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準備5




 神殿に参上した5人の目の前に置かれたのは、白い球体の物体だった。

 その見た目から、ふにふにしてて柔らかそうだなぁと推測した灯里は、そっと机の上にある五つのそれを確認して、内心で首を傾いだ。


「(これが魔法を計る機械なのかな?)」


 シスリアだった時にも見たことはない。

 話に聞いたことすら無かったから、ルースラッド国有の何かなのかもしれない。けれど、国宝にしては五つもあるなんておかしくないだろうか。

 …そもそも、国宝って、歴史的価値があったりなんだりして、相当高級なものだったと記憶している。少なくとも、アーカイスではそうだった。

 これ、言ってはなんだが、そんなに高い代物には見えないんだけど……。それとも、私が分からないだけで、けっこうスゴいものなのだろうか?

 ……私は目利きではないから、もしかしたら、なんて事もありえるかもしれない。


 ──そう考えている間に、司祭様からの説明は終盤を迎えていた。


「属性の種類が水であれば手元の球は蒼く光ります。そして、火であれば紅く、木であれば緑色、地であれば黄色…というように。そして、光に適性があると真っ白な光を放ちます」


 静かな神殿内に、司祭様の声だけが朗々と響く。

 その内容から察するに、今は、この球体の説明をしているらしい。

 光の色で適性が判別できるだなんて、便利だね。


「司祭様、闇が抜けてますけれど…?」


 兄が首を傾げる。

 そうだよね、光があれば当然闇もあると思うよねー。

 

「そもそも、闇は、光と同じくらい稀有な属性でして、他の属性に比べても保有者の記録が極端に少ないのです。

そして、貴方がたが闇を持っている確率はほぼ0に近い──完全に無いとも言えますが──のは、勇者だからなのですよ。

勇者は、往々にして光属性を持つものなのです。過去を遡っても、勇者として召還された者が闇属性を持っていた、といった記述はございません」


 司祭様の言葉の切れ目を上手く利用し、理解しやすいように噛み砕いた説明を施してみる。


「ちなみに、ライトノベルでも結構そういう設定になっているんだけどね、あれは理にかなってる。

だって、魔王を倒すのに闇属性を持っていたら、相乗効果でシャレにならなくなるでしょう?」


 これくらいなら、シスリア時代から知っていたんだよ? これが貴族としての常識かは知らないけど。

 もしかしたら、私は書物を読むのが趣味だったから、独学で仕入れた情報だったかもしれない。

 そんな事をしていたのは二十年以上昔のことだから、そんな記憶は曖昧にしか覚えていないけれど。


「灯里姉ちゃん、魔法の相乗効果って何?」

「端的に言えば、掛け合わさって威力倍増、だね。えぇっとね、互いに放った魔法が同じ属性の場合、威力が、自分だけの時の二倍に跳ね上がるんだよ。

──たとえば、水同士で対決したとする。すると、お互いに下級魔法を放っただけなのに、互いの魔法がぶつかり合った瞬間、それは中級魔法の威力で爆《は》ぜる。相撃ちは出来るんだけど、周りへの被害が甚大になるというか。

攻撃と守りがぶつかっただけならそんなことにはならないけど、それだと攻め倦ねる事になるんだよね。そんでもって、勇者が闇属性を持っていたとしても魔王の闇属性の強さには勝てるわけないらしいから、絶対に負けるだろうね」


 書物から得た情報にプラスして、自分で考えた意見を述べる。

 独自の考え方だけど、大幅に外れてはいないはずだよ。だって、裏付ける証拠(書物における記述)があるから。

 いやぁ、前世は本当に暇な日々だった(貴族に生まれた女性の趣味といえば、刺繍、裁縫、お茶会に人の噂話……私には合わないものばかりでね)。

 だから思案する時間がけっこう持てたんだけどさ──魔法も、その時のお題の一つだったんだよ。


 司祭様から訂正が入らないことから、間違ってはいないらしい。

 胸をなで下ろす。

 説明しといて間違っていたなんて、恥ずかしいからね。


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