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5 おつかいメモ…か?

① 大根

② 人参

③ しょうゆ

④ クリーニング屋に寄る。



 自分なりになかなかな世界観を作り、登場人物たちの名前や性格容姿を悩みに悩んで決めても、いざ文章を書くと、なんだかおつかいメモのように見えてくる。

 簡単にいえば、箇条書き。



① こさじは扉を開けた。

② 「あら、もう裸なの? 気が早いわね」

③ と、先に部屋で待っていた少々に近寄る。

④ すると少々は顔を真っ赤にさせて俯いた。



 自分の目標というか理想、無駄だ余計だ脂ぎっしゅな地の文にしたいのだが、情景や心情が少なすぎて簡潔箇条書きのようになり、「あれ?」て思う。文章てどんなんだっけ? と冒頭の大根人参おつかいメモと化しているのではないかと、その場面から進めなくなり、果ては作品そのものを削除してしまう。折角、書いたのに……


 それでどうしようかと考えた結果、詩を書いたりしていたのだが、自分は語彙力が乏しいと痛いほどわかった。綺麗は綺麗か、すごい綺麗でしか表せない。面白いは面白いか、ウケるくらいだろう。それか笑える。


 でも、ふと思うのだ。乏しいからって何にも知らないわけじゃない。どんな様子か、今どんな気持ちくらいは書けるはずである。


 こさじはどんな風に扉の前に立っているのか、「あら、裸なの? 気が早いわね」と繋がるセリフの裏に本音を隠しているのかいないのか、少々を馬鹿にしているのか少し意地悪に言ってみただけなのか――



① こさじは灯りのもれた扉に、なかなか手を掛けられずにいた。どうして先に寝ていないのか、あれほど酒を飲ませて今日をやり過ごそうと思っていたのに。こさじは顔を歪ませ、ギリリと唇を噛んだ。

 こさじは、ウブであった。派手な見た目と違い心も身体も何も知らない真っさらで、更には何度も街で男たちに言い寄られ襲われかけたせいで男性恐怖性でもあった。

 それなのに、今こうして部屋の前にいる。何故―― とはもう思うまい。どうせ逃げられやしないのだから、こさじは意を決して扉を開けた。


②「あら、裸なの? 気が早いわね」



 ……うん。話の内容と③④は置いといて、色々書けば色々わかる。当たり前だけど、こんな主人公なんだよ~てのがわかりやすくなったように思う。


 地の文をどうにかしたいっちゅーことは、あれほど作り込んだ設定をちゃんと盛り込んでいるかいないかってことで、「語彙力が~」て考え悩むことではないんじゃないかと思った。


 ただ、専門用語を知らない。それだけだ。


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