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88 頭の中の住人より、小話『無題』

「やあやあ、僕らは小さな荒くれものさ」


 最近、頭の中で語りかけられる。別に今に始まったことじゃない。恐らくなろう住人なら… 物語を書いている人なら… 頭の中で時々であったり常にであったり、妄想が語り出していることだろうと思う。

 小説を書いてみたいと、書き始めるまでは妄想はアニメのように繰り広げられていた。

 今では字幕映画のような…いや、映像の上に文章が並んでいる状態で浮かんでいる。それを心が読み語っているんだ。

 そのとき、ペンとメモ帳がそばにあればいいのに。不具合が多くなってきたスマフォは役立たずだし、でも、語り部と絵師と作家は何にもなにときに限って調子がいい。慌ててペンを持とうものなら、意地悪く直ぐに引っ込んでしまう。


 で、何が言いたいかと申しますと、何度も何度も「やあやあ」語られるもんだから、メモ出来ない部分を作って書いてしまえばなくなるんじゃあないかとね…


◆◆◆


 やあやあ、僕らは小さな荒くれものさ。人間たちからは『小さき人』て意味の呼び名でよばれている。本当はそれがどんな名前か教えたいんだけども… 僕らには何故か聞こえない。『小さき人』だという意味も、昔々からそう伝えられているからさ。もしかしたら、違うのかもしれない。

 まあ、そんなことは気にしないさ。僕らは身体はだいぶ小さいけれど、気持ちは誰よりもどの種族よりも大きいんだ。例えば、胸を張って道を歩いているときの話。天気がいい日はみんな下を向いて歩かないだろ? だから、踏まれちゃう。

「どこみて歩いていやがる!」なんて拳を振り上げたって見下ろされるだけ。踏んだ人間は、にやにやしながら謝るけれど、僕らは「ふん! 今度から気を付けろよ」て前を向くんだ。いつまでも怒っているのは格好悪いだろ。僕らは赦してやることの難しさを知っているから、身体ばっかり大きいやつらになんかには負けないんだ。

 それでも、母さんには馬鹿だと叱られる。

「踏まれて当然だ。謝るのはお前たちの方だ!」

「どうしてさ! 僕らは道を歩いているだけなんだよ? 堂々と歩いているだけなんだ!」

 けれど、母さんはその考えが間違いなんだって目を吊り上げた。

 どうしてなんだろう… 僕らと人間と人間寄りと、みんな同じ世界で生きるものじゃないか。

 だから、僕らは母さんに言ったんだ。

「差別だ!」

 一斉に地団駄踏んで、母さんに負けじと睨み付けた。でも…

「お前たちも差別しているじゃないか」て、寂しそうな目をされた。

 僕らは意味がわからなかった。

 わからなかったから、毎日毎日今日も歩いている。


◆◆◆



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