名前
小学五年生、当時の私は漫画を描くのにはまっていました。元々小さな頃から絵を描くのは大好きで、紙とペンさえ与えておけば手のかからない子と言われていたくらいです。
漫画を読むようになり、描きたくなるのは必然。そして量産しました。いくつもの黒歴史を。
で、イラストを描く子たちのグループでわいわいやってたんですが、そのグループの中に一人だけ飛び抜けて上手な子がいました。仮にAちゃんと呼ばせてもらいます。このAちゃん、ご両親がイラストレーターさんなんだそうです。
そんなみんなと行った社会科見学。私たちのクラスは新聞社を見学した後、かの有名な平将門公の首塚に行きました。先生から一通り祟りの話を聞き、しばらくはそこで自由行動です。もちろん私はいつもの仲良しグループと一緒。
ぼーっと首塚を見ていたら、突然そのAちゃんが振り向きました。そして一言――
「今日からお主は『きさまにたろう』と名乗るがよい」
突然の宣告に私はどうしていいかわからず、とりあえず「うん」としか言えませんでした。
まあ、なんだかんだ言って、こうして今現在ありがたく使わせてもらっています。その節はありがとう、Aちゃん。
Aちゃんは唐突に何かを言うことがあったので、あの時もそうだったんでしょう。
授業中に手紙が回ってきて、
『私は戦うヘリコプターがすきだ』
と書かれていた時も、心の中で「うん」としか返せませんでした。