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謁見2



「──ところでエルヴァ様。レオナール様は今、どうしていらっしゃいます?」


 やはり国政に携わっておられるのでしょうか?と問いかけると、途端に口をつぐんでしまった。

 今までの柔らかな空気から一転、張りつめた雰囲気となる。表情を硬くしたエルヴァに、灯里は眉をひそめた。

 一体どうしたというのだろうか?

 

「まさか、レオナール様──」

「生きているよ」


 お亡くなりになられたのですか、と口にしようとしたが、その途中で遮られた。


「そうですか…」


 良かった。

 そう呟いて、灯里は、知らず知らずのうちに張りつめていた息を吐いた。


「生きてはいるけれど──」

「…『けど』?」

「いつ死ぬのかも分からない状況だ」


 エルヴァの重々しい言葉に、灯里は目を見開いた。


 ──レオナール様に何かあったのか。あり得るとすれば何だろう、毒殺? 暗殺未遂ということだろうか。ならば、後遺症は? もしくは事故に遭って大怪我でもしたのだろうか。喋ることができるのだろうか。意志疎通は?


「何があったというんですか!?」


 今まで保っていた表面上の礼儀作法もそっちのけで、灯里は叫んだ。この場にいる全ての人が驚いてこちらを見ているのが分かるが、そんなの気にする余裕はない。


 いきなり椅子から立ち上がった灯里に吃驚しつつも、それを諌める兄姉。それでも興奮醒めやらぬ灯里は、目の前に座るエルヴァ国王に座るように促され、ようやく腰を下ろす。


「いま、の……レオナール様のご様子は?」

「昼夜問わず執務室に籠もって、ひたすら書類と向き合っている。徹夜どころか五日間ほぼ不眠不休で働き通して倒れたこともある。

それを見かねた宰相たちや心配した親族がいくら休むようにと諫言しても、聞く耳なんて持たない。

 ──お前が死んでから、あいつはずっとこの調子だ。…この六年間、ずっと」


 エルヴァが語り終えた後、誰もが沈黙する中、灯里は絞り出すような声音で問うた。


「…エルヴァさまは、諫めなかったのですか…?」

「そりゃあ諫めたさ。力ずくで休ませたこともある」  


 そこまで言ったエルヴァは、そこで言葉を区切って、灯里を真っ正面から見据えた。

 対する灯里も、瞬きすらすることなく、彼を凝視する。


「──なぁ、シスリア。『こんな生活続けていたら、十年と経たずに死ぬぞ』と言った俺に、あいつ何て答えたと思う?」

「……検討も付きませんわ」


 何と答えたのか、私には分からない。

 だが、その過酷な生活習慣が改善されていないところを見るに、彼らの諫言の効果は薄かったらしい、ということは分かる。


「『それなら本望だ。どうせなら、今すぐにでもあの世へ行きたい』──あいつは、そう言ったんだよ」


 それは。

 ……それは、何故?

 もしかして──

 正解であろう答えに自力で辿り着いた灯里から、底冷えのする冷気が漏れ出る。


「エルヴァ様」


 様々な感情を押し殺した灯里の声は、ひどく低かった。その瞳を下から、座ったまま窺い見た蛍と海が、ビクッと体を揺らす。

 それを宥める兄姉の姿を視線の片隅で捉えつつ、灯里はエルヴァへとある事を願い出たのだった。




もしかしたら書き直すかもしれません。


この場を借りて、お気に入り登録、評価してくださった方々にお礼を申し上げます。

読んでくださってありがとうございます。

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