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故郷
私は中学一年の夏頃まで東京に住んでいました。
そこはもともと長屋だったところで、お隣さんとは壁一枚で隔てられているような超住宅密集地。我が家は二軒長屋、裏は四軒長屋。そんなところなので道は狭く、あちこちに袋小路や細い路地がたくさんありました。子供のころはそういう路地を探検するのがとても楽しかったのを覚えています。
いや、本当に狭いんですよ。そしてうるさい。だって、窓を開ければお隣さんの壁や電線、裏の家からはテレビの音、隣家からは幼馴染たちのはしゃぐ声、もう一つのお隣さんはクリーニング屋さんで、そばの道路は朝から晩まで車の音。
ただ生まれた頃からそれが当たり前の生活だったので、今の家に越してくるまではそれが普通だと思っていました。むしろ最初は今の家の周囲が静かすぎて、本当にここに人が住んでいるのかと不安でした。今は快適ですけどね。
これはそんな私の、なんてことない思い出話。