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異世界ツアー  作者: 緑山 五月
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1話 ツアー案内人

初連載になります。闇烏の続編とも言える話ですが、読まなくても意味は通じます。

とにかく、その穴が見えるのはオレだけのようだ。


だったら商売にしても構わんだろう。


行き先は知らないが、投棄したチンピラは行方不明になったし。


かくして異世界への案内人として、異世界ツアーを企画。


ブログを開催して、オレの商売は始まったのである。





世には様々な人が居る。


その中でもファンタジーとやらに染まった者達。


そいつらは軒並み異世界に憧れを持っている。


大なり小なり・・


酷い奴はそれこそ人生を捨てる覚悟すら持っている。


そんな、なりふり構わない奴こそ、オレの商売相手となる。


生活物資と当座の資金にと、貴金属類を詰めたリュックを渡す。


後はオレにしか見えない穴に誘導するだけだ。


送り費用は、相手の財産を知って判断する。


大抵は全財産になるんだけどな。


それでも異世界に目が眩んでいる者達は、残していく家族や


親戚の事などを簡単に切り捨てる。


そしてこんな怪しい商売だと言うのに、オレを簡単に信じてしまう。


ツアーの同行者の前で、出発予定者の姿が消えれば、


残りの奴は簡単に本物だと信じてしまう。


その気も無いのに、がんばって来いなどと言って、


一番手遅れ感満載の奴を穴に誘導する。


本人は未だ見ぬ異世界に胸を躍らせて、意気揚々と穴に飛び込む。


その瞬間、そいつの姿は消え去る。


大きなどよめきが広がる。


よしよし、今回のツアーも成功だな。


これで他の奴らも本気になる事だろう。





社会人なら貯金も財産もそれなりにあるだろう。


だが、少年少女に自由になるお金は少ない。


普通ならそこで諦めるものなんだろうが、


手遅れな子達には諦めるという選択肢は無いらしい。


どうやって金を作ったのか分からない奴や、


どっかの家宝みたいな物を対価として持って来る奴。


果てはまだ学生だと言うのに、娼婦のようにオレを誘う奴。


身体を投げ出しても行きたいと思うものなのか?


オレには理解が及ばないな。


挙句の果てにオレに相談を持ちかける少年に至っては、


オレを両刀と勘違いしてんのかと思った。


仕方が無いから裏社会の知人のショタな奴に紹介し、


彼は1ヶ月の契約を満了させて戻ってきた。


彼は多少やつれていて目が死んでいたが・・


異世界への憧れはそこまで強いものなのだと改めて思った。


しかし、本当はそんな特殊な趣味の者達の事情など無視して、


ビジネスライクに送るべきだったかも知れない。


金の無い奴を放置してやってれば、少なくとも将来は全く


違ったものになっていたろうからだ。


まあ、別に後悔している訳では無いが。


人生の選択を誤ったとしても、それなりに生きて行けば良いだけの事。


自分の決定の結果など、後悔してもどうしようもないからだ。


バツイチなオレは、離婚の承諾書にサインをした時に、


後悔しないと決めたのだ。





最近、穴の向こうが気になって仕方が無い。


オレも染まってしまったのか。


異世界なんてものが本当に穴の向こうにあるのか?


それはオレにも判らない。


常識からすれば否だ。


だが、常識にはあんな穴の存在は無い。


さてと、待ち合わせの酒場に行くか。


次の送り人は既に決まっている。


相手は裏社会のある組織の幹部。


いい年して頭がお花畑になっているのかと思った。


だが間違ってもそんな事は口には出せない。


異世界案内人、相良圭介本人が異世界の存在を信じていない。


などと、そんな事は知られる訳にはいかないからだ。




 

「準備が出来たのか」


「ああ、引継ぎも終わったし、荷物も全て車に積んだ」


「そうか、ならば場所を教えよう」


「ふっふっふっ、もうじきか、待ち遠しいぜ」


「どうしても行きたいみたいだな」


「ああ。今の組織ではどう頑張ってもトップにはなれん」


「大幹部じゃないか」


「異世界ならもっと上が狙えそうだしな」


「確実な事は言えんが、確かに銃などは無い世界だな」


「となれば、持っている者は絶対的な力を持つ。そしてオレは君臨する」


「異世界の裏社会を統べるってか」


「ああ、やってやるさ、くっくっくっ」





既に金はかなり貰ってある。


だから後は目的の穴の位置を教えるだけでいい。


こいつの為に用意した地図と現地写真をを渡す。


後はガードレールのネジを外す為のモンキーレンチも渡しておく。


自慢の防弾仕様のドイツ車ごと行くらしいしな。


田舎の旧道なので、こいつが穴の向こうに消えた後、戻る手段が無い。


本来は案内するが、単独で行ってくれ。


本当に異世界だったらいいんだけどな。


違ってても恨むなよ、クククッ。





翌日から、そいつに連絡が付かなくなる。


どうやら既に消えたらしい。


あの酒場のあいつのボトルは飲み放題にしてくれていた。


今までは飲んでたが、もう行く気にはなれない。


どんな引継ぎをしたのかは知らんし、知りたくも無い。


だが、組織の幹部を引き抜いたのと意味は同じだ。


そんな場所に行けるかよ。


朝には気付かなかったが、メールが来ていた。


送り主はファイヤーボール。


ツアーの客の隠語だ。


火の魔法は金が集まらない。


火の車からの連想だな。


ボールは金色のアレを連想するって事で、身体で払うって事。


そして題名は、桃色のとんがり帽子。


駅前のラブホテルの隠語だ。


内容は、夜景を見ながらお食事をしませんか?


18時に近くの喫茶店で待つ・・か。


期間限定で、後2週間しか無いんです・・か。


2週間の間、好きに抱かせるから、終わったら送れってか。


送信・・いいよ。


さて、これで返信を待って夕方に行くか。





初めてだから優しくしてねと言われた。


だから、充分に馴染ませてやったのだ。


それが気に入ったのか、翌日もメールが来た。


予想より痛くなかったから、またしたいと言って別れたが・・


まさか翌日に先方からメールが来るとは思わなかった。


『アンテナの調整が巧くいかないの、調整してください』


落ち着かないから納得するまで抱いてくれって、どんな学生だよ。


それでも据え膳は放置しない。


ありがたくいただきます。


そんな生活が2週間続いた。


彼女の言うには休みは明日までらしく、もう時間が無いのだと。


馴染む身体なので惜しいが、約束だから仕方が無い。


そして彼女は穴の中に消えた。


今まで感じなかった喪失感を感じた気がした。


そしてそれから周囲の様相が一変した。



8割方書いてますが、修正しながらなので、不定期になってます。

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