父親
お兄ちゃんとあまり話さなくなった
挨拶ぐらいはするけど、勉強を教えてくれなくなった
バイトが忙しいと言って家にいることも少なくなった
あの発言が原因なのはわかっている
この際、もう片方しか血が繋がっていないことを知っていると
言った方がいいだろか?
・・・完全に血が繋がっていなくても
別に構わないのに
ただ
みきちゃんの言っていたことが本当なのか
少し気になっただけ
ふざけて言ってみただけだったのに
新年の挨拶にパパの実家を訪れた
今年は泊まる予定で
・・・お兄ちゃんはバイトを理由に来なかった
血が繋がっていないのなら
行きにくいと思ったのだろうか
でも、去年は来ていた
おじいちゃんの家は大きい
「田舎だから大きな家が建てれるんだ」なんておじいちゃんは言っていたが本当に立派な家だ
到着してから一番下の孫だからか、おじいちゃんやおばあちゃんに大歓迎され慌しく一日が過ぎていった
お風呂上りに
高校生の従姉妹と同じ部屋で喋っていたものの
従姉妹が友達と電話をし始めたことをきっかけに部屋をでた
おばあちゃんに言ってパパの子どもの頃のアルバムでも見せてもらおうと
大人たちに見つからないようにおばあちゃんのもとに向おうとした
「栞はどうした?」
暗い廊下の先から声をかけられた
「パパ」
少し顔の赤いパパに見つかった
従姉妹の名前は栞
「しおねぇは彼氏と電話中」
「なんだ、遊んでもらえなかったのか」
「遊んでって、人がすねてるみたいに言わないでよ」
「すねてるだろ、最近は大好きなお兄ちゃんにもかまってもらえないからな」
あいかわらずの腹黒だ
普段は少し意地悪なだけなのに
「気付いてたなら、お兄ちゃんのこと叱ってよ!」
「22歳の息子をか?いい加減、自分が悪いことをしたと自覚しなさい」
親が違うことでお兄ちゃんと微妙な雰囲気になったことをわかっているのだ
それは、つまり
「・・・パパは私が知ってること知ってるくせに、お兄ちゃんに言わないじゃない。それは悪いことじゃないの?」
「ははっ、悪いことじゃないな」
「なんで」
「ひなが知ってることを今、知ったから、だ」
「・・・わかってたくせに」
「確証はなかったよ。ただ、おかしな子どもだなと思っていただけだ」
おかしな子ども
「ひな、あれからの電話を取ったのはお前だって言うじゃないか」
「あれって」
「俺の前の奥さん」
「・・・」
「昔から、お前は賢い子だと思っていたよ。慎とは別の賢さだ。あいつは学校で習うことに関しては賢いといえるが、世渡りは下手くそだ。お前と違って」
「・・・」
「普通の子どもなら、俺たちに言うだろう。『今日、前の奥さんから電話があったよ』ってな」
「それだけ?」
「いーや、他にも小さいことだが、いっぱいある」
「・・・本当にお兄ちゃんと血が繋がってないの?」
「完全になぁー」
気の抜けるような能天気な言い方でパパは言った
「完全に?じゃあパパの子じゃないの?」
「俺の子だよ。戸籍上は」
「・・・ふーん」
これでみきちゃんの言っていたことは本当になった
なら
私は
「ちょうどいい機会だ。他にもお前には言っておこう」
そういうと父は背を向け歩き出した
少し考えてからゆっくりとその背中を追いかける
パパが昔使っていた部屋に移動した
椅子に座ると
「お前、俺が嫌いだろ」
疑問形ではなく肯定形として言ってきた
・・・そこまでわかってたんだ