
「また獲れたら頼むね」
「在庫はあるぞ」
「あはは、やっぱりね」
「ワイバーンの素材もあるぞ」
「高騰しているから貰っとこうか」
「50匹で良いか」
「相変わらず・・いや、ごめん」
「慣れないみたいだな」
「そっくりだからね」
「何とか慣れてくれ」
「うん、気を付けるよ」
ワイバーンを50匹、単価は白金貨30枚だ。
これは2パーティでも何とか狩れるようだ。
ただ、群れるから大変って話だけど。
その点、オレはウィンドカッターで乱獲だ。
かくして合計、白金貨1780枚獲得。
やれやれ、竜の素材だけで悠々自適だぞ。
さあ、のんびり暮らそうか。
口の堅い商会さまさまだな。